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街壁が見え始めてから程なくして、ボクたち一行は街の門の前まで到着したんだが……そこでは街への入場するために審査を受けている者たちが並んでいた。
前世で近いイメージでは空港の入国審査のゲートだろうか?
武装した兵が並んでいて、威圧しない程度の迫力を放っている。
あそこで犯罪者や不審者、禁制品の持ち込みなどを防いでいるんだろう。
……そういった類の施設があるのは当たり前の話だが、色々なことがあり過ぎてすっかり失念していた。
もっとも、馬車の中でどうやってボクたちのことを説明しようか……と狼狽えているボクに、隣に座るお嬢様が「心配ありませんよ」と笑っている。
ボクが胸の前で手を組んでオロオロしていると、その手に自分の手を重ねてきた。
ふと思ったんだが……このお嬢様はちょっとスキンシップが多い気がするが、ボクの気のせいだろうか?
困惑するボクを他所に、お嬢様は窓の外に視線を向けた。
どうやらボクたちは優先されるようで、並んでいる者たちを横目に門の前へと進んで行く。
今更だが、賊を捕らえている馬車は、荷台が鉄格子になっていて外から丸見えになっていて、騎士団が賊を護送しているんだと一目でわかるようになっている。
その馬車と一緒に、ボクたちが乗っている賓客用の馬車がいるからどういうことなんだろう……と思うだろう。
しかもその馬車の窓からは、とてもじゃないが賓客には見えない子供たちが外に向けて手を振ったり指を指したりしているから、並んでいた者たちの視線を集めているし、それに気付いた子供たちがさらにはしゃいでいる。
「皆、そろそろ街に入るから大人しく座ろうね」
「はーい!」
キリが無さそうになったので、とりあえず窓から離して座らせると……。
「あれ?」
馬車は止まることなくそのまま街の中へと入っていった。
「止まらなかったね?」
「何も聞かれたりしないの?」
審査を楽しみにしていたのか、子供たちがどこか残念そうな声で訊ねてくるが……ボクもどういうことだろうと首を傾げるしか出来ない。
「そちらの事情がまだ分かりませんでしたが、護送の応援を求めた際に、念のため群狼戦士団の関係者が緊急で街を訪れる……と話を通しておきました」
「おぉ……助かりました。ありがとうございます」
子供たちの話を聞いた時点で動いてくれていたのか。
移動中に兵に囲まれていることに気付いた時もそうだったが、少々やましいことがあるだけにドキドキしてしまったが……助かった。
「そもそも私が同じ馬車に乗っている時点で、貴女たちは身の保証がされているようなものですからね」
ボクが心配性過ぎるだけなのか、お嬢様は話を始めた。
「これからですが、捕らえた賊は騎士団の詰め所へ運ばれます。そこで処遇が決められますが……流石に今日一日で終わりはしないでしょう、アリスさんに話を伺うのは明日以降になるでしょう。私たちは一先ず代官の屋敷に向かいます。詳しい話はそちらに着いてからにしましょうね」
一つ訊ねたいこともあったがそう言われてしまっては仕方がない。
ボクは「はい」と頷いた。
◇
ラカンパの街は大きく分けると、街の住民が暮らす住宅区と店や倉庫並ぶ商業区。
それと、代官の屋敷や騎士団の詰め所などがある行政区がある。
ボクたちが街に入ったのは西門からで、そちらは商業区の範囲内だ。
馬車の中でこの街にはあまり他国の者は来ない……みたいなことを言っていたが、それでも街の住民らしい普段着の者や、買い付けか売りに来たのか大きい荷物を持った者など、いたる所に人が溢れている。
街に入った当初は建物の大きさや多さ、通りの賑やかさに子供たちも窓の外を眺めながら楽しそうにしていたが、徐々に人の多さに威圧されたのか今では静かに席に座っている。
かくいうボクもそうだ。
前世以来の人の賑わいに圧倒されている。
この世界に生まれて十余年……すっかりこちらに馴染んでしまったようだ。




