第三十三話筋肉とは…
書いてて楽しい読んで楽しいアノお方が再登場。今回は話は進みません。航海中の一コマって事で。
「リン殿、醤油を取って頂けぬか。」
「はい…どうぞ。」
「うむ、かたじけない。」
船旅から20程日が経った朝、朝食を囲む俺とリン。そして……ポセイドゥン!
「つか、何でお前が居る?」
ナチュラルに朝食に参加しているマッチョ精霊に思わずツッコミを入れる。
「ハッハッハ!知れたこと!遠泳の往路でぶらざぁの船を見かけたのでな!少しばかりいんたぁばるを置く事にしたのだ!」
頬に食べカスを付けたまま豪快に笑うポセイドゥン!
「しかしリン殿の料理は絶品であるな!やはり我が輩と七つの海でヒンドゥースクワットを決めぬか?」
もう海関係無えじゃねぇか。
「ごめんなさい。筋トレはミニが履けなくなるから程ほどにしてるのよ。」
太股に筋肉の窪みが出ちまうからな。
「はぁ…考えるの止そう。疲れる。」
「元気を出せぶらざぁ!我が輩などこの黒ビキニの下は常にビンビンであるぞ!」
「飯時に下ネタは止めろや!」
近くに有ったりんごを投げつける。
「リンもこっち向いてバナナ食うな!わざとか!?わざとだよな!?」
「セックスアピール的な?」
「間違ってる!その使い方は間違ってるぞ!」
朝からツッコミ所多すぎだろ。それと何時までバナナくわえてこっち見てる気だリン。
「ハッハッハ!そう邪険にせずとも良いでは無いかぶらざぁ。土産に我が輩が魚を捕って来たのだ。甲板に置いてあるから後で収めるが良い!」
「食えるのか?」
「人間の毒になる魚はおらん。心配無用であるぞ!」
「まぁ、それなら有り難く貰っとくよ。」
沢山有るのなら干物でも作るかなどと考えながら朝食を食べる。
グラッ!
「うおっ!?」
「あら?揺れてない?」
「ふうむ?この辺りに岩礁は無いはずであるが。」
船が大きく傾き、やがて戻る。
「一応外を確認しよう。」
俺達は朝食を切り上げ甲板へと移動した。
「タコだ。」
「タコ…よね?」
「うむ!奴は海のモンスタータコデビルである!」
甲板に出て俺達が見たのは、船の直ぐ隣でウネウネと足を蠢かせるタコの化け物だった。体長は10メートル程だろうか。足を入れるともっと有る。手すりに巻き付き身体を揺らしている。船を引きずり込もうとしているのか?
「なんだが、B級パニック映画に登場しそうなモンスターね。」
「とはいえ、こっちは現実だから対処しないとな。呑気にソファーでポテチ食いながら鑑賞とはいかないぞ。」
俺は刀に手を掛け、リンは拳銃を構える。
「ぬあああっ!何という事であるか!我が輩の捕って来た魚があああ!?」
見れば、バケツに入っていたであろう魚達はデッキにぶちまけられいた。先ほどの揺れでバケツが倒れたのだろうか。その光景に頭を抱えたポセイドゥン!は憤慨し、タコデビルを睨み付ける。
「ぬうっ!我が輩がぶらざぁの為に捕って来た土産を台無しにしおって!タコデビル!貴様は我が輩が成敗してくれる!」
ポセイドゥンは身体に力を漲らせ、タコデビルと対峙する。
「むはあああああっ!見よ!我が輩の筋肉も貴様を倒せと脈打っておるわ!」
筋肉へのこだわりは凄まじいものが有る。これは凄まじい肉弾戦になりそうだ!
先に仕掛けたのはタコデビル。鞭の様にしならせた足がポセイドゥン!を襲う。
シュバアアッ!バシュ!バシュ!
「ふはははははっ!ヌルいわ!!」
素早い動きでそれをかわすポセイドゥン!
「我が筋肉と精霊の御名において敵を撃て!アクアカッター!」
ザシュッ!ザシュッ!
手すりに絡み付いたタコデビルの足が水の刃に斬り裂かれる。足を斬られた痛みからか、タコデビルは身体を仰け反らせる。
「勝機!我が筋肉と精霊の御名において敵を撃て!アクアストリーム!」
海に出来た大きな渦がタコデビルを飲み込んだ。
「うわっはっはっは!七つの海を征した我が輩にはタコデビルなど敵では無いのである!
高笑いするポセイドゥン!しかし俺達が奴に掛けたのは労いや感謝の言葉では無い。今、最も疑問な事だ。
「「筋肉は!?」」
俺とリンの声は見事にシンクロした。
「何を言うて居るのであるか二人とも?筋肉は使うものでは無く、鍛えるものであろう?」
当然とばかりにしたり顔で言うのがまたムカつく!
殆どネタ的な今話。次回、やっとタスニアへ到着です。