表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/70

第三十七話ユウの修行

やっとアルベルリアに戻って来れました。考えていたよりも長く掛かった気がします。

「で?」


「で?って何ですか?意味が分かりませんよ師匠。」


アルベルリアの自宅兼孤児院に戻った翌日、俺はユウへの尋問を開始していた。


「ユウ、白状しろ。セラと何かあったんだろう?」


「な、何も無いですよ。」


ジトリと冷や汗をかくユウの顔を見つめる俺。


「二ヶ月も俺という邪魔者が居なかったんだ。そこに想い合う男女が暮らしているんだ。何も無い訳がないだろうが!更に更に!お前とセラの間にだけ存在するあの雰囲気!二ヶ月前とは明らかに違う!」


何かこうね?二人ともたまに目と目で会話してたりするんだよ。べ、別に羨ましくなんか無いんだからね!


「邪魔者って自覚が有ったんですね。」


「うるせぇ。」


ユウは『ハァ…』と溜息を一つ。間を置いて答える。


「本当に何も無いですって。弟達も一緒に仲良くやってましたよ。」


平静を装うのが上手くなりやがって。だが、まだまだ甘い!


「ほう?仲良く…ね。しかし、昨日子供達がママゴトでチュウしてたんだが、話を聞いてるとユウ兄とセラ姉の真似ー!なんて言ってたんだが?」


「んな!ど、何処で見られたんだ?まさか…この前の台所での……。」


「うーそーだーよ!やっぱりか!ケケケッ!」


「ハメたなぁー!!このクソ師匠!!」


「わははははっ!!」


はい。久しぶりのユウ弄りです。二ヶ月ぶりなので面白いったらないね。


奴の反応を見る限り、無事に初キッスは終えたらしい。


「俺の事は良いんですよ!それより師匠こそ。突然女の人を連れて帰るなんて驚きましたよ!」


ユウが言っているのはリンの事だ。彼女は孤児院の隣で医院を開く事になった。この国で医師をする為の資格や手続きについては馬車の中でレイアと話し合ったそうだ。


しかしアイツが医師免許まで持っているとは思わなかった。


孤児院に着いてユウにリンを紹介すると、顔を真っ赤にしながら握手していたのは面白かった。その後セラに肘鉄食らって青くもなってたけど。


そんな訳でリンには医院が設立するまでの間、孤児院の一部屋を貸す事になった。


準備に掛かる費用はいづれ分割して返すと言っていたが、特に金額等の交渉はしなかった。下手するとまた『じゃあ、やっぱり身体で…』とか言い出しそうだし。俺って身内に甘いのか?


「お待たせ!」


ユウと話し込んでいると、台所から話題のリンとセラが朝食を運んできた。


全員で朝食を囲みながら会話する。久しぶりの団欒風景だ。


「タケル、今日の予定は?」


リンの問いかけに軽く思案する。


「そうだな…二ヶ月ぶりにユウと鍛錬だな。どの位成長したか見てみたいしな。」


「そう。私はこっちの文字をセラちゃんに習うつもりよ。」


「ああ、だったらセラには簡単な計算を教えてやってくれないか?」


将来的には孤児院はユウとセラに任せるから、収支等の計算くらいは出来た方が良いだろう。


「ん。了解。」









朝食後、いつも鍛錬に使っている街外れの野原に到着。準備運動をしてユウと向き合う。


「準備は良いかユウ?」


「はい。いつでも…おわっ!?」


返事を言い終わる前に不意打ちにファイアーボール。しかも無詠唱で。ユウは驚きながらも危なげなくそれを避ける。


「お?上手く避けるじゃないか。」


「いきなりですか!もう少し手加減して下さいよ!」


ユウが不意打ちに憤慨する。


「アホめ。お前がいつでも来いって言ったんだろうが。」


「言い終えてませんからね!?」


「まあ、落ち着け。実戦では本当にこういう瞬間があるんだ。もしも敵の実力が格下でも今みたいな奇襲が成功すれば、実力は関係無く勝負は着くだろ?」


「た、確かに。」


「特に勝負が決した直後や目的を達した瞬間なんか気が弛み易い。だから自分を客観的に見て、ああ…今油断しているなって状況の時こそ警戒を怠るなよ。」


実際、俺もそれで死んだしな。


「難しいですね。」


「簡単に言うと、ほっとする瞬間が一番気を付けなきゃならんって事。」


「ああ、分かり易いです。それ。」


「って事で、日常でもユウが油断した時に不意打ちかますから気を付けてな。」


「ええぇっ!」


警戒心ってのは頭で考えても実際に体験しないと中々養われないもんだからな。


「さて、前置きはこの位にして始めよう。先ずは復習だ。ファイアーボール!」


ボァ!


「とうっ!よっ!はっ!」


順調に俺のファイアーボールを避けるユウ。心なしか以前より余裕が有る気がする。


「へぇーちゃんと修行は続けてたみたいだな。」


「へへっ。実はレイア様が『タケルの居ない間にユウが劣化しては申し訳が立たん』って仰って騎士団の調練に加えて貰ってたんです。」


あー確かそんな事を定時連絡で言ってたな。今度お礼しないと。


「どうです?結構成長したでしょ?」


「ところがどっこいファイアーボール(散)」


「当たりませんよ…っておおっ!?」


放たれたファイアーボールが直前で分裂してユウを襲う。面食らったユウは避けきれずにファイアーボールが直撃する。守護の指輪の効果で無傷ではあるが。


「ちょっと!分裂するなんて聞いてませんよ!」


「はっはー油断大敵!実際に単調な攻撃の後に応用した攻撃を食らわすなんて戦法は良くあるんだよ。」


力石のパンチ→パンチ→アッパー!みたいにな。


「所謂フェイントだな。剣でもわざと単調な斬撃に慣らされて突きを繰り出されたら避けにくいだろ?」


「分かりますけど、ファイアーボールを分裂させるなんて器用な真似は師匠にしか出来ませんよ。」


そういや前に追尾機能付きのファイアーボールを使った時もレイアに同じような事言われたな。


「ともかく鈍ってないのは分かったし、そろそろ次のステップに進むか。」


「おおっ!やっとファイアーボール地獄から脱出出来るんですね!」


喜ぶのは早いぜユウ。こっからが本番だ。もっと修行は辛くなるんだからな。


「ユウ、次に進む前に一つ選ぶ事が有る。」


「何ですか?」


「お前の修行方針だ。一応三つ考えてみた。」




その1:確実に最強レベルになるけど結果感情の無い殺人マッスィーンに成る確率大


その2:厳しいけど高ランク冒険者になれるレベル。


その3:そこそこの鍛錬でそこそこの実力者になれる。食うには困らないレベル




「さあ選べ。」


「凄くざっくりとしてるっていうか、極端ですね。」


「ちなみにユウ基準で言うと、1が確実にセラを守れる。2が努力次第。3が運次第で守れるんじゃね?って感じ。」


「何でセラが出てくるんですか。」


「お前の基準…ってか、修行の動機は八割方そこだろ?」


「確かにセラは大切だから絶対に守りたいですけど…1はさすがに…うーん…」


あれ?今、こいつ確実に惚気たよね?しかもすげぇナチュラルに。

大切な女の為に強く成るんだ!てか?

物語作るならこいつが主人公じゃん。

なら俺って主人公の師匠…つまり脇役?


「師匠、決めました!やっぱり2で…って何で力無く崩れ落ちてるんですか?」


「いや…何でも無い。ちょっと脇役人生を痛感しただけだ。」


「良く分からないですけど、2でお願いします。」


「へいへい。」


「やる気無し!?」






「んじゃ、次はお前の現在の力量を把握する為に手合わせするぞ。遠慮無く掛かって来い!」


「はい!」


俺は素手のまま木刀を持ったユウと対峙する。

「はぁっ!」


「ふっ!」


真上から打ち下ろす木刀を半身で避ける。


「てぇい!」


「よっと!」


右から薙いでくる。


「たぁっ!」


「甘い!」


切り返しに手間取った間に懐に入り、鳩尾に掌手。


「うあっ!」


後方に突き飛ばす。


剣の練習は殆ど素振りだけだったので、ユウの剣捌きはまだまだだ。剣技というよりも、ただ上手く剣を振り回せるという程度。それでも始めた当初よりは格段に上達しているが。


「まだまだぁ!」


素早く立ち上がり木刀を振り上げるユウ。

俺は上段から振り下ろす斬撃をかわし、ユウが木刀を引く前にその手元を手刀で打つ。


「くっ!」


ユウが衝撃で木刀を落とした直後、足を引っ掛け倒す。


「ぐあっ!」


追い打ちに踏み付けようとすると、ユウは転がりながら何とかそれを避ける。


「まぁ、こんなもんだろ。」


「ふいーやっぱり全然適わないですね…」


「ああ……って、ここでファイアーボール!」


「やっぱりいいぃ!」


不意打ちのファイアーボールを避けるユウ。流石に不意打ち宣言直後じゃ避けるか。


「ハハッ!師匠の性格からして絶対やると思いまし…ぬごっ!?」


攻撃を読んでいて得意気だったユウの後頭部に、避けた筈のファイアーボールが命中。俺が放ったのは戻ってくる往復弾だったのだ。


「わっはっはっはー!行ったっきりとは限らんのだよユウ。」


「くうー!騙されたー!」


悔しがるユウを横目に、問題点とこれからの修行内容を考えてみる。


素振りを課していたのである程度剣の振り方は形になっている。しかし実戦経験が無い為、剣筋が正直過ぎる。あと、技の構成が成っていない。これは教えていないんだから当然かもしれんけど。


「素振りもサボってなかったみたいだし、今後はより実戦的な修行も取り入れるか。」


「やった!」


「剣は大体分かったけど、魔法はどうだ?確か前にレイアに教わっただろ?」


「威力はともかく発動は出来るように成りましたよ。」


「ほうほう。」


やっぱりレイアにはお礼が必要だな。


「じゃ、見せてみ?」


キィイイーン!


俺は的として10メートル先に案山子を創造する。


「師匠の魔法も久し振りですね。」


「取り敢えず自分の最大出力で撃ってみろ。何か助言出来るかもしれん。」


「はい。我が魔力において敵を撃てファイアーアロー!」


ボアッ!


長さ30センチ程の小さめの炎の矢が案山子に命中する。威力は貧弱で案山子は焼失するというより火が燃え移ったって感じだ。速度も遅い。


「確かに発動出来ただけっぽいな。これだとギリ牽制に使える程度か。」


直撃しても良くて軽傷。もしくはちょっと熱い程度だ。ベテラン以上の冒険者や獰猛なモンスターなら無視して突っ込んでくるだろう。


「それレイア様にも言われましたよ。」


そう言ってユウはがっくりと肩を落とす。


「やっぱりイメージが足りないのか?なら、より強いイメージを植え付ければ変わるかもな。試すか。」


「何を試すんです?」


「魔法の鍛錬についてはまずは二つだ。一つはイメージをより明確にするために集中力を養う。二つ目は魔力量の増加。」


「具体的には何をすれば?」


集中力はともかく、この世界の人間はイメージを養い難い。


何故なら地球であれば架空のものでもテレビや映像等を通して目にする事が出来るので自然に想像力が身に付く。しかしそれらが無いこの世界の人間は、実際に現物を見るしか手段が無いのだ。


「具体的な内容は集中力強化の為に座禅。それと実際に俺の魔法を手本にイメージを固める事だな。んで、魔力量の増加には毎日魔力が枯渇するまで魔法を使いまくる事だ。」


「ちょっと待って下さい!何だか色々分からない事があるんですけど?座禅って?あと魔法使いまくるって何故ですか?」


「座禅ってのは俺の故郷の集中力の強化方法だ。それより魔力量の増加方法だが、ちょっと難しい話だが良いか?」


「まだ難しくなるんですか?」


ユウはげんなりしているな。


「人間の身体はある一定以上疲労すると、回復時にほんの少しだけ前より強くなるんだ。超回復と言ってこの繰り返しで身体は鍛えられる。これは俺の推論だが、魔力も同じ様に使い切れば段々と増えるんじゃないかと考えた訳だ。…分かるか?」


「分かりません。」


「だろうな。色々端折ると毎日無くなるまで魔力を使えば、魔力量が増えるんじゃね?って事。」


「つまり魔法を撃ちまくれって事ですか?」


「そんな感じだ。」


話をまとめると剣では技の練習と模擬戦。魔法では座禅とイメトレに魔法の打ちっ放しだな。


「剣の方も本格的に成るから木刀は卒業だな。」


キイイィーン!


俺は自分が腰に差している日本刀と同じ物を創造する。


「ほれ、今日からこれを使え。」


ユウに日本刀を渡す。


「え!良いんですか!?やった!」


大喜びで日本刀を受け取る。


「取り扱いには注意しろよ。城の官給品のナマクラと違って、触れるだけで指が飛ぶんだからな。」


「怖っ!!」


ユウの力量を測った後は、刀の扱いをレクチャーして技の修行に入ったのだった。







「取り敢えずこの型を1000回やろっか?」


「ひええええっ!」


「手を抜いたら100回追加。」


「う、腕が上がらない…死ぬ…。」


「そう言って死んだ奴は居ないから大丈夫だ!」


「いっそ殺せえええええぇぇ!!」






修行風景が見たいとの要望で書いてみました。


特に大した展開が有る訳でもないダラダラとした内容で申し訳無い!


それでも読んでくれた方に感謝。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ