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アリスはくじけない!  作者: 青木紅葉
第二章・どうする? アリス!

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 ボクが物心がついたのはこの世界に生まれて一年か二年か……その頃だった。


 同時に風見ありすという前世の記憶があることを自覚したのもその頃だ。


 平和な日本の一般家庭から傭兵団の団長の一人娘と大分かけ離れた環境ではあるが……前世の記憶を思い出すのが赤んぼの頃ではなく、少し育ってからだったことが幸いしたのか、なんとかこの世界のアリスという娘の人生にも順応出来ていたと思う。


 ちなみに母親は下級貴族の娘で、傭兵団の街には基本的に入らず外に陣地を設営する暮らしには順応出来ず、街で暮らすことを選んだため所謂別居婚だ。


 昔は時折野営地に訪れていたが、今はもう完全に近づかなくなっている。


 実はボクも母と会った記憶はほとんどなく、顔すら覚えていない。


 後で知ったことだが、ボクを自分の手元で育てるって話もあったらしい。


 ただ、色々理由があって流れたそうだ。


 その流れた理由の一つが……魔力の操作中に疲労から集中力を切らせてしまい、制御が出来ずに暴走させて顔を内側から吹き飛ばしたことだ。


 魔力。


 傭兵団の皆とあちらこちらを移動しては野営地で過ごすという、およそ文化的な暮らしとは縁遠かったため、物心ついたばかりの頃は過去にでも遡ってしまったのかと思っていたが……この魔力という存在に気付いたことで別の世界であることに思い当たった。


 そこまで濃いオタクではないが、これでもマンガやアニメやゲームを嗜んだ経験もあるし、いざ自分の生まれた場所が魔力というものが存在し、魔法という現象が存在するファンタジーな世界だということが分かれば、色々試したくなってしまうもの。


 幼い子供が遊べるような玩具も碌になかったし、時間潰しも兼ねてついつい魔力の操作に熱中していた。


 傭兵団の中には魔法を扱える者も少数いたようだが生憎関りがなく、彼らから教えを受けることは出来ず全て自己流で行っていた。


 その自己流の操作訓練がいけなかったのか、あるいは自分の魔法の素質があり過ぎたのがいけなかったのか……。


 その結果、三歳か四歳の頃に魔力の操作を誤って暴走させてしまい、顔が内側から破裂した。


 自分では見れなかったが、骨や歯や眼球は無事だったものの、口は大きく裂けて頬肉は弾け飛び顔の皮膚もズタズタに捲れ上がったりしていたらしい。


 この世界には治癒魔法も存在するが傭兵団にその使い手はおらず、回復薬を使った治療のみだった。


 とは言え、回復薬だって馬鹿には出来ず、物によっては前世の医療をはるかに上回るような効果を発揮する物だってあるそうだ。


 もっとも、ボクの治療に使われた物はそこまでのレベルではなく、傷を塞ぐ程度だったらしい。


 傷は塞がりはしたものの、傷跡は残ったままだし弾け飛んだ肉も復活したりはせずに相当酷い見た目だったと聞いている。


 その結果……父親からは麻布を被らされて、母親とは実質絶縁状態だ。


 命を落としてもおかしくないレベルの怪我だったことを考えたら、その程度で済んだことは幸運だったと思う。


 それに……だ。


 良くも悪くも戦闘を専門にしている傭兵団の野営地で暮らしているわけで、常に何人かは負傷者がいるし、場合によっては命を落とす者もだっている。


 団長の一人娘でまだまだ幼いとはいえ動ける者は働かされるし、何よりかなり派手にキズモノとなってしまったから、箱入り娘……なんて扱いはされずに、負傷者の治療だったり死者の埋葬だったり色々やらされていたが、そのお陰で前世の学校教育レベルからさらに人体をよく知ることが出来た。


 人体の知識を深めて、魔力の操作訓練と強化訓練……それと、操作の失敗の原因でもあった集中力不足を補うための体力づくり。


 それらを繰り返して、数年も経った頃にはもう傷はほぼほぼ完治していた。


 ただ、そのことを父親や大人たちには伝えていなかった。


 大人に付き合わずに、子供たちの相手をしつつ気ままに魔力の訓練を行う生活は気に入っていたからだ。


 だが……その生活は失われてしまった。


 これからどうするべきだろう?


 薄暗い部屋の中目を覚ましたボクは、ベッドの上で起き上がりもせずにそんなことを考えていた。

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