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「アリスねーちゃん!」
子供たちが集まっている部屋に入ると、気付いた子供たちがすぐに駆け寄って来た。
麻袋から籠に変わったし、服だって新しい物になっている。
それにも関わらず、姿を見せるなりすぐにボクだとわかったらしい。
監視か警護のためかはわからないが、上での話し合いには初めから参加せずにこちらにいた兵や、子供たちを見てくれていた村の女性たちは、ボクの姿を見て明らかにギョッとしているんだが……その方がむしろ真っ当だ。
「おや? お姉ちゃん恰好が変わったのによくわかったね?」
割と真面目にそう聞いたんだけれど……どうやら本気だとは受け取らなかったようで、おかしそうに笑っている。
少々遺憾ではあるが……とりあえず六人とも揃っているし一安心だ。
当たり前なのかもしれないが、今朝に比べたらみんな元気そうにしている。
村の外で戦闘が繰り広げられていたのは確かだが、周りに兵たちがいるし……よくよく考えると、普段ボクたちが暮らしていた野営地よりもずっと安全な場所だもんな。
「……皆大丈夫そうだね」
「うん。お姉ちゃんは?」
「怪我してたんでしょう?」
先に子供たちから事情を聞いたと言っていたし、その際にボクのことも話したんだろう。
周りに集まってはいるものの、抱き着いたり掴んだりしない辺り、気を使っているようだ。
「こちらのお嬢様が治療してくださったから大丈夫だよ」
まだあちらこちら痛むが、傷自体は治っているみたいだし心配させることもないだろう。
「……名前で呼んでくださっても構わないのですよ?」
お嬢様が少々不満そうな声でそんなことを言ってくるが、貴族のお姫様のお相手なんてしたことないし、礼儀作法だってよくわからない以上は……迂闊な真似は出来ないだろう。
彼女の名前を一度聞きはしたが、色々なことがあったからすっかり忘れてしまったのは関係ない。
「まぁ……そのうちに。これからボクたちはお嬢様や騎士団の皆さんと一緒にラカンパの街に向かうんだ。いつでも出発出来るように準備をしておこうね」
子供たちは「はーい」と返事をすると、女性たちの下に走っていった。
「アリスさん、私たちもそろそろ……」
「わかりました」
ボクは女性たちに「お願いします」と一度頭を下げると、お嬢様と一緒に部屋を出た。
◇
次にボクたちが向かった先は、屋敷を出て少し行ったところに建っている集会所だった。
ここはボクが戦闘の様子を確認するために飛び乗った建物だ。
村長の屋敷にも集まれる部屋はあったが、向こうはあくまで真面目な会議用の部屋で、こちらはもっと砕けた村民同士の集いなどで利用されるらしい。
さらに、村民だけじゃなくて外から来る商人が臨時の店を開いたりもするようで、馬車や馬を繋ぐ場所も用意されている。
ちなみに、今もそこに馬車や馬が繋がれているが、それだけじゃなくて捕縛された賊も一緒に繋がれていた。
籠越しではっきりとは見えないが、この場に繋がれている者たちはとりあえず簡単な治療程度は施されていて命に別条があるようには見えない。
捕虜として扱うってのは本当らしい。
彼らも周囲に武装した兵や村民がいるからってこともあるかもしれないが、繋がれたまま神妙な様子で地面に座り込んでいる。
このまま応援の兵が来るまで大人しくしているんだろう……と思ったんだが。
「お? マメガラの嬢ちゃん、気が付いたのか?」
「灰狼のやつ、えらいもん隠してやがったな」
「もし団を立て直すつもりなら雇ってくれよ!」
近付いてきたボクたちに気付くと、元気に声をかけて来た。
つい先程まで本気で殺し合っていた相手なのに、この気やすさは何なんだろう……。
兵に「静かにしろ!」と怒鳴られると軽口を止めたが、それでも特に堪えたようには思えないし、傭兵ってこんなメンタルなんだろうか?
お嬢様は「気にしなくていいですよ」と手を引いて中に入っていくが、ボクは呆れ半分感心半分で彼らを振り返りながら見ていた。




