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第四十二話悠久の唄公演

お待たせしました。ギリギリ今年の投稿に間に合いました。


未だに感想をくれる読者様、執筆が遅くて申し訳ないッス。

公演開始までの暇潰しに俺とレイアは市を見て歩く事に。


基本的には俺の知らない品をレイアに解説して貰い、逆に地球ではどういう物が有ったのかを俺が答えるというのがパターンとなっていく。


「相手に気を使わせずに会話が出来ると楽しいものだな。」


店員にはレイアが一般人に見えているので、気軽に対応してくれるのが嬉しいらしい。王女だとそんな普通の事も難しいのだから気の毒な話だ。


「それにしても今日は市が賑やかではないか?」


「大方、悠久の唄の公演に便乗して売上を伸ばそうって腹だろ。商売人は逞しいね。」


「成る程。賢い戦略だな。」


祭りの出店みたいなもんだ。どこに行っても人間の発想は同じらしい。


「タケルよ、何か買わないのか?」


「そうだなぁ…」


俺は店の品を物色していく。買い物で女性に金を払わすのはどうかと思ったが、俺が金を使うのをレイアが良しとしなかったのだ。彼女曰わく『私にも顔を立たせてくれ』だそうだ。


リンにもこの態度を見習って欲しいもんだ。


「あんちゃん、スライムジュースはどうだい?味も色々揃ってるよ。」


声を掛けてきたのは四十代後半の女性。店には瓶の中に入った五、六種類の色の付いた液体が見本としてディスプレイされていた。


「レイア、スライムって飲めるのか?」


「ああ。これは沼地に生息するスライムを漉して果汁を混ぜた飲み物だ。独特の食感を好む者も多い。」


「へぇ~。」


面白そうだ。


「お姉さん、二つ貰えるかい?」


「あはははっ!口が上手いねあんちゃん!どら、オマケしてやろうかね。」


愛想の良い豪快な笑い声を上げるお姉さん(4●歳)


「飲んだらそこの箱に器を置いてってくれよ。」


俺は木製の器に入ったスライムジュースを受け取る。


「そうか。紙コップなんか無いもんな。」


駄菓子屋でラムネジュースでも買った気分だな。ちなみに俺はビンを破壊してでも中のビー玉は取り出すタイプだ。


レイアと近場に設置されているベンチで談笑しつつスライムジュースを味わう。


このジュース、どうもスライム自体に味は無いらしい。レイアの言う通り添加してある果物の味だ。肝心の食感だが、見た目からもゼリー状のものを想像したが違った。


擬音で表現するならドロドロでは無くヌメヌメだ。舌離れが遅く一口で長い間味を楽しめる。少しずつチビチビと飲むのが良いだろう。


「ご馳走さん。」


「あいよ!また来ておくれ!」


器を返却し、散策を再開する。


市には何も食べ物だけでなく普通に武具を売っている店も有った。


剣や盾に槍、投擲用のナイフ等だ。


「さすがに手裏剣やクナイは無いか。」


「しゅりけんとは何だ?」


「俺の世界の投擲武器さ。」


遠距離なら銃と魔法で事足りる。単に刀と合わせたら面白いかもという趣味的な発想だ。


「あ!タケルさーん!」


「ん?よう。ミアンにゲイルじゃないか。」


ミアンとゲイルの二人が向かいの道から通りがかった。


「ミアンはおめでただってな。おめでとう。」


「エヘヘ。ありがとう御座います。」


嬉しそうに応えるミアンは予想通りというか当然というか、ゲイルと腕を組んで幸せオーラ全開だった。


「そうだ。二人にコレをやるよ。」


俺は『悠久の唄』公演の最終日の券をミアンに手渡す。


「え?これ……悠久の唄の有料券じゃないですか!しかも最前列!?こんなの頂けませんよ~!」


「こらこら、そんなに大声出すとお腹の子に障るぞ。券はお祝いの代わりだ。偶々コネが出来て貰った物だし遠慮は要らないぞ。」


「ううー。でも~」


それでも遠慮するミアンに駄目押しに一言。


「それにな、ミアン。音楽はお腹の赤ちゃんに良い影響が有るそうだぞ。」


「ほ、本当ですか?」


「ああ。胎教って言ってな。他にも母親のお腹の中に居る時に話し掛けるのも有効らしい。」


「へえ~~。良い事聞いちゃった。それじゃ、ありがたく使わせて貰いますね。」


「それとお産で心配な事が有ったら、うちに訪ねると良い。リンっていう俺の友人の医者なんだが、多分この辺では一番腕が立つからな。」


さり気なくリンの作る医院をアピール。感謝しろよリン。


「色々済まんなタケル。」


ミアンを腕にぶら下げたゲイルが礼を言う。


「そんなに感謝される程でも無いだろうに。」


「いや、タスニアの一件でもレイア様から報奨金を頂いたのでな。お陰で予定より早くコイツと一緒に成れそうだ。」


レイア、そんな事もしてたのか。為政者としちゃ当然なんだろうけど太っ腹だな。


「ところで、お隣の方はどなたですか?」


「あ、悪い。分からないよな。」


俺は二人にレイアが分かるよう認識変化の対象から外す。


「レイア様!?」


「フッ、久しぶりだなミアン。ゲイルとはタケルを迎える時に随行して貰ったばかりだが。」


「レイアが街中を歩くと目立つから見る人の認識を変えてたんだ。」


「はぁ~~やっぱり凄いですねタケルさんの魔法って…。」


一応神がくれるくらいだからな。


「それより今日は二人だけなんだな。アインはどうした?」


「あいつなら今頃、酔い潰れているぞ。」


「またフラれたらしいです。」


自棄酒かよ。


「相手はギルドのルイーズか?」


「当たりです。良く分かりましたねぇ。」


「前にそんな事を口走ってたからな。」


アインの奴も普通にしてたらそれなりに男前なんだが如何せん中身が残念な感じだ。


「ようやく食事に誘えたのに、店で娼館の娘と鉢合わせしたらしいんです。で、日頃の素行が芋づる式に…」


「哀れな奴。」




「タケル、そろそろ広場に向かう時間だ。」

「だな。」


「楽しんで来て下さいね。券、ありがとう御座いました。」


立ち話を切り上げると、ミアンとゲイルに見送られて広場へ向かった。




ーミアン・ゲイルside-


認識変化で気付かれない為、腕を組んで歩いていく二人を眺めるミアンとゲイル。


「ねぇ、ゲイル。この事アインには…」


「ああ、黙っておこう。」


「振られた上に憧れの人まで……不憫な子…」


珍しくアインに同情的なミアンだった。


その日の夜


「アイン、元気出しなさいよ。」


「飲み過ぎは身体に毒だ。」


「うう…俺は駄目な奴なんだ。ほっといてくれぇ…」


さめざめと泣くアイン。部屋には酒瓶が転がっている。あまり良い酒とは言えない。


「ほら、夕食持ってきてあげたわよ。」


「酔い覚ましも有るぞ。」


甲斐甲斐しくアインを慰める二人。


「お、おお…優しいなお前ら。何か有ったのか?」


「「いや、何も!」」


ミアンさえ、ここで傷心のアインを追い込むような加虐趣味は持って居ないようだ。



-タケルside-


広場では既に人が列を作っていた。俺とレイアもそこへ並ぶ。途中、モギリらしい人物に券を見せて席に着く。


俺達は有料席なので椅子が用意されていたが、広場の外側には立ち見客も多い。盛況だな。


公演はまず最初に楽団長が口上を述べる。その後オープニングに軽快なリズムの曲で観客を引き込んでいく。


イントロが終わり、現れたのは楽団のメイン歌王子ライト。


俺の中では軽メン決定だがな。


それなりに人気は有るようで、登場と共に観客が沸く。主に女性客の歓声が目立つ。

俺はチラリとレイアの顔を窺うが、特に表情に変化は無い。普通にステージを見ている。


やはりレイアは顔でキャーキャー言うタイプとは違うようだ


公演半ばに、再度楽団長がステージに上がる。


「お待たせ致しました!今回の公演は彼女を目当てのお客様も多い事でしょう!我が悠久の唄が誇る歌姫リリィの登場です!」


この日一番の歓声が巻き起こる。


「うおおーっ!リリィちゃーん!」


後ろから一際大きな声が聞こえる。振り返ると、声援を送っていたのは俺に公演の事を教えてくれたじいさんだった。


隣の奥さんらしき人に耳を引っ張られて席に戻らされていた。


曲が始まるとこちらに気付いたリリィが僅かに微笑む。俺は軽く手を振って応えた。


「彼女か。大した人気だな。」


「ああ。俺が曲を教えたんだ。」


こうして客に評価されているのを見ると、俺としても誇らしい気持ちに成る。教えた甲斐があるってもんだ。


公演は滞りなく進み、盛況のうちに幕を閉じた。感想としては十分合格。ただ歌詞の意味が原曲と多少差異があるので今度そこを教えてやろう。


「さて、飯でも食うか?」


「そうだな。行くとしよう。」


広場を出る頃には日が暮れていた。夕食にはちょうど良い時間だ。




少し短いのですが、シナリオの展開的にここで区切りました。


スライムジュースは結構前から考えていたネタだったりします。


では皆さん良い年を!See you next year!!


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