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「アリスさん、これから私たちと一緒に移動してもらいますが……子供たちも一緒で構わないのですよね?」
話を終えて一息つくためにすっかり冷めてしまったお茶を飲んでいると、お嬢様がそんなことを言ってきた。
「へ? あ、はい。とりあえずラカンパの街に一緒に行く予定なので。この村も今は受け入れてくれていても、ずっとってわけにはいかないですよね?」
「そうですね。もっと大きい街なら街や教会が運営する孤児院がありますが、流石にこの村にはありません。労働力として見るにも幼すぎますからね……」
予想外の本格的な戦闘にすっかり気を取られていたが、ボクたちもとりあえずどこかに落ち着く必要がある。
いくらだったかわからないが気軽に店で服を手に入れられるし、村長の屋敷ではあるが調度品を揃えた賓客用の部屋もあるし、この村は思ったよりも栄えているみたいだが……それでも、全く縁のない子供たちをまともに育ててくれるかっていうと難しいだろう。
そのためにも、母がいるラカンパの街に向かわないといけない。
実はラカンパの街に行ったことはないし、母のことも全くと言っていい程記憶にないが……いざ会いさえしたらどうとでも出来る自信はある。
そうお嬢様に伝えると、彼女は「わかりました」と頷いた。
「賊が利用していた馬車をこちらで回収しています。それに乗って一緒に向かいましょう」
「いいんですか?」
「ええ。街の騎士団の基地に連絡をして捕虜を護送するために馬車を用意してもらっているのです。貴女たちも馬車で移動した方が歩調を合わせやすいですからね。説明に行きましょうか」
どうやらボクと一緒に子供たちの下に向かうつもりらしく、お嬢様はそう言うと席から立ち上がった。
◇
ボクが寝かされていた部屋や、先程話し合いをしていた部屋は屋敷の二階にあったが、子供たちは一階にある村民が集会とかをする部屋で、ここで働く村の女性たちに見られながら待機しているそうだ。
子供とはいえ素性の知れない者たちなのに、思ったより悪い扱いではないのはお嬢様の口添えがあったからかな?
ボクにも何かと気を使ってくれるし、良い人だな……。
廊下を歩きながらしみじみとそんなことを考えていると、お嬢様が声をかけて来た。
「……結局籠は被るんですね?」
「こっちの方が落ち着くんです」
先程までは体調がいまいちだったため籠を脱いで素顔を晒していたが……如何せん今まで日の出ている間は麻袋を被る生活を送っていただけに、怪しまれそうだとは思ってもこのスタイルに戻ってしまう。
問題は。
「あたっ!?」
麻袋と違って、視界が悪い上にサイズが大きいところだろうか?
曲がり角で感覚がつかめずにぶつかってしまった。
「……着替えを入れていた籠ですからね。被るには大き過ぎるでしょう」
そう言って、お嬢様がズレた籠を直すと、もうぶつからないようにと手を引き始めた。
「袋とか余ってないかな……」
麻袋は何かと使い道があるから、中々余ることはないと思うし……難しいかもしれない。
「私の装備で仮面がありますよ。防具の一種で目と鼻と口の穴が開いていますが、少々重たい上に硬くて喋り辛いんですよ。それで良ければ持って来させましょうか?」
ボクのボヤキが聞こえたようで、お嬢様がそう提案してくれた。
防具で使っている仮面か。
前世のマンガやドラマで見た、戦国武将が被っているような物だろうか?
ともあれ、この籠よりは使いやすいのは確かだろう。
「じゃあ……それをお借りします」
「わかりました。騎士団で女性団員は支給されるのですが……私だけじゃなくて知り合いも使ったことがないんですよ。規則なので携帯こそしていましたが……思わぬところで役に立ちそうですね」
よく前が見えないので表情こそよくわからないが、お嬢様は何やら楽し気な様子で話している。
その様子から、あまり変なデザインじゃないよね……と不安になって来たが……そんなに変な物は勧めてこないよね?




