08
「……ん? おいっ!? 何かいやがる!!」
「あ? ……なっ!? どこだ!」
さらに二人……合計四人の賊を仕留めたところで、ようやく何者かに背後から襲われていることに気付いたようだ。
襲っているボクが言うことではないが随分と呑気なことだ。
それとも……自分たちが襲われるなんてありえないと思っていたんだろうか……?
ウチを崩壊させていたしその可能性は高いか。
何にせよ……膝近い高さの草が生い茂る草原という地形が功を奏して、地面に這うようにして走っているボクを賊たちはまだ見つけられていない。
これならまだ後数人は減らせるか?
ここからじゃ見えないが、出来れば兵たちもダラダラと応戦するだけじゃなくて何かしらアクションを起こして欲しいところだけれど……。
「クソっ……見つからねぇ……。もういいっ! 先にアッチを片付けちまえばいいんだ。俺たちも行くぞ!」
ボクを見つけるよりも兵たちを全滅させる方が早いと考えたんだろう。
ついでにボクが潜んでいるこの場からも離れることが出来るし悪い考えじゃない。
周りに大声で呼びかけると、兵たちに向かって駆けだした。
離れていく賊たちの背中を睨みつけながら何度か深呼吸をして息を整えると。
「ふぅ…………はぁっ!!」
両足に力を込めて走り始めた。
平地の長距離走なら流石に馬にはかなわないが、草が生い茂った草原の短距離走ならボクの方が速い!
一度は離れた賊たちとの距離をグングンと詰めていく。
また背後から襲い掛かって数を減らしていこう……と剣を持つ手に力を込めたが、前を行く賊が急に振り返った。
「ソイツだ! やっちまえ!!」
その声を合図に周りの賊たちも一斉に振り返ると馬首を返した。
「……誘われた? 賊も頭を使うんだねっ!」
騎乗した賊を相手に生身で正面からぶつかる……大分形勢は悪いが、今回は相手は反転したばかりでまだまだ勢いに乗れていない。
これならボクの方が上だ!
賊が投げてきたナイフを弾きながら、低い姿勢のまま速度を落とさず接近する。
そして、間合いに入ったところで一気に飛びかかった。
「何だコイツっ!?」
全身を現したボクに驚き動きを止めたその隙を突いて、首元に剣を突き刺した。
「がっ……ぁ……!?」
先程までは背後から襲っていたから直接顔を見ることはなかったが……驚愕と苦悶の表情は、いくら敵とはいえ見ていて気持ちのいいものではない。
だが、感傷に浸っている暇はない。
「女……コイツ! 豆殻だ!」
「群狼の生き残りか!?」
先程から仕掛けて来ていたのがボクだとわかり驚愕はしているが……正体が判明したことで逆に戦意が上がってしまった。
「……目立ち過ぎる我が身が憎いね!」
賊たちが混乱から立ち直るまでに、出来ればもう少し数を減らしたかったが……仕方がない。
賊が後どれくらい残っているのかはわからないが、やれるだけやってやるさ!
剣を引き抜きながら馬から飛び降りると、真っ直ぐ突っ込んで来られないように急いでその場を離れて、でたらめに走り出した。
◇
「馬鹿がよぉ!! いくら速くて力があるからってぇ……テメェが素人なのは丸わかりだ!!」
賊がそう叫ぶと、ボクが振り下ろした剣を受け止めるのではなく横から叩きつけることで弾き飛ばした。
「なっ!?」
空中で体勢を崩しながらも何とか転倒せずに着地を果たせたが、すぐに走り出すことが出来ずにもたついていると、そこへ別の賊の槍が突き刺された。
「死ねぇっ!!」
「舐めないでっ!!」
一喝して剣でその槍を思い切り払いのけるが。
「っ!?」
甲高い音を立てて剣身が半ば程ところで砕け散った。
予想だにしない出来事に「あ……」と、賊が前にいるのに、動きを止めて砕けた剣に意識を取られてしまった。
「碌に手入れをしていない剣を馬鹿力で振り回しゃーそうなるに決まってるだろ!」
一方動きを止めてしまったボクと違って、賊は払いのけた槍をクルっと回して叩きつけてきた。




