Ⅳ
食事を終えて、率先して洗い物を請け負ってくれた浅葱さんと、並んで食器の方付けを始める。……後からやってもいいんだけど、今は浅葱さんと話したかったから。
詩は宿題があるからといって既に二回の自室に戻っていった。
「……詩には言わないのか」
「……あ? 何を」
「いや、護衛とか、命が狙われてるとか」
食器を拭きながら問いかけた俺に浅葱さんは面倒くさそうに答える。あわ立つスポンジで皿を擦って重ねていきながら浅葱さんはあー……と気の抜けた声をだす。
「妹さんには明かすな、って言われてんの。まぁ想定外の事態でバレたら仕方がないけど積極的にはバラすなってな。口調についてはまぁ、何となくだ」
「……まぁまだ中学生の妹に命が狙われてるなんてヘビーな話題はな……」
「お前も信じきれてねーみたいだしな」
ふんっと鼻で笑って、浅葱さんは食器の泡を流し始める。テキパキと重ねられ始めた食器を拭いて元の位置にしまいこむ。いつもなら食器洗浄機を使って朝に片付けたりするんだけどな。
しばらく無言のまま片づけをして、ふと思い出す。
「そういや、浅葱さんは……」
「……その浅葱さんってのキモイからやめろ。四季でいい。」
「お、おう……」
質問しようと思ったことを口に出す前にばっさりと言葉を挟んできた浅葱さんに思わず言葉を飲み込めば、浅葱さんは心底呆れたような目を俺に向けてくる。
浅葱さんは俺よりも身長は頭一つ分くらい低いから自然を上目遣いになっている。さっきはあまり気にしなかったけど、結構身長低いんだなぁ……。身長から考えるとやっぱ女の人、だろうか。
「……ききてーことあるんじゃねぇのか?」
「あ、ああ。そうだ。あさ……四季さんは学校とかどうすんだ?」
「……さんはいらねぇ。学校はお前の学校に転入予定」
心底うんざりした様に聞いてきた浅葱さん、改め四季に問いかければ、僅かに眉を潜ませた後答えてくれる。ああ、そっか転校生ってことになんのか。
……ってことは俺の馬鹿な友人二人が五月蝿くなりそうだなぁ……。面倒なことになんないといいけど。
「……もういいか? いいなら俺は部屋の片付けしてーから部屋に行かせてもらうぞ」
「あ、ああ。悪い。もういいぞ」
俺が答えるなり四季はくるっと身を翻してダイニングを去っていく。
そうして、俺と四季の奇妙な関係が始まることとなったのだった。
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