見守る儂(栃の木)
今回はシュウさんの町長さんのお爺さんを少し絡ませていただきました。
というか、うろな町の過去を捏造しちゃったような気がするのですが大丈夫でしょうか?
駄目なようなら連絡をいただければすぐに消しますのでご連絡ください。
いいのう。
儂は自分の眼下に広がる町を眺めながらふと思う。
儂がこの山に根を張ってから数百年。
あの町は何があってもあそこにあった。
いや、町と言うのもおこがましいような小さな集落か。
それがいつしか村になり、気付けば町になっておった。
ある年は、酷い飢饉でたくさんの人が飢えていた。
それでも儂の実を食べ飢饉を耐え抜き町はそこにあった。
ある年は強い台風が来た。
建物が全て薙ぎ倒されても人々は協力し、町を再興させていた。
ある年は戦争の戦火に飲まれた。
戦争に行ったたくさんの男達が帰ってこなかったがそれでも町はそこにあった。
戦争で家がなくなったときは皆、そのときはもうある程度大きくなっていた儂と隣の樹の下に集まり雨風を凌いでいた。
なにもしてやることのできない自分が歯痒かった。
自分より遥かに年下の子や孫のような存在が苦しんでいても見ているだけしかできない自分が。
戦争は辛いのう。
儂らのような樹もほとんどがあの戦争で死んでしまった。
いまだに儂と隣の樹はしぶとく生き残っておるがのう。
じゃから平和になってまたたくさんの人々があの町に集まっているを見るとなんだか嬉しくなるのう。
そういえば、あの町の町長が変わったんじゃったか。
町長は二代目じゃったな。
あの童子の孫じゃったか。
あやつも幼いころはよく儂のもとに来ておったのじゃがなあ。
それでよく儂の落とした実を拾い餅にするんだと喜んでおった。
町長になったと報告に来てそれからもたまに顔を出しておったんじゃがのう。
歳をとってからはめっきり顔を出さん。
こんな山奥におるからかのう?
最近はあやつも他の人間も来ん。
まったく。何のために儂が毎年毎年実を落としておると思っておるのか。
もちろんこの山の動物達のためでもある。
しかし、この山の食べ物は多い。
儂の落とす実は多く動物達だけでは食べきれんほどだというのに。
そう思うと小さな集落で毎年儂の実を人が取りに来たり、儂の下で童達が遊んでおった時代を恋しく思ったりもするのう。
儂はもういらんのじゃろうか?
人々はもう自分達だけで暮らしていけるのじゃろうか?
もう見守らなくてもいいのじゃろうか?
そう思っても『もしも』を考えてしまう。
まあ、儂もまだまだ倒れる気はない。
儂が何の心配もいらなくなるまで見守らせてもらおうかの。
今回のお爺さんは栃の樹です。
『もちもちの木』という話に出てくる大きな
樹です。かなり大きくなる樹です。
皆さん、栃餅はお好きですか?
自分は、結構好きです。
それではさようなら。




