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ボクの気分転換と街に着くまでの間の時間潰しを兼ねて、お嬢様からこの辺りの話を聞くことになったんだが、まずは大前提ということでこの国の名前から始まった。
ポーラ王国。
由来や歴史は知らないが、国名くらいはボクでも知っている。
平地に広大な国土を持つ国で土壌も水も豊かな国らしい。
思えば森や川はあっても、この世界に生まれてから山を見かけたことがなかったが、国全体がそんな感じなんだとか。
そして、次に聞いたのが今いる領地がポロネス伯爵領という場所であること。
これももちろん知っている。
もっとも群狼戦士団の設立の経緯で聞いたことがある程度で、どちらも詳しいことは知らなかった。
初めて知ったことだがポーラ王国は周囲を複数の国に囲まれている国で、周辺国の中にはポーラ王国の国土を侵そうとするなど決して友好的な関係ではない国もあるそうだ。
平地だから通行の便が良く、豊かで農業にも適した土地……ともなれば手を伸ばそうとする国があってもおかしくはない。
このポーラ王国は……前世のポーランドとかウクライナとか、あの辺りと似た位置関係の国なのかもしれないね。
認定傭兵団なんて制度があるのは、国土を守るための人手が不足しているからなんだろう。
この国や他国の人口や経済力について遠回しに訊ねてみたが、流石に公言していい情報ではないようで教えてはもらえなかった。
だが、お嬢様の話し方などから、周辺国家に比べて強国だというわけではなさそうだ。
良くて同等、悪くて弱小国ってところかな?
そう考えると……認定傭兵団の一つである群狼戦士団が請け負っていた責任ってのは決して軽いものではなかったはずだ。
お飾りの団長の座にボクを就けて実質壊滅状態のままでいるよりは、他者の思惑が入ったとしても活動できるようにした方がいいと思うんだが……お嬢様はそうじゃないようだ。
自分の命が狙われたのも関係しているかもしれないが、戦力が落ちることよりも余計な人間が力を持つことの方を警戒しているんだろう。
ボクとは持っている情報量はまるで違うだろうし、今のところこのお嬢様は大分まともな人みたいだから、そこまで変な決断ではないと信じよう……。
◇
さて、国と領地とちょっとの脱線を経てから、いよいよラカンパの街についての話になった。
「今もそうですが、この辺りは農業地帯なのです。ラカンパの街の前身は小さな農村だったのですが、周辺にある農村の中心に位置していました。そのため収穫物を集めやすく、また商人も立ち寄りやすかった……といった事情もあり他の村に比べて発展していったのです」
「揉めたりはしなかったんですか?」
その村だけの力ではなく、ただ位置が良いからってだけで発展していっては他の村も面白くないだろう。
特に村長たちは。
排除とまではいかなくても、交流を減らしたり逆に他所との交流を深めたり……何かしら行動を起こさなかったんだろうか?
「したそうですよ。ですが、当時の領主……私の曽祖父がかなり早い段階で間に入って、互いの家から人を送りあって解決しました。要は政略結婚ですね」
曾祖父というと……五十年とか六十年前のことかな?
「……大事になっちゃったんですね」
ボクの言葉に、お嬢様が苦笑しながら頷いた。
「農村レベルで……というのは失礼かもしれませんが、本来なら領主が介入するようなことではないのです。ですが、必要だと判断したのでしょうね。会合で周囲の領地の者から過剰な介入ではないかと非難された記録が残っています」
聞いた感じだとちょっと揉めた程度の段階で介入しているし、むしろ介入したことで大事になってしまっている。
やり過ぎでは……と周りも思うだろう。
もっとも。
「結果的に現在のラカンパの街は、国境に接するポロネス領では珍しく他国の者が滅多に立ち寄らない、ポロネス領内の食品の流通拠点として重要な役割を担っていますから、曽祖父は慧眼だったのでしょうね」
お嬢様は誇らしげにそう纏めた。




