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さて、質問役はお嬢様で、二人の兵は議事録のような物を録る形で始まったんだが……尋問でも詰問でもなく、本当にただ質問をされるだけのようだ。
しかも大分気を使われているし、箱入り娘っぽく振る舞う方が正解みたいだ。
「群狼戦士団の野営地が賊に襲われた……改めて確認ですが、これは事実ですか?」
「……多分ですけど。ボクは野営地の子供たちを連れて洗濯に出ていたんですが、騒ぎが聞こえたから戻って来たんです。そうしたら馬に乗った男たちに襲われていました」
「身を隠して野営地の様子を窺いながら、隙を見つけて子供たちと森に逃げ込み川沿いに街を目指したわけですね」
「はい」
まずは一つ目の質問が終わり、彼女は次の内容を兵たちに小声で確認している。
「道中に賊を見かけたりはしましたか?」
ボクはその質問に首を横に振った。
「賊どころか街道を移動する人すら見かけませんでした。森の中を移動していましたけど、外の様子を探れる位置でしたし、時折森の外に出て確認していましたから確かだと思います」
「……どうですか?」
「彼女たちが絶対に見落とさなかったどうかはわかりませんが、それでも街道の往来が少なかったことは間違いないようですね」
「この季節でそれは少々考えにくいことですし……街道を封鎖されていた可能性もあります。何にせよ、入念な仕込みがあったのでしょう」
お嬢様の質問に二人は即答している。
事前にある程度応答を考えていたのかもしれないが……手慣れた感じがするし、もしかしたらスタンダードな襲撃方法だったのかもしれない。
「商人の馬車を利用したりと、確かに随分手をかけていましたね。話を戻しましょう。翌日も森の中を移動し続けて……この村を見つけたんですね?」
「森から出たのはその少し手前ですけど……概ねそうです」
「そして、戦闘を行っている我々を見つけた。子供たちを村に避難させて、貴女は我々の援護をするために参戦してくれたのですね」
「初めは参戦しないで状況を見守ろうと思ったんですけど、ちょっと危なそうだったから……」
わざわざ言う必要はないかもしれないが、村人から既に情報は集め終わっているようだし、ここは正直に伝えておいた方がいいだろう。
それが良かったのか。
「傭兵団と共に暮らしているとはいえ、戦闘慣れしていない者が無理に参加する必要はない」
「そもそも経緯はどうあれ我々に助力してくれたわけだしな」
特に咎められるようなことはなかった。
まぁ……多少は箱入り娘っぽく振る舞ってはいるが、それ以外は特に演技も嘘もついていないし当たり前かな?
お嬢様は特に気にすることなく話を進めていく。
「戦闘に関してはこの場で話すようなことではないので省きますね。貴女が気を失った後ですが、息があった賊は捕縛しています」
「あ、捕らえたんですね」
「もちろん取り逃した者たちもいますがね」
ボクも何人か仕留めたし、兵たちも一気に大技で仕留めたりしていたが、それでもまだまだ残っていたはずだ。
こちらがどれくらい残っているのかはわからないが、手は足りているんだろうか?
その不安が顔に出てしまったのか、「大丈夫ですよ」と話を続ける。
「最後私たちの側にいた一人を覚えていますか?」
「側にいた……?」
あの爆発して炎と火球を放つ仕掛けを放り投げてきた男のことか。
「思い出しました。お嬢様が戦っていた賊ですよね」
馬に乗って大回りで接近してきたはいいけれど、お嬢様の魔法で落馬してやられそうになっていた男だが……何かあったんだろうか?
「彼は野盗ではなくて傭兵でした。そして、彼だけじゃなくて襲撃に関わっていた者の多くは傭兵だったようですよ。貴女にとっては身内の敵かもしれませんが……状況を把握するためにもこういった措置を取りました」
「む……仕方がないですね」
敵討ちにこだわる気はないし、それはそれで仕方がないことだと思う。
それにしても……傭兵か。




