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ウチの野営地を襲ったものまでそうかはわからないが、お嬢様一行を襲った賊は、野盗とかではなくて大半が傭兵だったらしい。
「あの、その傭兵はどこかの傭兵団ですか? それとも……個人ですか?」
気になったことを訊ねると、お嬢様は「個人です」と答えた。
「街で引き渡した後にそちらでも調査はするでしょうが……この期に及んで虚偽の申告をする意味はないでしょうし、恐らく事実でしょう。何か気になることでもありましたか?」
「何か指揮系統がバラバラっぽい印象を受けたし、回復薬があるからとはいえ平気で巻き込もうとしていたり、いまいち仲間意識が希薄な気がしたんです。無法者だから……って思ってたけれど雇われだったからなのかな?」
回復薬だって万能じゃないのはボク自身が身をもって理解している。
賊だろうと何だろうと、仮に同じ仲間ならいくら回復薬があるからってあんな諸共吹き飛ばすような方法は使わないよな……と思っていたが、一時的に集められたってだけのバラバラの連中なら……まぁ、理解は出来る。
「碌に任務の説明は無かったそうですが、特に気にしなかったと言っていました。……大きな声で言えることではありませんが、個人や少数で活動する傭兵に依頼して、隣接する領地の境界線付近を荒らして回ることはよくありますからね」
そう言ってお嬢様が溜め息を吐くと、二人が同意するように頷いて話を引き継いだ。
「捕らえた者たちからどの街で誰から依頼を受けたのか……それを聞き出してから調査に入ることになるため時間はかかるだろう」
「承諾はまだだったが……君にも近くの街に同行してもらう。我々も同席するが、そこで騎士団から改めて話を聞かれるはずだ。構わないな?」
「近くの……ってラカンパの街ですよね? ボクもそこに行く予定だったから全然構わないんですが……」
一通りの質問に答えたところで、話が終わりそうな雰囲気になって来たが、一つ伝えたいことがあった。
「あの……一つ伝えたいことがあるんですけど……」
「あら? 何ですか?」
「お嬢様といた時、最後に仕掛けてきた男のことを覚えていますか?」
「……あの場にいた賊も巻き込んで私たちに仕掛けてきた男ですね? 発動を待たずに引き返したので私は顔を見ることが出来ませんでしたし……残念ながら取り逃しました」
「ソイツなんですけど、ウチの野営地で何度か見たことがあります。今回の場所だけじゃなくて、他の場所でもです」
ボクの言葉に、お嬢様は「何ですって?」と声を上げた。
そして、他の二人も何やら鋭い目つきでこちらを見て来る。
先程までとの雰囲気の変わり様に「おぉ……」と気圧されてしまった。
「失礼しました。もう少し詳しく聞かせてもらっても構いませんか?」
「あ……はい。といっても、ボクも野営地で見かけたってことと、団の人たちが「キツネ目」って呼んでいたってことくらいしか知らないですよ」
「そうですか……その男は群狼戦士団の者ですか?」
「違います。依頼の……手配? とかそんなのをやってるとか聞いたことがあります」
お嬢様の質問に答えると、二人が顔を見合わせて話し始めた。
「斡旋屋か。認定傭兵団に話を持って行くことが出来る者となれば、ある程度限られてくるな」
「それに、個人の傭兵を集めることも難しくはないだろう。……斡旋屋がお嬢様を狙うような大それた計画を練るとは思えないし、指示した者がいるはずだ」
「全額ではないだろうが、あの人数なら前金だけでも相当な額になるだろう」
「それが出来る者となると……大店の主か……あるいは貴族か。厄介な問題になるな」
そして、ボクたちを置いたまま深刻そうな顔で唸っているが、その二人を置いてお嬢様がこちらに話しかけてきた。
「一先ず……手掛かりは一つ手にしましたね。そろそろ呼んだ応援が到着する頃でしょうし、この場はこれでお開きにしましょう」




