第2話 本当に?
「ねえ。ほんっとう〜に『織田信長』で、僕のご先祖様で間違いないんだよね?」
あの衝撃的な足技の数々……全てはいきなり現れた彷徨える霊魂が僕に憑依して、身体を操ったからこそ成せる技だってことくらいは弁えてる。
おかげで僕も鴨くんもピンチから逃れることができたのは感謝してる……だけど。
冷静に考えてみれば、今まで親から『先祖が織田信長』なんて話を聞いたことはないし、家系図すら見たこともない。
もしかしたら、最初のうちだけ助けるふりして後々本性を表す悪霊だったりするかも……だから昼休み中に確かめておかないと。
というわけで、昼ご飯を食べ終わって自分の机で考え事をしていると周りに見えるように、謎の霊魂へブツブツと呼びかけている。
「ねえ、返事くらいしてよ!」
「……つまらんことで喧しいのう。ワシはノブナガ、そしておぬしの遠い先祖で間違いない」
「その織田信長の霊魂がなんで彷徨ってたのさ」
「それは、もちろん現世に未練……やり残したことがあるからに決まっておろう」
「あ、もしかして本能寺の変で天下統一直前に死んだから?」
「……まあ、そんなところじゃ。これで納得したか?」
「まだまだ。で、なんでいきなり現れて助けてくれたの?」
「それは……おぬしがあまりにも情のうてな、つい。子孫といえどもワシが手を貸すのは見込みのある優秀な子だけと決めておったのだがなあ、失敗じゃあ」
「あっそう。でも一応ありがとう。それでさ、もう一つ確かめたいことがあるんだけど」
「なんじゃ言うてみい」
「あの足技の名前に『上鞠』とか鞠が付いてたけど……それを蹴り上げるのって『蹴鞠』じゃないのかなあ? でもあれって平安時代の貴族の遊びだよね?」
「……!」
「僕、これでも歴ヲタだからそれくらいのことは知ってるんだ。つまりアンタは本当は戦国武将なんかじゃなくて」
「……ふっ。どこが歴ヲタじゃあ、聞いて呆れるとはこのこと」
「ど、どういうことだよ。確かに僕が詳しいのは戦国時代で平安時代は専門外だけどさ」
「タワケが。よいか、蹴鞠とは元来遊びではなく古代中国で行われた軍事訓練の一つ……日本に伝わってからも心身の鍛錬に用いられた立派な競技であった」
「……それで?」
「故に平安貴族だけではなく武家においても必須の嗜みとされておった。まあ江戸時代以降は廃れたが、織田信長……ワシのような戦国武将がその技を知っておるのは何の不思議でもない」
「えー? でもやっぱり織田信長とか戦国武将のイメージに合わないよ。何か証拠でもあるの?」
「うむ、その証拠となる話が一つある。今川の倅が織田信長……ワシに蹴鞠を披露したことがあってのう。あれは確か、天正三年のこと」
「今川って、あの桶狭間で負けた今川義元のこと?」
「うむ、そのとおり」
「なんで親の仇に披露したのさ、おかしいよねそれ?」
「細かいことはどうでもよかろう。それよりもその出来事の有無を、いんたーねっととやらで調べてみい!」
現代のこともそこそこ知ってるんだ。まあ現世を彷徨っていたのなら当然か。
それじゃスマホで調べようかな……。
「コイツ、コイツですよ先輩! 俺らをわけわからん技でボコッたのは」
「ふーん。で、さっきから一人で何ブツブツ言ってんだコイツ? 気持ち悪いなあ!」
いきなり前から声が。というか先に喋ったのは鴨くんと僕をカツアゲしようとしたヤンチャ君の一人……ああ、嫌な予感しかしないんだけど。




