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「傭兵ってあんななんですか?」
建物の中に入って廊下を進む中、先程の光景を思い浮かべながらお嬢様に質問をした。
一応これでも傭兵団育ちではあるが、基本的にいつも裏にいたから傭兵らしい姿や振る舞いをほとんど知らないでいる。
傭兵ってあんな状況でも軽口を叩けるような人たちなんだろうか?
「捕虜として扱うと決めましたからね。多少の罰は受けるにしてもすぐに解放されるでしょうし、村人の前で情けない姿を見せられないのでしょう。もちろん詰め所で取り調べを行いますし、そこで今回の件以外で何か犯罪に関与した証拠でも出てきたら別ですが……あの様子だとそれもなさそうですね」
お嬢様はそう言って「はぁ……」と小さく溜め息を吐いた。
人手が足りない上にすぐ側に村があったから妥協したんだろうけれど、経緯はどうあれ自分を狙った相手だし、お嬢様はあの傭兵たちを始末しておきたかったのかもしれない。
かと言って、村人の手前今更やっぱり処刑する……とか言えないだろうし、ストレスが溜まりそうだ。
あの連中はそのことを理解していて、敢えてあんな振る舞いをしたとかは流石にないだろうが、お嬢様が言ったように周りを気にして強気に振る舞っているってことはあるかもしれない。
どこかの団に所属しているとかじゃなくて、個人で傭兵をやっているみたいだし……面子は大事なんだろう。
「大変ですねぇ……」
「仕方がないことです。私は今はあくまで領地の騎士団の一員でしかありませんからね。あぁ、こちらですね」
目的の部屋に到着したようで、お嬢様はドアを軽く叩くと返事を待たずにドアを開けて中に入っていく。
手を繋がれたままのボクも一緒に入るが、部屋には何人かいるようでボクを見て驚いているようだ。
別に人を驚かせる趣味はないが、コレがボクを見た人間のあるべき姿だよな。
「カイル。待たせましたね」
「いえ、用意は出来ています。その籠は……アリス嬢か? そちらも動けるようになったみたいだな」
カイルって誰だ……と思ったが、声を聞いてすぐにわかった。
あの派手な一撃を放った兵だ。
「お陰様で。そっちも大分きつそうでしたけど大丈夫みたいですね」
「多少は余力を残していたからな。それに、魔力を消耗しただけで君のように負傷したわけではない。少し休めば問題無いさ」
カイルと呼ばれた彼はそう言うと、部屋の奥に歩いて行き中にいる誰かに「アレを」と指示を出した。
外では怒鳴り声や今にも倒れそうな声だったりでよくわからなかったが、改めてこうやって聞いてみると大分若い男性のようだ。
それでも人に指示を出せているし、騎士団の人間だってことを抜きにしても結構なお偉いさんの可能性があるな。
……失礼な真似はしていないよね?
ボクが戦闘時の彼とのやり取りを思い出している間に用意が出来たらしい。
「お嬢様、どうぞ」
「ええ、ありがとう。アリスさん、こちらを」
彼から受け取った何かをお嬢様がボクに渡してくる。
受け取ったソレは、手のひらより大きいくらいの板みたいな何かで……。
「あぁ、仮面ですね」
外の傭兵や目の前の彼のことで忘れていたが、そもそもここに来たのは仮面を受け取るためだ。
「ええ。着けるのに少しコツがいるので……この場で構いませんか?」
「あ、はい。お願いします」
着けるのにコツがいる仮面ってどんな代物なんだろう……。
仮面を持ったまま首を傾げていると、お嬢様が目の前までやって来て籠に手をかけた。
「それでは、失礼しますね」
籠がなくなりようやく部屋の様子がわかる。
思った通り広い部屋で、中には普通の恰好をした村人らしき者たちが何人もいた。
部屋には大量の荷が広げられていて、彼らはそれのチェックをしているみたいだ。
武具に……薬品なんかもあるみたいだし、この村の持ち物って感じはしないね。
……賊の所持品か、それともウチの野営地から奪った代物かな?




