03
「一旦止まろう! 男の子二人に女の子四人……皆いるね」
森に入ってしばらく移動を続けていたが、襲撃された場所から距離はもう十分取れたしいい加減休憩してもいいだろう。
ボクの声に前を走っていた子供たちが足を止めた。
ずっと走りっぱなしだったから大分消耗しているようで、皆地面に座り込んでしまっている。
十歳前後の子供たちが何の心構えも無しに、足場の悪い森の中を荷物を持って数キロメートルも走り続けたんだし無理もない。
小休憩のつもりだったが、いっそちゃんと休憩を取ってもいいかもしれない。
「お姉ちゃん……お腹空いた」
一人の子がそう言うと、他の子たちも「お腹空いた」「疲れた」「休みたい」と口々に不満を言い始めた。
これはもう限界かな?
「そうだね。ちゃんと休憩をしようね」
そう言って、静かにするようにと口元に指を立てると、子供たちは大人しく口を噤んだ。
まだ泣き喚いたりするほど余裕を失ってはいないし……森のすぐ外を流れる川から水を汲んでくるくらいの間は、子供たちだけでもここで待っていてもらえるかな?
「ご飯にしようね。お姉ちゃんは水を汲んで来るから、皆はここで大人しくしておいて。でも、森の中だから気を抜いちゃ駄目だよ?」
「早く戻って来てね」
「うん。皆もいい子でね」
不安そうな子供たちの声に安心させるように優しく答えると、森の外の様子を軽く窺ってから飛び出した。
◇
適当に詰め込んで来たため碌な調理器具はないし、作れたものは干し肉と野菜を使った簡単な炒め物だった。
パンすらないし随分と質素なメニューになってしまったが、それでも子供たちは一息つけたようだ。
それと同時に、良いことなのか悪いことなのか……色々考える余裕も出来てしまったらしい。
「姉ちゃん、これからどこに行くの?」
「村に逃げるんならこっちじゃなかったよ?」
「父ちゃんたちはどうなったの?」
一人が口を開くとあっという間に皆も喋り始めてしまった。
一人一人に答えていきたいが六人もいればキリがないだろう。
再び口元に指を立てると、子供たちは大人しくなっていく。
皆が口を閉ざしたのを待って、ボクの考えを伝えることにした。
「まず……ボクが目指しているのは近くの村じゃなくて、もう少し離れたところにあるラカンパの街だよ。あそこは母さんの実家があるし、皆も預かってもらえるからね」
ボクの母親は下級貴族の娘だ。
上り調子の傭兵団団長である父に嫁いで子供を産みはしたが……傭兵団の暮らしが肌に合わず、街から支援するという名目で別居生活を行っている。
他にも理由はあって、必ずしも母が悪いというわけではないし、物資の調達などで力になってもらっているから悪い感情は持っていない。
急に転がり込んだとして、向こうがどう対応するかは実はわからないんだが……どうにか出来る自信はあるし、敢えて子供たちを不安にさせることもないだろうと、その点は伝えないことにした。
「でも……近くの村にも知り合いはいるよ? そこに用事があるから父ちゃんたちはあそこにいたんでしょう?」
「うん。村の警備や野盗の討伐にウチから派遣したりしてるから、知り合いは多いよね。でも……野営地が襲撃を受けたってことは、父さんたちがどうなっているかわからないんだ。もし父さんたちが負けるような戦力だとしたら、小さな村じゃ相手にならないよ」
実績のある傭兵団とはいえ、武装した大量の荒くれ者たちが村の中に入りこんだんじゃ、住民は不安になるだろう。
だからこそ、少し離れた場所に野営地を設置していたんだ。
そして、その不安を少しでも解消するために、戦士団の中で見目好い連中を周辺の巡回警備に送り出している。
襲撃者の目的はわからないが、あそこまで好き勝手に暴れていたってことは……その巡回警備を突破して、野営地に不意打ちを仕掛けてきたんだろう。
この辺の小さな村じゃ、そんな連中を凌ぐことは出来ない。
狙いがわからない以上、距離はあっても戦力が整った場所を目指す方が安全だ。




