表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】コードネーム・ファントムの新たな日常 〜平穏を夢見る元諜報員は、なぜか国家規模の事件に巻き込まれる〜  作者: 桜瀬ひな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/81

ファントム、夜に駆ける3

「もう! 電気は制御できたのに、なんで開かないのよ!」


 ユキはキーボードを叩きながら叫ぶ。


「落ち着いて、きっと出来る! 大丈夫だよ!」


 流れる鼻血を拭かれ、背中をポンと叩く手に、ユキは少し落ち着きを取り戻す。


「……うん、出来る。ううん、やらなきゃ」


 ユキは、三重認証を上書きし、さらに管理AIのルート権限奪取を試みる。


「開いて……、お願い……、──早く!!」


認証オーソライズ……隔壁ロック、強制解除アンロック


 彼の頭上から、合成音声が響き渡った。ユキが、施設の管理AIを乗っ取ったのだ。 重さ数トンはあるはずの隔壁が、音もなくスライドしていく。


 彼はその隙間に、滑り込むように身を投じた。背後で隔壁が再び閉じる轟音と、エージェントたちの悪態が聞こえる。


 警報と遠くから聞こえる兵士たちの怒号を背に、灰島は降りしきる雨の中へとその身を溶け込ませていった。


 彼が出てきたのは、施設の地下深くにある資材搬出口だった。


 そこは東京都西端、奥多摩の山中。放棄された水力発電所跡を偽装した地下施設だった。


 コンクリートがむき出しの薄暗いドックエリア。数秒ごとに首を振る監視カメラの無機質な視線。それらを、灰島は壁や機材の影を使い、まるでそこに存在しないかのように、音もなくすり抜けていく。 高いフェンスを乗り越え、着地の衝撃に態勢を崩しながらも地面に手をついて走り始めた。


 その先は、人の手を拒絶するような、深い自然の闇が広がっていた。


 頬を打つ、夜明け前の冷たい雨。滅菌された施設の空気とは違う、湿った土と、濡れた杉の葉の匂いが、彼の肺を満たした。


 足元はぬかるみ、急な斜面が彼の体力を容赦なく奪っていく。


 それでも彼は、足を止めなかった。近くを流れる沢の音を頼りに、ひたすら下流へと向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ