到着
校門を跨ぐ。
この学校には校門が3つあり、僕はいつも東側の門を使う。
門のすぐ後ろには川が流れていて、冬になると水面が薄く凍り、雑草には霜が降りる。
小学生の僕でも、綺麗だなと思う景色だった。
残り二つの校門は、ここからでも見える。
でも、要注意人物の姿はない。
見えるのは知らない顔ばかりだ。
たぶん、他の学年だろう。
校舎に入り、上履きに履き替える。
下駄箱を開けるたび、アニメみたいに泥や動物の死体が入っている、なんてことは一度もなかった。
そんなことをしたら、大問題になる。
……いっそ、そこまでしてくれればいいのに、と思う自分もいる。
下駄箱の上にある時計を見る。
7時42分。
——うん、ちょうどいい。
階段を、ゆっくり登る。
一段一段、音を立てないように。
真ん中は避け、手すり側を選ぶ。
僕たちは五年生なのに、教室は4階にある。
5階は4年生、6階が6年生。
理由は、分からない。
5年3組の教室。
後ろの扉から、そっと中に入る。
……
よかった。
僕の机には、誰も座っていない。
なるべく目立たないようにランドセルを置き、椅子に座る。
すると、何人かが声をかけてくれた。
「おはよう!」
明るく、笑顔で。
でも、あまり大きな声ではない。
僕も、聞こえるくらいの声で返す。
「おはよう」
別に、僕に友達がいないわけじゃない。
アニメみたいに、クラス全員からいじめられているわけでもない。
要注意人物は、まだ気づいていない。
……よかった。
胸の奥が、少しだけ軽くなる。
教科書と筆箱を出して、1限目の準備をする。
今日も、静かに始まる。




