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第三十一話海の覇者?

通信が止められててやっと更新しました。

「フン♪フフン♪フン♪フンフン♪」


俺とリンはアルベルリアのある大陸へと向かう為、船へと乗り込んだ。創った船はやや大型で船室も多く、二人では広すぎる位だ。


ここまで大きくするつもりは無かったのだが、2カ月以上は掛かる予定の船旅だ。狭い場所に押し込められたらような旅よりはリゾート気分でのクルージングを楽しんだ方が良いだろう。


「フフン♪フン♪」


そして最もリゾート気分を満喫しているのが隣で上機嫌にハミングしているリンだ。俺が創ったヴァイオレットカラーのビキニを着てイスに座ると、身体にオイルを塗り始めた。


「楽しんでんなオイ。」

「当然でしょう?こっちの世界に来てから酷い目に遭ったし、元を取り返さないとね~。」

「さいでっか~。」

「それにタケルだって同じようなものじゃない。」

「まあな。」


俺はデッキに腰掛け釣り糸を垂らしている。ついでに日除けに麦わら帽子だ。決して海賊ではないぞ。念の為…。


「おっ?引いてる!」


釣り竿がしなり、手元にブルブルと感触が伝わる。


「フィーシュ!!」


リールを巻き竿を立てて魚を釣り上げる。


本日最初の獲物は…


「…魚なの?それ…」

「多分…」


釣れたのはナマズの様な口をした魚らしき生物。ただシルエットがかなり個性的だ。体中にトゲが有り、鱗の表面が虹色に光って…いや、テカっていた。


「さすがに食べるのは止した方が良いと思うわ。」

「そうか?案外こういうのが美味だったりしするんじゃないか?」


ナマコしかりウニしかりだ。


「本気?」

「取り敢えず捌いてみようぜ。」


包丁とまな板を取り出すと、三枚におろし刺身を作る。


「あら?結構美味しそうね。」

「だろう?」


盛り付けられた魚(?)は身までが七色で、太陽の光を反射してキラキラと輝いていた。


醤油を掛け箸を伸ばす。


「と、その前に…リン。」

「どうかした?やっぱり止めとく?」

「いや、ここに回復薬を置いておくから、もし毒で俺が倒れたらこれを飲ませてくれ。」

「そこまでしなくても。」

「いくぜ!」


訝しむリンをよそに俺は虹色の刺身を口にする。


「あむ!もぐもぐ…もぐもぐ…」

「ど、どう?」

「美味い!青魚のような身の締まりを持ちながらトロの様な濃厚な旨味!」

「本当?私も食べてみようかしら?」

「ああ。そしてフグの様な舌の痺れ!」

「し、痺れ?」

「グフッ!美味過ぎて身体の震えが止まらないぜ!」

「それ痙攣!」

「ガハッ!俺の夢…美女の上で腹上死は叶わず…か…。」


俺の意識はそこで暗転した。気を失う直前に見たのは、駆け寄るリンの見事なバミューダトライアングルだった。





「うう…。」

「良かった。気が付いたのね?」


目を覚ました俺をリンが覗き込む様にして見つめていた。


回復薬が空なので解毒したらしい。


「やっぱり毒が有ったのよ。あの魚。」

「そうだな。」

「解毒が間に合ったから良いけど。タケル、息して無かったのよ?」


予想以上に危険な状態だったらしい。


「呼吸が無いから回復薬を飲めなかったし。」

「ん?だったらどうやって解毒したんだ?」

「うふふ…分からない?」


そう言って自分の唇に指を当てて微笑むリン。


「まさか、口移しか?」

「ええ。ごちそうさま。」


なんてこったい。


「今度は意識の有る時にお願いしたいわね~。」


ニヤニヤしながらぽってりした唇を舐めるリン。 あの唇を意識の無い間に味わったというのか…チクショー!


「なぁに?もっとしっかり堪能したかった?」


「う、うっせー!」


見透かされている感じに居たたまれなくなり、俺は立ち上がると竿を持って釣りを再開する。


「クスクス…可愛いトコ有るわね。」


聞こえないな!俺は今からフィッシャーマンになるのだ。集中しろタケル!自然と一体になれば雑念など敵では無い!


「タケル、オイル背中に塗ってよ。」


集中だ。集中!


「お約束の『おっと手が滑った!』も二回までなら許してあげるから。」


しゅ、集中だ!


「上手だったら前も塗らせてあげるのになー。」


前だと!?


「オイ!リ……うおっ!?」


振り向こうとした瞬間、竿が強烈に引っ張っられる!


「こりゃ大物だ!」


幸か不幸かタイミング良く魚がヒットした。


「チッ…!」


後ろで舌打ちが聞こえた気がするが無視だ。


「おおっ!凄い引き!」


気を抜くと海に引きずり込まれそうだ。


「鯨でも掛かったのかしら?」


それだと過保護で過激な鯨保護団体に怒られるかもな。異世界だし関係無いか。


魔法で身体能力を強化して一気に引き揚げる!


「うおりゃあああああああ!!」


ザバアアアアア!!


「むううううううううううううううん!!」


「キャアアアアアアー!何よこれ!?」


針の先に掛かっていた獲物が暑苦しい雄叫びを上げる。何と掛かっていたのは魚ではなく、テカテカの肌をしたムキムキマッチョな成人男性。所謂ボディビルダーだった。


「フハハハハハハ!我が輩を釣り上げるとは、お主、中々の剛の者よ!」


「だ、誰よアナタ!?」


リンが俺の背後に身を隠しながら詰問する。確かに異様だし隠れたいのは分かるんだが、背中にムニュっとたわわなフルーツが当たってるぞ。


「ふむ…これは失礼した。我が輩は水の精霊にして、海の覇者!人は我が輩をポセイドゥン!と呼ぶ!」


「ポセイドン?」


「違ぁう!ポセイドンでは無い!ポセイドゥン!である!見よ!この鍛え抜かれた我がばでぃ!脈打つ筋肉!燃えたぎる血潮!滲み出す知性!どう見ても水の精霊ポセイドゥン!であろ!?」


「分かった分かった。それでそのポセイドゥン!が、釣り針に掛かってたんだ?」


コイツとのやり取りが面倒臭くなって来た俺は、さっさと用件を聞き出す事にした。


「いやなに、日課の遠泳で我が筋肉を可愛がっていた所に、見慣れぬ船を発見したのでな。釣り糸を引いてあぷろーちしたのだが、まさか我が輩を釣り上げようとはな!」


どうでも良いが、会話する度に胸筋をピクピクさせないでくれ。非常にウザい。


「それでアプローチして何をしたかったんだ?この辺りが縄張りって言うなら直ぐにでも移動するが。」


「わっはっは!その様に狭量な事は言わぬよ。お主達が悪意の有る者で無いと分かれば十分……おっ?」


そこでポセイドゥン!が、俺の捌いた毒魚の乗った皿に目を付ける。


「これは希少種ドゥクドゥクではないか!どれ、我が輩も少しばかりご相伴に預からせて頂こう!」


「あっ!それは…」


俺達が止める間もなくポセイドゥン!は刺身を口に流し込んだ。 少しって言いながら全部食うんじゃねぇか。いや俺は食わないけどな。


「ふむう!確かにドゥクドゥクであるな!この最後に来る毒の刺激がすぱいしぃで何とも言えん!」


魚の毒が効いていない。


「大丈夫なの?それ毒が有るんでしょ?」

恐る恐る尋ねるリンに、無駄に白い歯を煌めかせてポセイドゥン!が答える。


「はっはっは!美しいお嬢さん、精霊の我が輩に毒など通用しないのだよ!」


確かに人外らしい。見た目はアレだが。


「しかし掛かっていた黒いソースは美味であるな!七つの海を征した我が輩でもコレは知らぬ味だ!」


「醤油の事か?」


「ほう、醤油とな?」


「欲しいならやるよ。」


懐から1000mlボトルに入った醤油を渡す。


「おおっ!お主、筋肉はまだまだだが実に良き男よ!気に入ったぞぶらざぁ!」


「ブラザーは止めてくれ。」


「クスクス…良い兄貴分が出来たわね。」

茶化すなリン。本気で嫌だから。


「そしてお嬢さん!見れば見る程にお美しい!どうであるか?我が輩と共に七つの海でドルフィンキックを決めぬか!?」


「タ、タケル…コレって口説かれてるのかしら?」

「多分。」


海でドルフィンキックに何の意味が?

精霊の間での隠語か何かか?


「ごめんなさい。私、ガチムチ系は趣味じゃないの。」

「むう…この肉体美が理解頂けぬか。仕方無い。潔いのもまた筋肉紳士の美学!」


「筋肉紳士って…」


次々に出る理解不能なキーワードに俺は混乱するばかりだ。


「しかしぶらざぁには馳走になった礼をせねばな!我が輩に何かりくえすとは無いか?」


「ブラザーじゃなくタケルで良い。そうだな…海に詳しいアンタならアルベルリアのある大陸まで何日掛かるか分かるか?」


「ほう、アルベルリアへ行きたかったのか!そうであるな……この速度で行くならば約50日で港町タスニアに着くはずである!」


タスニアはといえば、ヴィニシュの親父さんが治めている町か。


「ありがとう。参考になったよ。」


「いやいや!大した事では無いぞ!」


そう言ってまたも歯を煌めかせる。


「では、これで我が輩は失礼する!筋肉が乳酸を求めているのでな!むううう!あはあああああ!」


来た時のように雄叫びと共に海に飛び込むポセイドゥン!


ザバババババババ!!


見事なクロールで海に激しい水しぶきを上げて去って行く。


「…結局何だったの?」


「さあな。」


俺達はげんなりした表情でポセイドゥン!を見送った。





基本的にマッチョな彼は出オチです。

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