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部屋に入って来たのは、先程の話し合いの際に残った二人のうちの片方だった。
話を終えた後はボクたちは子供たちに会ったりこっちに来たりしていたけれど、彼らは他の兵たちと合流して外の後処理とかを進めていたらしい。
「お嬢様、応援の隊が到着しました。護送の準備に取り掛かりますがよろしいでしょうか?」
「ええ。こちらも彼女に確認を取っておきます」
「はっ。それでは失礼します」
そう言って部屋を出て行ったんだが、その直前に一度こちらに何か……値踏みをするような視線を送っていた。
部屋での話し合いの時は別に警戒するような様子はなかったし、ボクも変な真似は何もしていないはずだけれど、この短い時間で何かあったんだろうか……とドアを眺めながら首を傾げていたが、お嬢様の「アリスさん」と呼ぶ声に振り返った。
「へ? あ、なんでしょう?」
「貴女にあちらの荷物の確認をお願いしたいのですがよろしいですか?」
「荷物……? あぁ、なんか色々広げられていますね。まぁ……何となく予想は付きますけど、アレは何なんですか?」
先程の彼の様子も気になるが、この部屋に色々広げられている代物も気になっていた
剣や鎧のような武具や、木箱に一纏めに突っ込まれている様々な道具類。
およそ普通の村にはふさわしく無いような物がたくさん並べられているし、ウチの野営地を襲った際に賊が持ち去った物だろう。
……これは誰の物になるんだろう?
「恐らく貴女の考える通りです。賊が私たちに奇襲した際に複数台の馬車を利用したことは話しましたね? 全部に賊が潜んでいたわけではなくて、実際に荷物も積まれていました」
「野営地にあった物を持って行っていたんですね。まぁ……ウチは結構大きいところだったみたいだし、良い物はあったでしょうけれど……それって窃盗とかにならないんですか?」
何かしら犯罪に関与していたら、捕虜じゃなくて犯罪者として扱うとか言っていた。
ウチの野営地を襲って奪っていったのなら、それはもう窃盗とか強盗とかだと思うんだが、今回の件に絡んでいることだしダメなのかな?
「……申し訳ありません。傭兵同士の争いとして処理するので、罪に問うのは難しいでしょう」
「やっぱりかー……わかりました。話を続けてください」
残念な気持ちではあるが理解も出来る。
時間もあまりないみたいだし、ボクは話の続きを促した。
お嬢様はもう一度「ごめんなさい」と申し訳なさそうに告げると、広げられている荷物の方に歩いて行く。
「この中で、まずは貴女の所持品だと証明出来る物はありますか?」
お嬢様の後を歩いていたが、その言葉に「……え?」と固まってしまう。
団内の女子供の荷物は、服や下着を除けばほとんど共有物だったし、そもそも一々名前を書いたりもしないから証明するのは無理だろう。
ボクはあくまで裏に引っ込んでいたから書類に署名をしたりすることもなかったし……。
そう口に出しかけたが、お嬢様がスッとボクの口に手を当てた。
「む」
「もしくは、群狼戦士団の所持品であると証明出来ますか?」
「群狼戦士団の…………あっ!」
思いついたことがあり、荷物を広げられている場所に駆け寄った。
「何かあるのか? 時間もないし必要なら手伝うぞ?」
目立つ剣や鎧は無視して、木箱から色々取り出しては戻していくボクを見て、カイルと呼ばれていた兵が手伝いを申し出てきたが、次の箱に取りかかったところで箱の奥に緑の布を見つけた。
「いや……もう見つけたから大丈夫」
その布を引っ張り出して広げて見せた。
三頭のオオカミの横顔が刺繍されている緑の布……父が戦場に出る際にいつもスカーフのように首に巻いていた物だ。
「団旗なんて大袈裟な物は無いけれど……群狼戦士団の紋章です。これなら証明になりませんか?」
これなら知っている者だっているはずだし、群狼戦士団の所有品だと証明出来るはず!




