04
一しきり子供たちの疑問に答え続けたところでようやく満足したらしい。
それと同時に、改めて自分たちが危険な状況であることがわかったらしく、急いで出発しようと言い始めた。
「駄目だよ。まずはしっかり休憩しよう。どうせ夜まで歩いたって今日中には到着出来ないからね」
そう……それが一番の問題だった。
あの野営地から街道を最短距離で進んでも十キロメートル以上はあるはずなのに、今は森に入って迂回しているから一体どれくらいの距離になるのか。
せめて倍程度であってくれたら助かるんけど……と行程を考えていると、子供の一人が不安そうな声で「お姉ちゃん」と訊ねてきた。
「ん? どうしたの?」
「今日中に着かないってことは、夜はどうするの……? もしかして森で……?」
「うん。今日は森の端で夜を過ごそう」
ボクの言葉に子供たちが恐怖で息を飲んだのがわかった。
昼間ですら子供だけで森に入るなと教わっているのに、夜を過ごす……と言われたら確かに恐ろしいだろう。
周りには何もいないのに、しきりに周囲を窺っている。
「襲って来た連中が何者なのかもわからないし、いくら夜だからって見晴らしのいい場所に留まることは避けたいんだ。でも安心してね。夜はボクが寝ずに見張りをするから」
その言葉で多少は安心出来たのか、不安そうだった子供たちの表情が和らいだ。
「よし……! 皆食事は終わったね? お姉ちゃんは道具を洗って来るから、皆はゆっくり休んでおいてよ」
ボクは手早く鍋や食器を集めると、「気を付けてね」と言う子供たちに手を振って、再び森から出て行った。
◇
「……よく寝ているね」
一ヵ所に纏まって眠っている子供たちを、樹上から見下ろして呟いた。
あれからボクたちは何度か休憩を挟んだものの、ほぼ一日中移動を続けていた。
街道じゃなくて森の中を移動しているから、はっきりとした位置は把握出来ていないが……それでも、まだ目的地には遠いだろう。
近付いているのは確かだし、明日も早朝から移動を開始したら間違いなく夕方までには到着出来るはずだ。
何も起きなければ……だが。
「結局襲って来た連中の狙いはわからないままか。……途中見かけた村も襲われたりはしていなかったし、近くで戦闘が起きた様子もなかったし……ウチを狙ったのは確かだけど、それだけとは思えないんだよね」
群狼戦士団の野営地は毎回任務を引き受ける街や村から少し距離をとった位置に設営している。
場所はある程度限られているが、それでも常に決まった場所にいるわけではないし、事前にあの場所に野営地が設営されているって情報が伝わっていなければ襲撃は無理だろう。
ただ、そこまでするほどの価値がウチにあるかどうか。
「詳しいことはボクも知らないけど、今回は物資の調達にあそこに寄ったってだけだし……何か重要な任務を引き受けていたってわけでもないはずだよね」
ここ最近の野営地や移動の際の様子を思い返してみるが、変わったところはなかったはずだ。
お手上げだ……と幹に背を預けて溜め息を吐いていると、「お姉ちゃん……」とボクを呼ぶ声が下から聞こえてきた。
いつの間にか目を覚ましたらしい女の子が、僕の姿を探している。
急いで飛び降りて彼女の下に向かうと、しがみついてきた。
「どうしたの? 寒かった?」
今は春だし夜でも凍えるほどではないが、流石に上に何も被せないと寒かったかもしれない。
「ごめんね……焚火はもしかしたら外から見えるかもしれないから……」
洗濯の帰りで折角布を持っていたんだから、何枚か持って来たらよかったなと後悔していると、彼女は頭を上げてジッと僕の顔を見ていた。
「……お姉ちゃん、袋は脱いでるの?」
「うん? ……ああ、穴を開けてるけど音が聞き辛くって。見張りがソレじゃ駄目だからね」
「……そのままの方が怖くないよ」
「ボクは怖いって思われてたの? ……初めて知ったね」
苦笑しながら彼女を抱き上げると、皆が寝ている方に歩いて行く。
「少し一緒にいるから、ちゃんと眠るんだよ」
「うん」




