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ファントム、捜査開始2

 自分の部屋に戻り、パソコンを立ち上げる。


「動作良好」


 一言そういうと、画面に全ての画像を映し出した。


 それから丸三日。灰島はマークした家を出入りする人物を事細かにチェックした。とはいえ、24時間PCに張り付いていたわけではない。


 朝起きて、ランニングは欠かせないしその後のコーヒーも忘れない。朝食のパンですら、自分で焼くほど、家の中の生活を満喫していた。


 その生活の中で、録画した映像を2倍速で確認した。


 映像と音声から、この家を出入りしている人間は5人組であることが判明。リーダー格の男A、その右腕と思われるB、そして3人の実行役。彼らの会話は驚くほどに「普通」だった。好きなアイドルの話、昨夜のプロ野球の結果、次の休みに何をしたいか。


 彼らの行動パターンを確認後、彼らのいない夜を選んで家に潜入した。


「……監視カメラではなく、成長を観察するカメラか」


 赤外線センサーもなく、監視カメラもない場所への潜入というのはいささか物足りない。その中にあったのは、植物の成長を確認するカメラだけ。しかもそのカメラの映像を常に監視するために、この家にはWi-Fiまで飛ばされていた。


「これを利用するか」


 自分のスマホを取り出し、飛ばされているWi-Fiを確認する。


「それにしても……」


 目の前に広がる大麻畑を見回す。青々と育った大麻は、2階で干されていた。この家だけで大麻が完成するという仕組みだ。恐らく、この家だけではなく、他にもこういった大麻栽培ハウスがあることは容易に想像できた。彼らの行動パターンからして、最低でも3箇所はこのような栽培ハウスがあるはずだ。


 そして、大麻の生成までここで行うことができるということは、販売ルートがすでに確立されているということ。


 おそらく、そこには反社組織が絡んでいるに違いない。よくある話で珍しくもないし、こんなルートを一つ潰したところで、世の中が平和になるわけじゃない。


 けれど、せめてこのご近所の平穏くらいは守れるのではないだろうか?


 そう考え、家に帰りまたPCの前に座る。映し出される画面には、収穫をする男たちの姿が見えた。その後乾燥して、それから出荷になるのだろう。


 アジトで確認したWi-Fiに入り込み、彼らのスマホのデータを盗み出すところからスタートだ。休憩中、今どきの若者らしく彼らはスマホを眺める。勿論、その家にあるWi-Fiに繋げて。


 灰島は、ネットワーク内にいる5台のスマホに対し、気づかれることのないステルス型のマルウェアを送り込む。


 これにより、彼は5人のスマホを完全に掌握。通話履歴、メッセージアプリのやり取り、SNSの投稿、位置情報、さらにはマイクを遠隔起動して周囲の音声を拾うことまで可能になった。


 そこから得られた情報を頭の中でまとめた。


 ナンバー2のBは別の売人とアクセスし大麻の横流しを画策しており、手下Cは彼女に近々大金が入ることをほのめかしていることから、この二人はグルだろう。リーダー格のAはまだそれに気付いていないが、頻繁に数量や取引金額を確認していること、そしてナンバー2を見る目から、疑っているのは間違いないだろう。


 残りの手下DとEは、軽いアルバイト感覚でこの仕事をしているみたいだが、最近は抜けたがるようなメッセージをお互いに送りあってる。


 そして、灰島が考えていたかのように、彼らが運営している大麻畑はここを含め4箇所あるが、その場所もすべて把握した。


 因みに、この3日間ずっと彼らを見張っていただけ、ではない。最初に忍び込んだ時、大麻草にとっては天敵の「うどんこ菌」を撒いておいた。これは人間には無害であるため、外に漏れても全く問題ない。そして、通風孔にもセットし、定期的にばらまくように仕掛けたので、この家の大麻はいずれ全滅するだろう。


「カビが……! なんだこれ、なんでこんなことに!」


 リーダー格であるAの焦った声が、灰島の部屋に設置されたスピーカーから響き渡る。映像には、白い粉を吹いた大麻の葉を手に、愕然とする男たちの姿が映っていた。


「どうなってんだよ! ちゃんと管理してんだろうな!」


 怒鳴り散らすAに、実行役のDとEは怯えるばかりだ。


「すみません! でも、温度も湿度も完璧だったはずで……」


「言い訳はいい! さっさと使い物になるやつだけ選別しろ!」

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