03:始まり
3ヵ月後:
お金が貯まった、未鑑定品の中に魔法の巻物が有ったのだ、総額で金貨8000枚になった。
コールドの屋敷は知っている、毎日通っているのだ、イリスの姿が見られればと迷宮に行く時以外は毎日見ていた。
私は愚か者だから、ウィリアムさんに同行をお願いした。
散々彼の言うことを無視してきた私に、彼は快く同行を引き受けてくれた。
「ザボンに払い下げた」
執事と言う男がコールドの言葉を一言告げ屋敷へと戻っていく。
気が狂いそうだ
奴隷商館へ行く、顔に笑みを貼り付けた男が出てきた、私のことを忘れたらしい。
「イリス、イリスですか?、ああ、あれ!」
「コールド様からお聞きになったんですか?、けど、もう使い物になりませんよ?」
何を言っているんだこいつは
「引き取って頂けるなら、そうですね金貨10枚でかまいませんが、隷属契約はもう結べませんよ?」
金貨10枚?
イリスが運ばれてきた。
「あー、うあー!」
家を買った、私とイリスの家だ。
かつて、お父さんとお母さんとイリスと私の家があった場所に在る。
「ずっと一緒にいようね」
「あー、あー!」
実験材料にされたらしい
「はい、今日はイリスの好きなお菓子だよ」
「あうー、うー!」
味を感じる部分はすでに無い、ほらこれが一番好きだったでしょ
「ぁぅー、ぅぅ」
「なあに、もう寝る?」
「ぅぅ」
何度も殺され生き返らされた影響で、回復魔法が効かないらしい
「ぅぅぅ」
もう、長くないらしい
「なあにイリス、お姉ちゃんはここに居るよ?」
「ぉぇぃぁぅ」
「なあに?」
「ぅぁぅぃ」
「うん、おやすみ、、」
イリスがしんだ
わたしのすべてがなくなった
準備をする、、、
もう何も無くなっちゃったけど、やりたいことが一個だけ有る。
私は馬鹿だからまた失敗するかもしれない。
だから準備をする。
魔物を殺しアイテムを集める、巻物はその場で使い、装備品は装備する。
呪われる。
気にしない、もう何も無いんだから、気にしない。
邪魔な装備はその場で壊す、装備していた部分も壊れるけど気にしない、だって私はもう壊れているんだから。
動かなくなったら、動くようにする、もう何もいらないから全て薬に換えてきた、腐るほどある。
巻物でスキルが増え、呪いでスキルが消え、装備でスキルが増え、呪いでスキルが消え
テレスは、魔闘技を習得した!
テレスは、再生を習得した!
テレスは、状態異常耐性を習得した!
テレスは、アベンジャー・籠手を手に入れた!
テレスは、アベンジャー・闘衣を手に入れた!
テレスは、アベンジャー・脚絆を手に入れた!
じゅんびができた
「誰から殺そう?」
久しぶりに街へ戻ってきた、そうだイリスに聞きに行こう。
イリスと私の家が在った場所へ向かう、早朝まだ人気も無い道を歩く。
あ、ギルド員を見つけた普通の格好をしている、だけど見間違わない、あの時の人だ。
「おはようございます」
挨拶をしながら足を蹴る、ストンと蹴った部分の高さ分落ちる。
「あ、いけない、街中だった」
慌てて蹴り飛ばした足と、背の縮んだギルド員を持って私たちの家の跡に移動する。
我に返って叫ぼうとしたので、大きく開いた口に拳を撃ち込む、ガゴッ!
呪われた装備、アベンジャーの効果で生命力を吸収し精神を蝕んでいく、私も常に同じ効果を受けている、なにもないからどうでもいい。
次の仕事の段取りを終えて戻るところだったらしい。
私とイリスの名前を言ったら教えてくれた、お礼に殺してあげた。
いた
コールドとザボンとドリアン、後は今回の獲物の冒険者が二人、フリーザはいないのか、まあいい。
彼等に向かって歩いていく、ドリアンが気づき剣を抜き盾を構える、気にせず歩く。
「止まれ!」
剣を振り下ろしてきたので、指でつまみ、砕く!
そのまま首を掴む、呪いが発動する、グシッ!、気にせずそのまま首を握りつぶす。
ザボンが引きつった笑いを浮かべながら話しかけてくる。
私のことを覚えているらしい、イリスを買った人としてかな?
私、イリスのお姉ちゃんなんだよ?
説明する気は無い、ただただ殺したいだけだから、そのまま黙ってザボンの前に移動し、
ザボンを蹴る、その膨れた腹を削りながら振られた足は、そのまま顎から顔面を削りながら頭上に振り上げられ、そのまま抉れた顔に踵を振り下ろす。
グチャ!、二つに折れる
状況が飲み込めず呆けた顔をしているコールドも蹴り上げる。
今度は、爪先で肉を削りながらではなく、甲の部分で股間を蹴る。
グチッ!、という何かが潰れた音と共に宙に浮くコールド、丁度よい高さの腹に抜き手を突き刺す。
ズボッ!、と言う音を立て腹に刺さる腕、そのまま持ち上げ、頭から地面に叩きつける。
ベチャ!、あっけなく終わる。
あー、終わった、準備したのに簡単だったなあ
武装した人達に囲まれる、中にウィリアムさんもいる、なんだか怒っているみたい。
ごめんなさい、だけどもう終わったから、どうなってもいいの
集団の中から初老の男性が歩み出てくる。
「暴れられると思ってたのに、つまんないのぉ」
お前そんな装備してるからわしの楽しみを横取りしたんだな、といい呪われたアベンジャー装備を解呪された。
今回の冒険者は囮で、現行犯で拘束するつもりだったらしい。
「汚いから迷宮に捨てて来い、わしもう寝る」
適当な一言で貴族は闇に葬られた、この男が冒険者ギルドの長らしい。
なぜかギルドの受付をする事になった。
「あなたみたいな人は目の届くところにおいておかないと心配ですからね」
ウィリアムさんが上司になった。
何でこうなったのか、よくわからないけど、もう何も残ってないから、それでもいいかなと思う。
クソな貴族目当てで受付嬢になる女性が多いのに辟易する、夢と現実の区別はつけないと、などと考えている自分が少し嫌になる。
「あのー、」
先ほど入ってきた茶色いローブの子供が声をかけてくる。
「はい、どういったご用件でしょうか?」