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01:始まり

ゲキョ、グキョ!


耳障りな鳴き声と共にゴブリンが迫って来る。

二匹、茶色く錆び付いた剣をブンブンと振りまわりている奴と、ただの木の棒を持っている奴、大きさは共に私の肩くらいだろうか、よく動いているが無駄な動きが多い


「シッ!」

呼気と共に剣を持っているゴブリンの足を払う


ギョギャ!

間抜けな声をあげ倒れるゴブリン、剣を持った手を地面につく。

馬鹿が、ゴッ!、持った剣ごとゴブリンの手を踏み抜き、その足を軸に反対の足で頭を蹴り上げる、ボキッと言う音と共に動かなくなるゴブリン


ギョギョギョ!

驚きの声を上げているだけの棒持ちにむかい、動かなくなったゴブリンを蹴り飛ばす。


飛んでくる仲間を思わず両手で受け止める棒持ち、武器である棒を放してどうするんだ馬鹿!

たたらを踏んでいる元棒持ちをその持った死体ごと前蹴りする、ドスンと仲間を持ったまま尻餅をつく、両手の塞がったそいつの頭が丁度良い位置にある、回し蹴りで蹴り抜く、ゴキッ!



「ふぅ!」

止めていた息を吐く

「お姉ちゃん、待ってよぉ」

とことこと妹のイリスが走ってくる、たった一人の家族、私の全てだ






私は父に戦いの指導を受け、イリスは母に魔法の手ほどきを受ける。

そして、冒険者としての父と母は魔物の討伐依頼や迷宮探索へと出かける。

当然のようにいつまでも続くと思っていた、変わることなどないと思っていた日常がある日突然終わる。


父と母が帰らなかったのだ、、


ただただ待った、何の力も無く世間を知らない姉妹にはただ待つことしか出来なかった。


冒険者だった父と母が戻らなくなって数日後、冒険者ギルドの職員が尋ねてきた。

両親が迷宮で命を落とした事、死体は既に無く光魔法による蘇生も不可能な事、ギルドで管理しているお金や装備品を家族に相続する手続きをして欲しいと言う事。

何を言っているのか解らなかった、目の前がぐちゃぐちゃに歪んで心が痛くてただただ泣き叫びたかった。

その時、後ろにいたイリスにぎゅっと抱きつかれた。



「テレスは格闘術の才能が有るから、今日から父さんと一緒に修行しような!」

「わたしも!、お姉ちゃんと一緒に修行する!」

「うーん、イリスは魔法の才能があるから母さんと修行したほうがいいかなあ」

「お姉ちゃんと一緒がいい!」

「じゃあ母さんとの修行の後にテレスとイリス二人一緒に連携の修行をしようか?」

「うん、する!」

「じゃあまず母さんと修行しないとな、そうしないと連携の修行が一緒に出来ないもんな」

「わかった!、おかあさーん!」

「ははは、イリスは元気だなあ」


「、、、テレスよく聞いてくれ」

「なあに?」

「イリスはおそらく光魔法と水魔法を使える」

「すごい!、いいなあ」

「ああ、けどこれはイリスと父さんと母さん、そしてテレスだけの秘密だぞ!」

「なんで?」

「魔法を沢山使えることがわかると、悪いやつらに連れて行かれちゃうからなんだ」

「悪者?、魔物のこと?」

「ああ、魔物も悪者だが、世の中にはもっと怖い奴等がいるからね、秘密にする事守れるかい?」

「うん、わかった、私がイリスを守る!」

「ははは、テレスは良いお姉ちゃんだね!」


その夜は、イリスと抱き合って寝た。




冒険者になった。

ギルド員の人は、ウィリアムさんと言う人で色々教えてくれた。

私の持っている格闘術と言うのは不遇職らしい、敵と籠手を着けてるとはいえ殴り合うのだ、負傷はつきもの、そこが問題でPTに回復職がいない場合毎回、回復薬を消費することがあり宝箱から当たりが出ないと赤字になってしまうからなのだ。

同じ前衛職を雇うなら、盾も使える戦士や、攻撃力の高い剣士、中距離から一方的に攻撃できる槍使いといくらでもいるのだ、回復職がいたとしても回復の負担の少ない彼らのほうが人気が有るし、回復職がいなければ格闘家など雇ったりしない。


後から分かったが、ウィリアムさんが色々手を回していてくれたらしい、ウィリアムさんが不在の時たまたま入ったPTでセクハラ紛いのことをされ、その時に事実を聞かされた。


悔しかった、

何も知らない自分が、

助けてもらっていただけの役立たずな自分が、

そんな顔のまま家に戻ってしまった、思慮の足りない自分が、


イリスが冒険者になった。

「わたしが、お姉ちゃんを回復するから大丈夫!」

私のせいでイリスの秘密がばれた。


イリス目的のPTに誘われるようになった、私はついでだ。

別にいい、こちらから選べるようになったのだ、ウィリアムさんのアドバイスを貰い組むPTを選ぶ、安全で稼げるPTにはいれる。

少しづつ減っていた両親の蓄えを使わなくてもやっていけるようになった。


「お荷物のくせに生意気なんだよ!」

「お前がいなければもっと稼げるんじゃねーか?」

「死ね!」

断った奴等からは色々言われた、どうでもいい。



格闘術の錬度が上がった。

敵の防御を無視した攻撃、重い装備や武器を持った奴等など相手にならない素早い動き、一気に後衛まで攻撃できる機動性だ。

このレベルになると格闘家の価値が変わる、物理攻撃の専門家としてトップクラスになるのだ、父さんがいた領域。


PTに誘われる頻度が上がる、既に回復職のいるPTからは私のみの誘いも来るようになる。



「イリスは、治療士になりなよ?」

安全な場所にいて欲しかった。

「待ってるのはやだ!」

抱きつかれ、泣かれた。


ああ、私はあの時と同じ思いをさせていたのか、馬鹿だなあ


二人だけで、行動するようになった。

私の殲滅力とイリスの回復があれば、問題が無い。

家族は二人だけになってしまったけど、イリスとずっと一緒にいられる。

私がイリスを守って、イリスが私を守ってくれる。

ずっとこのままでいられればいいな、と思った。

大事な事を忘れて、そう思ってしまった。





まほうがたくさんつかえるとわるいやつらにつれていかれちゃうよ



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