ファントム、立ち上がる2
「ですが、ユキくんがアクセスしてしまうと自動認証してしまうのでは?」
マスターの言葉に、ユキは頷く。
「そしてAEGISは私の脳にアクセスし、進化をはじめるの。前にも話したわよね、私は脳細胞を再生することが出来る。その記憶領域を使用して進化するのだけど、でもそれでは追いつかないなら、さらに活性化させる促進剤を飲んでいたの」
そう言って、ユキはポケットから錠剤を見せた。
「昨日の夜、飲んだきり。そして昨日はかなり酷使したから、多分かなりの脳細胞が死滅してる。ある程度の再生は自力でできるけど、AEGISの進化を促すほどではない。そのせいでAEGISはきっと、私を完全には認証できないはず」
AEGISが混乱、もしくはエラーを起こす、あるいはフリーズするかもしれない。その時何が起こるのか、それは分からないが、それこそがチャンスなのだと、ユキは説明した。
「だからマスター。大量の記憶媒体を用意してほしいの。100Tは最低でも欲しいわ」
そんなお願いに、マスターは「お安い御用です」と笑顔で答えた。
「その記憶媒体には、私のコピーを忍ばせておいて欲しいの」
それは、闇オークションを開催するにあたって作った「ユキ」のコピー。そのコピーには、遅効性の毒が仕込んである。
「シミュラクラにも、AEGISにも効かないかもしれない。でも、一瞬の隙は作れるかもしれない。少しでも勝てる可能性を高めたいの」
ユキの提案に、マスターも灰島も頷く。
「私は、瀬尾君ほどの知識があるわけではありません。けれど、彼に引けを取らない程の人間を知っています。勿論、口も固く身元も保証します。彼に頼んでも?」
マスターが相談する相手は、灰島だ。彼こそが、このチームのリーダーだと誰もが認めているから。その彼が、少し考えて頷いた。
「俺はマスターを信頼します」
その答えに、マスターはにこりと笑った。




