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第三十二話エリスの懸念

書き溜めたものを連日投稿です。

船室に戻った俺がベッドでウトウトしていると、レイアからの定時連絡が入る。


『タケル、今は大丈夫か?』

『…レイアか。構わないぞ。ちょうどタスニアに到着する日が分かったとこだ。』

『それは僥倖だな。いつだ?』

『50日後だ。』

『予想より早いな。良い事だ。エリスもお前が帰って来るのを心待ちにしているぞ。』

『暇なのか?』

『早く新しい魔法を教えて貰いたいと言っていたな。隠れて浮遊魔法を練習している様だ。お前に成果を見せたいらしい。』


そんなにパンツが見せたいのか? あの時は無防備に飛び回ってたからな。


『何だ?今、邪な気配が…』

『気のせいだ。』

『そうか。しかし日取りが決まったならタスニアへは迎えに行けるな。』

『来るのか?忙しいだろ?』

『なに、あと50日も有るのだ。その頃には概ね片付いている。』


「タケル、ランチが出来たわよ。」


レイアとの会話の間にエプロン姿のリンが入って来た。ビキニにエプロンって……エロいな。


『ん?誰か居るのか?』

『ああ。俺と同郷の奴でな。リンて言うんだ。こっちで困ってるのを助けたんだが、アルベルリアまで付いて来る事になった。タスニアに着いたら紹介するよ。友人になってやってくれ。』


リンには念話中だから待てとゼスチャーを送る。


『うむ。楽しみにしているぞ。』


念波が切れ、会話を終えた俺にリンが話し掛けてきた。


「向こうのお姫様と話してたの?」

「まあな。」


リンには俺が飛ばされた経緯は教えてある。


「到着予定日を伝えたところだ。それとレイアは立場のせいで敬遠されていたみたいで友達が少ないからな。リンを紹介するって言ったら楽しみにしているとさ。」


「そうね。私もこちらの世界では知り合いはタケルだけだから。友達になってくれるなら大歓迎よ。けど…」


「ん?」


言葉を留めるリンに首を傾げた。


「本当に変わったのねタケル。昔は自分から他人に関わろうとしてなかったのに。まさかタケルから友人を紹介してもらう日が来るとは思わなかったわ。」


人を対人破綻者みたいに言うな。


「言っただろ?不運体質に他人を巻き込まない様にしてたって。今はあの体質も改善されたからな。これからはその分を取り戻すつもりで人生を楽しむのさ。」


「フフッ、その割には遠くに飛ばされたみたいだけど?」


「うぐ…。」


痛いトコを…。


「それはそれ、これはこれだ。」


「まあ、お蔭で私は助かったんだし言えた立場じゃ無いけどね。」


「うむ!感謝したまえ!」


大きくふんぞり返ってみる。


「やっぱりお礼は身体で…」


「さぁ!飯だ!今日のランチは何かな~?」


華麗なステップで船室を後にする。


「もう!食材出したのはタケルでしょ!」

メニューは全部中華だった。さすがはアメリカンチャイニーズ。けど毎回四川風は止してくれ。辛い。いや、美味いんだけどね。


何気に孤児院のセラの料理が恋しい俺だった。





ーレイアSIDEー


レイアは自室にて、タケルとの念話を終えた。妹のエリスもタケルと会話したがっていたが、レイアはまだこの魔法を使いこなせていない。


相手までの距離も遠いので、互いの言葉を送受信するのがやっとだ。第三者に念波を仲介する技量は無い。オマケにこの魔法を扱えるようになってから日も浅いのだ。


転移の方も試したが、レイアの魔力では国内を移動するのが精々。とてもタケルを迎えに行く程の距離は出せなかった。それでも便利には違いないが。


現在アルベルリアは夜。時差の関係でタケルの場所と昼夜が違う。


レイアが騎士服から寝間着に着替えた所で部屋のドアがノックされた。


「姉上。」


部屋に入って来たのはエリスだった。就寝前に妹と語らうのはレイアの日課になっている。


「エリスか。喜べ。タケルの帰国日が分かったぞ。50日後には港町のタスニアに着くそうだ。」


「おおっ!前に聞いたより早いですな。」


「それまでには今掛かっている案件も片付くだろう。その日には私もタスニアへ向かうつもりだ。」


家臣は姫であるレイアが直々に行く必要は無いと言うだろうが、それはレイアの矜持が許さない。

二度も命を救われ、国政にも協力してくれたのだ。貴族の不正摘発に新魔法の開発。お蔭でレイアの進める国内の孤児院設立にもメドが立った。


そんな恩人で友でもあるタケルを蔑ろにしては、自分に騎士としてのいろはを教えてくれた亡き師に顔向け出来ない。


「姉上、妾も連れて行っては頂けませぬか?」


「エリス、お前をか?」



エリスはレイアと違い、騎士としての鍛練など積んでいない。以前なら用心を期して断る所だ。しかし今はエリスの指にはタケルが作った指輪が有る。敵国の魔法士が3人掛かりで放った爆発から自分を守った指輪と同じ物だ。


余程の事が無い限りは安全だろう。何よりエリスはタケルに懐いており、レイア自身もタケルとの再会を楽しみにしている。同じ心境の妹の願いを叶えてやりたいとレイアは思った。


「駄目でしょうか?」


レイアは不安げに自分を見つめる妹の頭を優しく撫でる。


「良いだろう。但し、守護の指輪は絶対に外すなよ。それと当日までに勉強は終わらせておく事。これが守れるなら連れて行ってやる。」


「おおっ!勿論ですじゃ!」


エリスは飛び上がって喜ぶ。単独で城下を闊歩するレイアとは違い、エリスは基本的に箱入り。そんな彼女に取ってタスニアまでの旅は一大イベントなのだ。


「フフッ…一応父上にも許可を取らねばな。」


喜ぶ妹を微笑ましく見守るレイア。そして『一応』扱いな、哀しい父で王な国家元首。


「そういえば、一人同郷の連れが居るとも言っていたな。」


「ほう、タケルと同郷ですか?」


「ああ。何でも向こうで困っていたのを助けたのだとか。タケルが友人に成ってやってくれと言っていたが、どんな者なのか今から楽しみだな。確か名はリンとか。」


「…リン…ですと?」


旅に同行出来る事にはしゃいでいたエリスの動きがピタリと止まる。


「うん?どうかしたか?」

「姉上…もしやその者は女子(おなご)では?」

「ふむ…名の響きからしてそうだろうな。我が国ではそういう名を男にはあまり付けないな。」

「落ち着いて居る場合では無いのですじゃ!」


タケルが女性と二人、50日もの間を過ごすのだ。普通なら色々と邪推するのは当然だ。


「何を焦っているんだエリス?」


対するレイアは全く事の意味を理解していない。彼女は育ちのせいか凡そ恋愛というものに理解が無い。箱入りのエリスでさえ書物や侍女の噂話程度ではそれに触れているというのに。


タケルが件のリンとそういう間柄に成ってしまったら、タケルと姉がくっ付く事は無くなる。

逆に二人が一緒になれば、まだ見ぬ新しいスイーツも食べ放題だ。そしてタケルから様々な興味深い話も聞けるし、他にも面白い魔法を見せて貰える事だろう。


自分が楽しむためにも二人には恋仲に成って貰わなければと、エリスは割と本気で考えていた。


「ふむう…これは何か対策を考えねば。いっそのこと母上にもご相談を……」


「何をブツブツと言っているんだエリス?」


リンの名前を聞いてからコロコロと変わる妹の表情に、レイアはキョトンとした顔で首を傾げる。


「いえ…ともかく姉上はタケルとのやり取りは毎日欠かさず行って下され。」


「毎日?それ程話す必要は無いだろう。状況報告なら三日に一度で十分ではないか?」


「それであやつがオチたら拙いのです!とにかく姉上は一日に二度、いや三度はタケルとお話し下され!」


「う、うむ…良く分からんが善処しよう。」


エリスの妙な剣幕に気圧され、言われるがまま頷くレイアだった。



少し短かったですね。


なんだか三人称のが書き易い気もします。

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