05
森で一晩を過ごしたボクたちは、翌朝子供たちが起きるのを待って出発した。
早めに起こしてもよかったけれど……昨日は一日中歩きっぱなしだったし、今日もどれくらい歩くかわからない以上しっかり休ませたかった。
その甲斐があったのか、それとも単なる若さかはわからないが……子供たちに昨日の疲れは残っていないようで、しっかりと移動を行えている。
途中に休憩を挟んだりもしたが順調に距離を稼いた。
そろそろ太陽が真上に近付いているし、食事の時間にしてもいいだろう。
それに、ここまで何もないし……そろそろ森から出てみてもいい頃かな?
「皆、一旦止まって!」
ボクの声に、先頭の男の子が足を止めると不思議そうな顔で振り返った。
「そろそろ野営地から随分離れたし、森から出てみようか」
子供たちは一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、すぐに「ほんとっ!?」と笑顔になった。
ずっと森の中を移動していたし、気が滅入っていたんだろうな。
「とりあえず食事の用意もしたいし、川辺に行こう」
そう言うと、子供たちは元気に返事をした。
◇
簡単な昼食を済ませたボクたちは、再び移動を開始した。
流石に街道に出るのは避けているが、陽が陰っている上に、足場は悪いし魔物や獣にも警戒しながら移動していた森と違って、草原の何と歩きやすいことか。
子供たちの足取りも軽くなっているが、ボクだって負けず劣らずウキウキと……。
「……うん? アレは?」
僕たちが歩いているのは川沿いの草原だが、川を渡った向こう岸の少し離れた場所に木の柵のような物が微かに見えている。
「村かな? 確かこの辺りにもあったはずだけど……」
軽く背伸びをしてそっちに視線を向けていると、子供たちがしがみついてきた。
「行ってみようよ!」
「もしかしたら知ってる人がいるかも!」
そして、口々に村に行こうと言い出した。
いい加減情報も欲しいし、村に向かうことはボクも賛成だ。
そのためにも。
「そうしようか。どこか川を渡れる場所を探さないと……あ、コラ! 待ちなさい!!」
向こう岸に渡れる場所を探そうと言おうとしたんだが、言い終わるより先に子供たちが川に向かって走り出してしまった。
「浅いから渡れるよ!」
「真っ直ぐ行った方が早いって!」
少し前の地点だが食事の用意をする時に川の様子を見ているし、自分たちでも渡れる深さなのがわかっているんだろう。
ようやく森から出れたし村に立ち寄れるから……ってテンションが上がっているのかもしれない。
何を隠そう……ボクもそうだ!
「気を付けて渡るんだよ!」
子供たちに注意をしながらも、ボクも川に向かって走り出した。
◇
川を渡ってしばらく走っていると村の周囲に張り巡らされた柵がハッキリ見えてきた。
大きい村ではないが荒れた様子もないし、何軒か大きな建物も見えている。
外の人間を拒むような雰囲気は感じられないし……情報を集めることが出来そうだな。
「……? どうしたの? 立ち止まったりして……」
視線を村に向けていたから気付かなかったが、何やら前を走っていた子供たちの様子がおかしい。
あんなにはしゃいでいたのに黙り込んでいるし、足も止めている。
ボクが近づいて行くと一人が振り向いたが……その表情は青ざめていた。
そして、震える声で「音が……」と呟いた。
ボクには聞こえなかったが、被っている袋が邪魔になっていたのかもしれない。
袋を脱いで耳を澄ましてみると……。
「……っ!?」
風で揺れる草の音に交ざって、微かにだが怒声と馬の蹄のような音が聞こえてくる。
「これはっ……戦闘音? 村が襲われているの?」
マズい……急いでこの場を離れないと……と、子供たちに逃げるように指示を出そうとしたが、子供たちが村の方を指差している。
「お姉ちゃん、あれ!」
「あれ? ……アレは!?」
子供たちが指す先に視線を向けると、馬に乗った武装した男たちの姿があった。
それもただ武装した男というわけじゃなくて、正規の兵……騎士団の兵たちだ。




