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「オラァっ!!!!」
「死ねぇっ!!」
ジェイクたちが叫びながら残りのイノシシたちに向かって斬りかかっていく。
まだ生き残っていたイノシシは二頭で、それぞれに三人ずつで挑んでいるし、見たところ口が悪いところを除けば危なげなく戦えている。
どうやら確認出来ていなかった魔獣の残り一頭も、ボクが既に倒していたみたいだし、このまま彼らに任せても大丈夫そうかな?
「イノシシ相手に剣で挑むなんて……昔のボクなら無謀だって思うけど、何だかんだで押してるし、彼らも結構強いのかな?」
少なくとも前世の同年代の男性よりは強いんだろう。
村で初めて出会って以来、彼らの評価が上がるようなことはなかったが……ちょっと見直した。
ボクは彼らから視線を離さないまま、壊れた柵の下に小走りで戻っていく。
「アリスさん!」
壊れた柵の周囲に集まっていた大人たちが、ボクに気付くと笑顔で歓声を上げた。
別に普段も疎まれているわけではないんだがどこかよそよそしいのに……随分と様子が違う。
彼らはボクが直接戦う姿を見るのは今回が初めてだ。
ジェイクを倒したりエリーゼ様を賊から守ったりと……話には色々聞いていただろうが、実際にボクの力を目の当たりにしたことで、ボクに抱いていた印象も随分と変わったんだろう。
ある意味当然のことだし、そんな彼らを現金だなんて言いやしない。
むしろボクの方が引け目を感じていたくらいだ。
まぁ……これでボクが母の娘、村長一族の一人……ってだけの極潰しじゃなくて、ちゃんと役割を果たせるんだぞってことも証明出来たし、引け目を感じることもなくなるかな?
とりあえず。
「向こうももう終わるでしょうし、イノシシの死体の回収を手伝ってもらえますか?」
見るとジェイクたちが相手をしているイノシシは地面に倒れ伏している。
剣を振るっているし、まだ倒せてはいないようだが……ここからひっくり返されることはないだろう。
同じく向こうを眺めていた彼らもそう思ったようで、揃って「もちろんだ!」と頷いてくれた。
「ただ……俺たちだけじゃ手が足りないな。誰か村に応援を呼びに行ってくれよ」
年かさのおじさんの言葉に一人の若い男が「俺が行くよ!」と言って、塀沿いに「もう大丈夫だぞ!」と叫びながら村に走って行く。
さらに別の男は「俺は倉庫の連中に伝えてくる!」と言って、怪我人や避難した者たちがいる小屋に向かって走って行った。
それじゃー……イノシシの回収を頑張ろうか。
槍を持っていない左手をグルグルと回しながらそこら中に転がっているイノシシの死体に向かおうとしたが、後ろから「待ってくれ」と止められた。
「とりあえず……そこのデカいのから片付けようや。アリスさん、アンタは念のため周囲の警戒を頼んます」
「……そうですね。任せてください」
言われてみればもっともだ。
回収しながらだと何か起きたらすぐには対応出来ないし、ここは彼らに任せてボクは周囲の警戒に当たろう。
◇
イノシシの回収に動き出して程なくして、ジェイクたちの方の戦闘も終了した。
剣をブラブラと揺らしながらこちらにやって来ると、ジェイクは「団長! 片付いたぜっ!」と大きな声で報告する。
「また血まみれだね……怪我は……ないのかな?」
「アンタみたいに一撃で仕留められねぇからな。全員怪我はねぇよ。ソッチは何をしてるんだ? 回収か?」
「皆に回収を任せているよ。ボクは見張り。それより……落ち着きなさいよ。魔物よりアンタたちの方が危なっかしいよ」
最近改まって来ていたが、戦闘を終えたばかりでまだ興奮しているのか、ジェイクの口調が初日みたいになっている。
顔まで血まみれで武器を持った男が興奮状態……ってのは、ちょっと良くないね。
ボクの指摘にジェイクたちは自分たちの恰好に気付いたようで、「おっ……」と慌てて互いに指摘し合いながら顔を拭っている。




