表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】コードネーム・ファントムの新たな日常 〜平穏を夢見る元諜報員は、なぜか国家規模の事件に巻き込まれる〜  作者: 桜瀬ひな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/81

ファントム、日常に戻る

 あれから数日が経った。 世界は、『グレート・サイレンス』と名付けられた原因不明の大規模ネットワーク障害からの復興に追われていた。 テレビをつければ、連日、専門家たちが難しい顔でその影響を語っている。


 だが、そんな世界の喧騒とは、全く無関係な場所がここにはあった。 マスターの喫茶店「セグレト」。 その、アンティークな扉についているベルが、チリン、と軽やかな音を立てた。


「……ただいま帰りました」


 店に入ってきたのは、スーパーの袋を提げた、灰島だった。


「おかえり、パパ!」


「……」


 カウンターの中から、そう返すユキに灰島は複雑な顔をする。


「あら、年齢的にはパパでしょ?」


「お前は神崎の姓だ。それで俺とお前が親子というのは──」


「妻と別れて子供は妻の姓なんて、珍しくもないわ」


「ファントムが嫌なら、俺がパパになろうか?」


 窓際の席では、瀬尾がノートパソコンで何やら作業をしていた。


「嫌よ。軽いパパなんて」


「酷いなぁ。俺ってめっちゃ子煩悩なパパになると思うけど」


「それ、ただ甘やかすだけでしょ」


 ユキが呆れたように、しかし楽しそうに言い返す。 その軽口が、彼らの日常になりつつあった。


 そこへ店の奥から、玲奈がひょっこりと顔を出した。


「いいなぁ、パパが選べるなんて。あ、私も灰島さんをパパって呼ぼうかな?」


「やめろ」


 玲奈の言葉に、灰島が心底嫌そうな顔をする。そのやり取りを見て、カウンターの向こうで、マスターが穏やかに微笑んでいた。


 チリン、と扉のベルが再び鳴る。 新しい客が来た、と思ったが少し違った。


「……少しは歓迎しろよ」


 入ってきたのは、私服姿のヘルハウンドだった。


「そうでしたね、いらっしゃいませ。それで御用は?」


 マスターの言葉に、彼は複雑な顔をする。


「普通にコーヒーを飲みに、と言いたいが伝言だ」


 意味もなく彼がここに来るはずはない。灰島しかり、ユキも観察対象になっているから、彼女の表情も強張ってしまう。その彼女の頭を、マスターはポンと撫でた。


「大丈夫です」


 その一言が、どれだけ心強いか。ユキは、こくりと頷いた。


「AEGISの生体キーである『ユキ』の身体的成長が認められた」


「え?」と思わずユキが声を上げるが、彼は構わず続けた。


「仮に『AEGIS』の復活があっても、『ユキ』はもう生体キーになりえないため、監視対象から削除する」


 堅苦しい言い方のせいか、ユキは瞬時にその言葉を理解することが出来ず、まだなんの反応もない。


「良かったな、ユキ」


 灰島の言葉に、ようやくユキは視線を灰島に移したが、その視界がゆっくりと滲み始めた。


「……だよね? これっていいことなんだよね!? よかった! ユキちゃん!」


 そして、手放しでそう喜んでくれる玲奈に、ユキもようやく「うん」と笑顔で答えることができた。


「……さて、伝言は済んだ」


 ヘルハウンドはそう言うと、踵を返そうとした。


「おや、もうお帰りですかな?」


 マスターが、すでに用意していた新しいコーヒーカップを手に声をかける。


「……一杯だけ、もらおうか」


 ヘルハウンドはぶっきらぼうにそう言うと、瀬尾の向かいの席に、どさりと腰を下ろした。


 店内のテレビが、新しいニュースを伝えている。


『……『グレート・サイレンス』の影響で、これまでAEGISによって監視されていた、世界中の紛争地域の緊張が、再び、高まっています。専門家は、新たな、大規模な戦争の可能性を……』


 変わりゆく、混沌とした世界。 だが、この「セグレト」の中だけは、時間が穏やかに流れていた。


 ヘルハウンドは、黙ってマスターの淹れた、完璧なコーヒーを味わっている。 玲奈とユキは、カウンターの中で楽しそうに明日のメニューの話をしていた。 瀬尾は相変わらず、ノートパソコンに向かっているが、その口元は緩んでいる。


 灰島は、ただ、静かにその景色を眺めていた。


 こんな日常が、続けばいいと──。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

本作『ファントム』は、最強諜報員の日常をコミカルに描くつもり、だったのですが…。

気付けば世界規模の事件に発展!われながらびっくりです。

いつも私のキャラは勝手に大暴れするので大変です(;^_^A

少しでも楽しんでいただけたなら、

ブックマークや評価をいただけるととても励みになります。

よろしければ感想などもお待ちしております。


彼らはまだまだ私の頭の中で大暴れしております。

えぇ、続編を書く気満々だったりします(*´▽`*)

お待ちいただけたら、本当に嬉しいです。


最後まで読んでくださり、本当にありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ