第四話ギルド登録 レイアとエンカウント!
初感想いただきました。励みになりますね。
部屋に戻ると、ザッと準備を整え腰のベルトに刀を差す。因みに今の俺の格好は、黒のTシャツにジーンズ。上着には日本刀に合わせて、着物の羽織を創って着ている。ちょっとした新撰組のコスプレみたいな感じだ。まあ自己満足ですけどね。
街を見た限り、結構個性的な格好の人も多かったし違和感は無い筈。たぶん。
部屋を出る際に回復薬を三本程の懐に入れ、余った回復薬はあっさり消すことができた。どうやら俺の魔法で創った物は、俺の都合で消せるらしい。便利だ。売れたらまた創ればいいし。
そしてマイルさんにギルドの場所を訊き、街へと繰り出した。
ギルドに着くと、そこはまさにRPGの建物然としたものだった。まだ朝が早いらしく、人は疎らだ。
俺はカウンターに立つ職員らしきお姉さんに声を掛けた。
「ギルドに登録したいんだけど。」
「はい。どうぞ。こちらの書類にサインをお願いします。」
「その前に俺、ギルドって良く知らないんだよね。少し説明して貰える?」
「分かりました。基本的にギルドは仕事を斡旋する組織です。仕事の内容は多種多様で、街での力仕事や人探しから魔物の討伐まで有ります。仕事を請け負う場合は後ろの掲示板から、仕事内容の書かれた依頼書をこちらに渡して下さい。後は書類にサインすれば手続きは終了です。」
サインだけか。シンプルでいい。
「それから仕事の完了を証明するためには、依頼主からサインを貰う必要が有るので気を付けてくださいね。魔物の討伐に関しては、依頼者はギルドになりますので、決められた各証明部位を持ち帰ることで討伐の証明となります。魔物の部位は需要によってはギルドで買い取りも行っていますよ。例外として、魔物の肉や部位を依頼する人がいます。主に肉屋さんや武器屋さん、道具屋さんですね。その場合は依頼人に部位を渡し、サインを貰ってギルドに提出すると依頼完了となります。」
「なるほど。」
「次にギルドランクですが、ランクはS~Eまであり、Sが最高ランクでEが最低ランクと成ります。ランクアップの条件は討伐依頼では証明部位の提出。それ以外は依頼主のサインの提出が必要になります。逆に仕事を三回失敗すると、ペナルティとしてランクダウンとなります。ランクが低いと請けられない仕事も有るので注意してくださいね。ランクはそのまま依頼人への信頼にも繋がりますから。」
「複数人で仕事を請ける場合は?」
「その場合、パーティーによる請け負いとなり、臨時パーティーと常時パーティーの二種類に分かれます。請け負った仕事の間のみ組むパーティーが臨時。パーティー名を登録して常に組むのが常時パーティーですね。それとパーティーにもランクが有り、メンバーの中で一番ランクの高い人のランクが、パーティーのランクとなります。」
「ありがと。良く解った。」
「それでは登録して行きますか?」
仕事を請けるかどうかは別として登録しても損はないな。
「頼むよ。」
「では、こちらの書類にサインをお願いします。登録の手数料として銀貨五枚になりますが、宜しいですか?」
……ピシリ……
俺の中で時が止まる。確か残高は銀貨三枚…うん。数えなくても分かるよね。
足りねえええええぇーー!!
まさか、仕事どころか登録の時点で蹴躓くとはOTL
仕方無い偽造するか?良いよね銀貨二枚くらい……
「おい!誰か、医療魔法が使える奴いないか!?」
と、俺が犯罪?に手を染めかけた時、入り口から声を張り上げて入ってくる人達。数は三人。その内の一人の男は、残りの男女に肩を担がれグッタリとしている。
「どうしました!?」
カウンターのお姉さんが三人に駆け寄る。
「猛毒のベルウルフに咬まれたんだ!もう時間がない!」
良く見ると全身に咬まれた跡があり、毒だけで無く傷だけでもかなりの重症だと判る。
「困りましたね…まだ朝が早くて、ここには人が集まって居ないんですよ。けど医院に行っても間に合わないですし…」
キュピーーーーン!閃いた!
俺は怪我人の仲間らしき男に声を掛ける。
「なあ、あんた。この人治すから、俺の登録料払ってくれない?」
「医療魔法が使えるのか!?」
「いや、けどこの人は治せると思う。」
「本当か!?だったら登録料でも何でも払うぞ!」
「それじゃ、契約成立って事で。」
懐の回復薬を取り出して蓋を開け、怪我人の男の口に飲み口を突っ込む。
「お、おい!」
「まあ、見てろって。」
慌てる男を制して薬を飲み終えるのを待つ。
ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ……
ゆっくりだが、飲み込む力は残っていたようで、ビンの中身は空になる。良かった。野郎相手に口移しだけは断固拒否する所だ。
ガバッ!
意識を取り戻した男は、バネ仕掛けのオモチャの如く飛び起きた。
「ハッ!ここは!?」
「アイン!大丈夫!?」
「ミアン?ゲイル?俺は確かベルウルフに咬まれた筈じゃ…」
「あ、ああ。後で説明する。それで?身体は大丈夫か!?」
「絶好調だ。しかし、毒だけじゃなくて傷も無くなってる。その上魔力まで…いったいどういうことだ?」
「この兄さんに感謝しろよ。持ってる薬を飲ませた瞬間、半死人だったお前が飛び起きたんだ。驚いたぜ!」
「すげぇな!秘薬か!?」
「まあ、そんなトコ。で、いいかなゲイルだっけ?登録料の銀貨五枚。」
「ああ。しかしいいのか?本当に銀貨五枚だけで。アインも言ってたが、秘薬なんだろ?」
「いいんだよ。今回は初回サービスって事で。取り敢えず登録を済ませるからちょっと待ってて。」
銀貨を受け取り、受付のお姉さんに渡して、登録を済ませる。
タケル・カミジョウ……っと
「タケルさんですね。…はい。登録完了です。これがギルドカードです。ギルドランクの証明書になっています。再発行は有料なので気を付けて下さい。ランクはEからになります。頑張って下さい。」
登録を済ませ、三人の元に戻る。
「でさ、登録料払って貰う位だから判ると思うけど俺、殆ど文無しなんだよね。」
懐から残りの回復薬を出す。
「回復薬、あと2本有るんだけど買わない?」
「「「買った!!」」」
三人とも飛び付く。ワーーーオ。凄い人気。
「タケルさんズルいです!私にも売って下さい!」
カウンターから受付のお姉さんも飛び出して来た。
どうやら初回サービスのデモンストレーションは、効果テキメンの様だ。
「それでいくらで売られるんですか?」
ゲイルパーティーの女性、ミアンが尋ねる。
…あ~……考えて無かった。
結局、受付のお姉さん(ルイーズという名前らしい)に1ビン。パーティーリーダーのゲイルにも1ビンを売ることで話しは着いた。ミアンとアインには、後日優先的に売ると言うことで納得して貰う。
価格は、マイルさんの言う通り、、大金積んでも欲しがる人が居ると言われた。
だが、それじゃ二人とも手が出せないだろうと、1ビン金貨1枚で売ることにする。
計:金貨2枚。
何とか野垂れ死にだけは、回避出来そうだ。
タケルの残高
―――金貨2枚+銀貨3枚―――
アインに感謝されつつ、三人と別れた俺は、掲示板に目を通す。
「道路開拓事業……大岩の撤去か。…何だか工事現場の日雇い労働みたいだな。」
どうせなら、討伐系の仕事をやりたい。考えてみたら、こっちに来てから道具の創造ばっかりだったし。練習も兼ねて攻撃魔法も使ってみたいから。魔物は怖いが経験を積むには良い機会だろう。かと言って、ランクの低い俺が請け負える討伐依頼は、中々見当たらない・・・・
ザワザワ・・・
掲示板とにらめっこしていると、増え始めたギルド内の人達が騒ぎ出す。彼らの視線の先には、俺がこの世界で最初に出会った人物、レイアが居た。レイアは一応お姫様だったな。注目されるのは当たり前か。
俺に気付たレイアは、ギルド内の視線など意に介さず、こちらに近づいて来る。
「タケルじゃないか。」
「やあ、レイア。」
「その様子だと、登録出来たみたいだな。」
「まぁね。」
「格好も幾分マシになった。昨日より冒険者らしく見えるぞ。」
「金も多少は手に入ったからな。」
「ほう、一文無しから一晩でか…中々に優秀だな。どうやって元手を稼いだのか、教えてもらいたいものだな。」
しまったなぁ。レイアとはまだ半日の付き合いだが、彼女は博識で頭の回転も早い。この手の人間に下手な嘘は通じないだろう。それこそ嘘を重ねるとドツボに嵌まりそうだ。
「薬を作ってね。それが高く売れたのさ。」
「薬か・・・」
「凄いんですよ!タケルさんの薬!重症のアインさんが、一瞬で完治したんですから!」
うお!ルイーズ!聞いてたのかよ!
「まさに秘薬ですよ!医療術士顔負けの効果でした!」
「・・・しかしタケル。それだけ効果のある薬だ。材料費だけでもかなりの費用が掛かる筈だが?」
「企業秘密だ。俺の故郷の秘伝だからな。掟で他人には教えられない。」
秘技、「掟だから!」こういう世界の人間はこの言葉には弱い。
「そうか・・・それなら仕方ない・・・か。」
ようし!何とかフラグ回避の模様!明らかに不満そうなものの、これ以上は訊けないと悟ったのか追求は無かった。
「それで?何か依頼を受けるのか?掲示板を見て悩んでるようだったが。」
空気が悪く成るのを避けるためか、話を変えてくれるレイア。
「そうなんだ。討伐系の依頼を探しているんだが、ランクが低いと請けられないものばかりでな。」
「ふむ・・・」
レイアは顎に手をやり、何やら考えている。
「ならばどうだ?私と臨時パーティーを組まないか?ちょうど討伐依頼でも請けようと思っていたとこだ。」
「いいのか?そりゃ助かる。」
「決まりだな。さて、何の依頼を受けるか・・・。」
「ところでレイアのギルドランクは?」
「Aだが?]
エー…えー…A……ええええええエエエエエッーーーー!!
「お?これにするか。」
ペリッと依頼書を剥がす。
「えーとレイアさん?何の依頼を請けるつもりデスカ?」
「ほら。これだ。」
ベルウルフ討伐
―――五体以上――――
依頼対象―Bランク以上
場所―ヴィアズの森
報酬―一体に付き銀貨40枚
証明部位―牙
イーーーーーーヤーーーーーーー!!
心の絶叫2連続。
どうやら死亡フラグの方は、着々と俺の背後に迫っているようだ。
ギルド設定なんてテンプレですよね。
作者の力量不足がチラ付きます。
それでも読んでくださった読者に多謝。