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第四十八話迷子

その他のキャラの公演シーンを期待した方がいたらスイマセン。

完全にカップル成立してるキャラ達なので、書いてみたら糖分が凄い事に(汗)。

あまりにムズ痒い内容だったので。投稿は見送りました。今話は公演イベントの後となっております。


ータケルsideー


久しぶりにレイアと共にギルドの仕事を受ける事になった。しかし今日に限って高ランクの依頼が無く、有ったのは薬草や鉱石の採集程度。一応ユウの経験になるだろうとそれらを受けたものの、仕事は午前中の間に終わってしまった。


今は春風亭で昼食を取っている。席はテーブルを挟んで向かいにユウ。右にリン、左にレイアが座っている。


本当は三人で仕事をするはずだったのだが、今回からはリンも参加となった。何故なら彼女は予定していた医院の開業を止めたからだ。


リンが言うには開業して新しい医療技術を打ち出すと、どうしてもこの国の既存の医師と軋轢が生まれる。そこで衝突を防ぐ為にレイアを通して技術提供という形を取るそうだ。


少し勿体無い気もするが、リンがそれで納得しているなら俺が口を挟むべきではないだろう。それに報酬も十二分に支払われるようだ。


最後に「患者持つと忙しくて大変じゃない?」と漏らしていた。恐らくこちらが本音だろう。


ただ、「タケルと居る時間が減ったら嫌だしね」と付け加えられた時には、どう返せば良いか戸惑ってしまった。


「肩透かしねぇ…もっと魔物とか盗賊とかと居て、ドンパチするものだと思ってたのに。」


初仕事が採集という地味な内容のせいか、リンには若干物足りなかったようだ。


「まあ、それだけ我が国が平和だという事だ。」


リンのぼやきにレイアが胸を張るようにして答えた。俺は初戦からドンパチでしたけど、そのへんどうなのレイアさん?


「それで午後からはどうするのタケル?」


「そうだな…ユウの修行でもするか。良かったなユウ。今日は美人な先生が二人も付いてくれるぞ?」


「ちょっと!勘弁して下さいよ!師匠だけでなくお二人もなんて死にますよ!」


「ククク…」


ユウをからかっていると、不意に誰かが俺の肩袖を引く。見れば小さな男の子が俺の袖を掴み、こちらをジッと見つめていた。


「どうした坊主?迷子…」


「父ちゃん…」


「え゛?」


ガタン!!


子供の言葉を聞いた途端、レイアとリンが椅子から飛び上がった。


「どういう事だタケル!?」


「ねえ!?どういう事!?父ちゃんて!タケル子供居たの!?」


「落ち着けレイア!それとリン、嬉しそうだなオイ!」


このクレイジーめ。大方、混ぜっ返すつもりで言ってるのだろう。


「大体計算合わんだろうが!」


俺がこの世界に来てまだ半年だ。それに対して袖を掴んでいる子供は三歳から四歳。どう足掻いても俺の子供というのには無理がある。


「む…確かにそうだ。少々取り乱してしまった。」


「クスクス…そうね。私も産んだ覚えないし。」


珍しく焦っていたレイアだったが直ぐに平静を取り戻す。それとリン、俺も孕ませた覚えは無いぞ。


「分かりませんよー。師匠なら出来るかもしれません。」


「阿呆!そんな器用な真似出来るか!」


せっかく消えかけてた疑惑を蒸し返すんじゃねぇよ。アレか?さっきの仕返しか!?


「ねぇ、坊や?お母さんは何処に行ったの?」


リンはしゃがみ込み、子供と目線を合わせるようにして優しく語り掛けた。


「母ちゃん?母ちゃん…大きい白いとこ…」


たどたどしくも答える。だがどうにも要領を得ない。大きな白い建物という意味だろうか?


「迷子みたいだな。」


「そうね。ねえ、どうせ暇だし、午後はこの子の母親を探してあげましょうよ。」


「うむ。私も手伝おう。」


「俺も良いですよ。……修行より楽そうだし。」


全員異論は無いようだ。もちろん俺も同様だ。若干ユウの発言に引っ掛かるものがあるが。





「先ずは衛兵の詰め所を訪ねてはどうだ?母親が探しに来ているかもしれん。」


レイアの提案は尤もだろう。詰め所は交番のような役目も担っている。子供の母親が迷子の届けを出している可能性は十分に考えられる。


「それじゃ俺は大通りを探してみます。」


「ああ、頼む。」


「私も行くわね。これでも捜査は得意なんだから。」


ユウとリンは子供から母親の特徴を聞き出すとそれぞれ街へと向かった。


残った俺とレイアだが、共に詰め所に行く事にした。衛兵相手ならレイアの顔が利くからだ。彼女に任せて俺も探す方に回りたかったが、何故か子供が離れない。


「私達も行くかタケル。」


「ああ。」


俺は子供を背負って歩き始める。大人の歩幅に合わせるのは辛いだろうからな。逆に子供に合わせていたら今度は時間が掛かりすぎる。


十分程歩くと子供は俺の背中で寝息を立て始めていた。


「フフッ、可愛い寝顔だな。」


寝ている子供を眺めるレイアの表情は、妹のエリスを相手に見せるような優しく慈愛に満ちた笑みだ。


「レイアは子供が好きなのか?」


「ああ。エリスとは歳が離れているのでな。昔は良く遊び相手をしたものだ。タケルはどうだ?」


「嫌いじゃ孤児院はやってないだろ。」


「フッ…確かにな。」


詰め所に向かって歩く俺とレイアは、もしかして子持ちの夫婦にでも見えるのだろうか?


…無いな。レイアは有名人だ。この国で知らない人間は居ないだろう。


「しかし安心したぞ。これで何時子供を作っても問題有るまい。」


「ん?誰がだ?」


「当然私とタケルのだ。」


「ブッ!何故そうなる!?飛躍し過ぎだろ!」


確かに俺も近い事を考えてたけど。まさかレイアからそんな言葉が出るとは思ってもみなかった。


「別に飛躍でも無いだろう?私達が恋仲に成れば有り得る話だ。」


「段階がかなり抜けてるぞ。」


「ふむ…確かに身体を重ねねば子は出来んな。」


「そこかよ…」


何だかリンが来てからというもの、レイアのアピールが過激というか…大胆になっている気がする。


「既に想いは告げたからな。もはや自重する必要もない。これからはタケルが私に惚れてくれるように努力するつもりだ。」


「そ、そうか…」


「はしたない女だと思ったか?」


そんな悲しそうな顔をするなよ。ただでさえレイアとリンの二人に想われるなんて俺には過分だと思ってるんだから。


「いや。全然思ってないよ。というか、リンなんかもっと露骨だしな。」


「フッ…彼女らしい。…タケル、夜這いは何時でも歓迎するぞ。一人寝が寂しい時は遠慮無く来るといい。」


「別に対抗しなくて良いんだぞ!?顔真っ赤にしてまで無理すんなよ!」


「て、敵は強大なのでな。ただでさえお前達は一つ屋根の下だ。知らぬかもしれんが、私は毎夜気が気ではないのだぞ?」


「ならレイアも一緒に住むか?」


「……。」


いや、何か言ってくれよ。


数日後、この軽口が現実になるとは現時点では思いもしなかった。レイアは昼間は城に居て、夜は転移でうちに来るようになるのだ。しかも空き部屋を自室として借りてまで。


…王様に知れたらとんでも無い事になりそうだ。





詰め所に着くと案の定迷子の届け出があったらしい。レイアが尋ねると責任者が大慌てで飛び出してきた。彼は物凄く丁寧に詳細を説明してくれた。


衛兵の話では子供の親は行商人でそこそこ裕福だという。詰め所で届け出を出した後は、ギルドにも捜索を依頼しに向かったそうだ。


「ふむ…丁度行き違いになってしまったか。」


「けど見つかりそうで何よりじゃないか。」


俺達がこの子を見つけた春風亭はギルドの目と鼻の先だ。待っていれは親に会えたかもしれない。俺達が連れ歩いた事でかえって邪魔してしまったようだ。


しかし保護したと考えれば満更悪い訳でもないだろう。少なくとも迷子の間、安全を確保してやれたのだから。


「取り敢えずリンとユウにも伝えておこう。」


俺は先ずリンへと念波を送り、詰め所での内容を伝えた。






『…成る程ね。』


『という事で今からまたギルドに戻るわ。』


『そう。実は私もギルドに居るのよ。』


『ギルドに?』


『偶々見かけてね。女性がギルドで揉めてるのよ。早く子供を捜索して欲しいってね。多分あの子の母親じゃないかしら?』


『だろうな。今から向かうからリンはその人を引き留めててくれ。』


『ん、了解。』


ユウにも同じく事情を伝え、俺達はギルドに集合する事にしたのだった。






「アル!良かった!心配したのよ!」


「母ちゃーん!」


ギルドに戻った俺達の前で、母子が抱き合いながら再会を喜んでいる。どうやら商談の最中にこの子供、アルが飽きて一人で出歩いたのが原因らしい。


母親も商売相手との交渉が白熱していて、彼が居なくなったのに気付けなかったそうだ。


ちなみにアルの言っていた大きく白いものとは、建物ではなく行商人の馬車の幌だった。確かに商品を載せる為、普通の物よりも幾分大きな作りをしている。


全く子供というのは大人とは違った着眼点を持っているものだ。


「ところでアルが俺を父親と勘違いしていたんだが、そんなに似ているのか?」


「いえ、実はこの子はまだ父親の顔を知らないんです。行商先で生まれたものでして。夫とは次の街で会う予定なのですが、黒い髪をしている事を教えていたので、多分それを頼りに…」


「そういう事か。」


この国では黒い髪は少ないからな。ようやく疑問が解けた。


「本当にありがとう御座います!もしこの子に何かあったら、私はどうして良いか分からなくなるところでした。」


涙ながらに何度も礼を述べる母親。

幾らか報酬を出そうとしていたが、俺はそれを断った。代わりもっとアルを大事にするように言い含めて二人と別れたのだった。





「ハァ…しかしいきなり父ちゃんは驚いたな。」


心当たりは無いのだが、一瞬全身にゾクリと寒気が走った。女に「デキちゃったの」と言われた男の心境はあんな感じなのだろうか?


「フフッ…そういえばあの時のタケルの顔は傑作だったな。」


「確かにね。表情が固まってたもの。珍しく動揺してたんじゃない?」


女性陣がニヤニヤしながら俺をからかい始めた。迂闊だったな。


「師匠でも動揺するんですね。プクク…」

お前も乗っかるなユウ。


…何とか打開策を打ち出さねば。


「動揺っていうならレイアも同じだったじゃないか。」


一瞬殺気まで出した癖に。俺は気付いてたぞ。


「…それは当然ではないか。惚れた男に隠し子となれば取り乱しもしよう。」


「そうよね。タケルの子供を産むのは私なんだから。先を越されたらいい気はしないわ。」


「むっ!リンよ、タケルの子を産むのは私が先だぞ。」


「お前ら最近露骨過ぎ!」


近い将来、本当に俺がこの二人のどちらかを愛する日が来るのだろうか。ましてや子供を作るような日が。


今の俺には分からない。だが恋愛感情の分からない俺の為、こうやって愛情を示してくれる二人の事は有りがたいと思うのだ。


「それじゃ、どっちが先にタケルと赤ちゃん作れるか勝負よ!」


「フッ、望むところだ。デキるかデキないか…勝敗が分かり易くて良い!」


…今夜はドアに鍵付けておこう。




もう作っちゃえよ。って気がせんでもない。

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