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第三十八話エリスの病と歌姫リリィ

最近ニコニコで動画ばっかり観ている爆裂です。


特にホラーゲーの実況は面白いね。



ズルズル…


「アヘアへア~」


ズルリ…


「あばばば~」


ベチャ!


「がくり…」


ユウの本格的な修行を初めて5日程経った。疲労困憊のユウを孤児院まで引きずり、入り口に投げ込んでおく。


「あ、お帰りなさいタケルさん!」


玄関先には洗濯物を取り込んでいたセラが居た。


「セラ。ユウの奴は中でへばってるから介抱してやってくれ。」


「はい。もう直ぐ夕刻ですけどお出掛けですか?」


「ああ。留守の間ユウがレイアの世話になってたみたいだからな。久しぶりに街をぶらついてお礼になるような物でも探しに行こうかと思って。」


何が良いかな?またケーキや食べ物じゃありきたりだよな。


「そういやリンは?」


「まだお城です。」


「そうか。」


今日はレイアと医院開設について話し合うと言っていたな。昨夜はその説明に必要だと医療器具を創らされたんだった。


「多分遅くなるから夕食は要らないぞ。」


「はい。行ってらっしゃーい!」


セラに見送られ中心街へと歩いていく。





-リン・レイアSIDEー


「…と言う訳よ。」


「成る程…興味深いな。」


リンは医院開設にあたりレイアに対して現代医学のプレゼンテーションを行っていた。レイアも幾ら友人とはいえ、国の利益に成らない事業に手を貸す訳にはいかない。それはリンも承知しており、現代医術を普及させるメリットを素人にも分かるよう内容を限定し噛み砕いて説明した。


特にこの世界では細菌や病原菌など目に見えないものへの概念が薄いため、幾ら頭の良いレイア相手でも説明するのは骨が折れた。


「確かにこの技術が普及すれば患者の生存率は跳ね上がるな。」


レイアはリンから教わった高度な医療技術に驚嘆していた。


「恐らく感染症を防ぐだけでもこの世界では画期的な技術でしょうね。まだまだ専門的な内容もあるのだけど、きっとこの世界では理解が追い付かないわ。」


「うむ。私でさえ付いて行くのがやっとだ。私はリンやタケルの事情を知っているからまだ良いが、他の者が聞いたらホラ話にしか聞こえんだろう。」


「先ずは徐々に発表して世間の意識を変えていくしかないわね。」


「ああ。段階を踏んで進めていくべきだろうな。理解を得るためにも成果を上げてみせる必要がある。」


リンはふと思った。ここは開腹手術さえない世界だ。第三者がそれを見たら、さぞ猟奇的に見える事だろう。




ある程度話が進み二人が休憩を兼ねたティータイムを過ごしていると騒動は起きた。


血相を変えた侍女がバタバタと足音を立てて部屋へ飛び込んで来たのだ。


「姫さま!レイア様!」


「来客中だぞ。どうしたのだ?」


「し、失礼しました!」


部屋にリンが居るのを見留めた侍女は慌て佇まいを正す。


「ですが、緊急の事なので…」


「構わない。話せ。」


リンが居る為、話して良いものか判断に困っている侍女をレイアが促す。


「エリス様がお倒れになりました!」





「くっ…うぅ…」


「大丈夫!?エリスちゃん!?あぁ…一体どうしたのかしら…」


中庭でうずくまっていたエリスは、王妃である義母のシャラルに発見され急いで自室のベッドへと運ばれたのだった。


ジットリと玉の汗をかくエリスは苦しげで、傍ではシェラルが心配そうに寄り添っている。


「母上、エリスの容態は?」


リンを伴いレイアが部屋へと入る。シェラルは困惑気味に首を振った。


「それがお腹を押さえているんだけど、お医者さんも原因が分からなくて。治癒魔法も試したみたいだけど効果が無いの。 」


「ちょっと良いかしら?」


会話中の二人にリンが声を掛ける。


「貴女は?」


「母上、彼女はリン。タケルを介して懇意となった私の友人です。リンはこの国とは別の医術を持っております。リンならばエリスの病が分かるやもしれません。」


「ああ、貴女が。こんな時でなければお話を伺いたいのだけれど、今はエリスちゃんを診てもらえます?」


「ええ…それじゃ失礼しますね。」


手短な挨拶を終え、リンがエリスの診察を始める。


「大丈夫エリス?」


「…リンか…」


「痛いのはそこ?」


「うむ…」


手を退かし患部を触診。同時に幾つか問診する。


「リン…妾は死ぬのか?」


気弱なエリスの発言にリンは頭を撫でて優しげに微笑む。


「クス…大丈夫よ。この世界では知らないけど、私の世界では簡単な治療で治るし、その技術も持ってるから安心して?」


「うむ。分かった…」


痛みに堪えながらも安堵の表情を見せるエリス。リンはレイアへと向き直ると指示を出す。


「レイア、どこか広い部屋を用意して。出来るだけ清潔な所をお願い。手術の準備をするわよ。」


「ああ。エリスは助かるのだな?」


「ふふっ、当然よ。それとタケルを呼んで。今回は必要な薬品が間に合わないから、タケルに作って貰いましょ。」


「了解だ。」





ータケルside-


「おっ?」


街を散策していると広場で何やら準備が始められていた。ここはたまにイベントが開かれる場所で、祭りや劇団の公演などが催される。


辺りからはカンカンと槌を打つ音や、作業をする人達の掛け声が聞こえてくる。


「よう、おっちゃん。こりゃ何の準備だい?」


俺と同じく作業風景を眺めている初老の男性に声を掛ける。


「あん?何だ知らないのかい兄さん。楽団だよ。悠久の唄って今一番勢いの有る楽団さね。」


「ほー。それでか。」


所謂野外コンサートみたいなものか。


「特に最近人気の歌姫、リリィが歌うってんで有料席は通常の二倍、最前席は三倍の値なのさ。」


「そりゃ大人気だな。」


ん?リリィ?どっかで聞いたような…。


「実はわしも奮発して席を取ったんさ。むふっ、これで雰囲気を作って久しぶりに嫁さんと気張るっぺよ。」


「そのままあの世に逝っちまわないようにな。」


「ふふんっ!わしはまだまだ現役さね。見てみい!この幾多のおなごを泣かしてきたキレキレの腰使いっ!」


「ハハハッ。」


腰をクイッククイックして豪快に笑うおっちゃんに苦笑しつつ、俺は礼を言って場を離れる。


「楽団か。ああいうのに誘うのもお礼になるのかね。」


レイアへのお礼になりそうな物を探しつつ夕陽の差す広場を離れる。




夕刻という事もあり、立ち並ぶ店も閉店の準備を始めている所がチラホラ見受けられる。


しまったな。時間帯を誤ったかもしれない。とはいえそれ程急いでいる訳でも無い。また機会を見て来るとしよう。


街を眺めながら歩いていると、道の端に居る一組の男女が目に留まる。


話し掛けている男の方はブロンドの長い髪をしていてやや垂れ目だが整った顔立ち。しかし軽薄そうな雰囲気が滲み出ている。動きもいちいちキザったらしい。同性には嫌われるタイプだと思う。…いや、イケメンへの僻みじゃなくて。


女性の方はこちらに背中を向いていて顔が見えない。男の話に首を横に振り立ち去ろうとしている。


しかし行き先に回り込んでは話を続ける軽薄イケメン。略して軽メン(カルメン)。闘牛士じゃ無いけど。


業を煮やした女性が話を無視して逃げようとする。すると男が強引に女性を壁に押し付けた。


建物の影に成っているせいかそれに気付く者は居ない。


俺以外には。


「歌姫の相手なら王子が当然だろう?なぁリリィ?」


「馬鹿じゃないの!?私が売れる前は見向きもしなかったくせに!」


「少なくとも王子にしては品性に欠けるのは確かだな。」


最後のセリフはもちろん俺だ。女性の肩を掴んでいる手を捻り上げ壁に押し付ける。


「イタタタタッ!!何なんだお前!?」


簡単に後ろを取れた事からして、この軽メンは一般人の様だ。


「人を壁に押し付けると王子様に成れるとは知らなかったな。これで俺も王子様か?」


「あ…貴方は…」


壁から解放された女性と目が合う。


「ん?誰かと思えばリリィじゃないか。もしかして悠久の唄の歌姫ってのは…」


「はい。恥ずかしながら私の事です。」


俺が軽メンから助けた女性…もとい少女は、城のパーティーで泣きベソ掻いていたリリィだった。


「へぇー出世したなぁ。」


「タケルさんに教わった歌のお陰で有名になりました。まさかこんな所で会えるなんて。本当に感謝してます!」


「歌ってるのはリリィなんだ。元々実力が有ったって事だろ。」


ジタバタする軽メンを無視して世間話に興じる俺達。


「オイ!離せ!俺は悠久の唄のメインだぞ!歌王子ライトを知らないのか!?」


「知るか。」


グリグリグリ…


「へぶっ!か、顔は止めて!おぶぶっ!」


ライトと来たか。


LIGHT=軽い


なんという偶然。名は体を現すってのはこの事か。少なくとも光の方ではないと思う。


「このまま押し潰したら王子じゃなく王様に成れるかもな。試してみるか?」


「ヒッ!?」


「あの、タケルさん…もうその位に…。」


リリィに宥められる。


「優しいなリリィは。」


「いえ、これでもウチのメインなので死んじゃうと公演が中止になるので。」


「……。」


同情でさえ無かった。


俺が手を離すと軽メン改めライトは、弾けたように飛び出し距離を取ってこちらを睨み付ける。


「クソ!覚えてろっ!俺は裏にも顔が利くんだ!後悔させてやるからな!」


「火を灯せファイア。」


捨てゼリフを吐くライトのケツに着火。


「アヒィイイイイーー!!」


ライトは尻を押さえて逃げていった。これ見たらファンも幻滅しそうだね。


「フン!いい気味ね。」


憤慨したリリィがライトを見送りこちらを向く。


「助けて頂いてありがとう御座いますタケルさん。アイツ、歌王子とか呼ばれて調子に乗ってるんです。私がただの伴奏だった頃には馬鹿にしていたくせに、売れ始めると突然手の平返して。」


「そりゃ災難だったな。」


「ところでタケルさんはどうしてここに?」


「大した用じゃないさ。世話になった友人に贈り物でも見繕うつもりだったんだけどな。時間が遅くて散歩に切り替えたところだ。」


「そうですか…。あの、それなら一緒に夕食は如何ですか?助けて貰ったお礼に奢らせて下さい。教えて貰った歌のお礼もしてないですし。」


お礼ねぇ…。さっきの事はともかく、歌に関しては気持ち良く歌えたので礼をされる程の事でも無い。

しかし、リリィからしたら自分が売れるきっかけであった訳だし、ここは素直に奢られる方が彼女の顔を立てる事に成るか。





歌王子ライトは単なる思い付きです。


何故かこういう出オチキャラを書いてしまいます。


ポセイドゥン!とか…ポセイドゥン!とか…ポセイドゥン!とか……。

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