07
「アレは何があったんですか? 数の差で兵が劣勢だということはわかりますが、それでもこの見晴らしのいい場所であんな状況になるなんて考えられない」
改めてそう言うと、男たちが慌てながらも答えてくれた。
「最初は兵の方が数が多かったんだ。だが、向こうから商隊の馬車数台が来たかと思うと……バラバラ荷台から飛び降りてそいつらが魔法を兵たちに向かってぶち込みやがった」
「アイツら賊とグルだったんだ。巻き込まれないように商隊を遠ざけようと兵がバラけていたから、半分近くがやられちまった」
「商隊が? そんなバカな……」
商隊なんて商業ギルドに所属している身元が確かな者がほとんどで、街の出入りもしっかりチェックされている。
しかも、馬も馬車もどちらも非常に高価だ。
そんな物を使ってまで正規兵にケンカを売るだなんて……と考えたところで、ボクたちの野営地の光景を思い出した。
朝だったから数は多くなかったものの、襲撃時にあの野営地に立ち寄っていた商隊がいた。
アレを奪われたのかも……。
「おい……アレ、やべぇぞ……」
見ると兵たちが完全に包囲されてしまっている。
兵たちは全員騎乗しているから突破は不可能ではないかもしれないが……その場合この村はどうなるだろうか。
アレだけ手間をかけて襲ったわけだし、そのまま兵を追うかもしれない。
あるいは、消耗も多いしこの場を離脱するかもしれない。
だが、普通に考えると次に狙われるのはこの村だ。
周りの男たちを見るが、健康そうではあっても戦えるようには見えないし……もし村が襲われたら守り切れないだろう。
「アレはボクがどうにかするから、子供たちを村の中に入れて頂戴!」
その言葉に男たちは混乱しながらも「?」といった表情を浮かべてこちらを見ている。
何か言いたいことはあるんだろうが、この状況では説明をしている余裕はない。
もう一度「お願い!!」と強く言うと、男たちの返事を待たずに屋根から飛び降りた。
◇
「ソイツだ! 逃がすなよっ!!」
「回復薬はいくらでもある。突っ込め!!」
屋根の上からでは聞こえなかった賊の声が近付くにつれてハッキリと聞こえてくる。
どうやら兵たちの中の誰かを狙った襲撃だったらしい。
さらに、回復薬はいくらでもあるという言葉。
馬や馬車ほどではないが回復薬だって安い代物ではない。
野営地を襲撃した際にそのまま奪っていったんだろう。
コイツらが……と、思い出すと怒りがこみあげてくるが。
「お陰で兵に集中しているね……」
負傷を恐れずに兵たちに襲い掛かっているから、戦場となっているエリアを大きく回り込みながら接近するボクに気付いていないようだ。
それなら……と、ボクは戦場の一番端にいる賊に狙いを付けた。
昨晩の見張り時にスカートのベルトに挟んでいたナイフを握りしめると、大きく息を吸ってもう一段階速度を上げて一気に距離を詰める。
「おい! 回復薬ならあるんだ! 構わねぇからデカいのぶちかしちまえ!」
コイツは他の戦っている賊に指示を出すのに夢中で隙だらけだ。
馬に乗っているし普通なら難しい相手なんだろうが、今ならいける!
「死ななきゃいいんだ! 気にすんじゃねぇ……あ?」
背後から飛びかかったボクの地面を蹴る音が聞こえたのか、背後を振り返ろうとしたが……もう遅い。
「ふっ!」
首に深くナイフを突き刺すと、コイツが持っていた剣を奪い取って次の目標に向かって走り出した。
次の目標に目を向けるがまだこちらに気付いていない。
「っ!?」
再び魔法による爆発音が響いた。
それに応戦するように兵たちも魔法を撃ち始めた。
あっという間に辺りに爆発音が鳴り響く。
余波はここまで届かないが、それでもこのうるささなら多少は無理が出来る。
お目当ての背後に回り込んだボクは、再び足に力を込めて飛び上がると。
「はぁっ!!」
気合いと共に首元に刃を叩きこんだ。




