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第二十九話盗賊討伐!っていうか殲滅だ 

今年一発目の投稿です。

「…朝か?」


窓から差し込む光で目を覚ます。隣ではリンが俺の右腕を抱き締めて寝息を立てている。そっと腕を抜き取り、ベッドから降りる。


「うーん…。流石に、寝た気がしないな。」


昨日は色々と忙しかった。その上、床に入ったのは日付が変わった後だったからな。

回復薬を亜空間倉庫から取り出し、一息に飲み干す。


「ゴク……ふう…。我ながら万能な薬だ。」


溜まっていた疲労が即座に取り除かれ気力が漲る。何だかんだで、この回復薬が俺の魔法の中で一番活用されてるな。


「う…ううん……。」


俺が居たスペースが空いたせいか、リンが寝返りを打つ。裸なので見ては不味い部分がシーツからはみ出している。


「…色々とやばかった。」


寝る前に回復薬飲んでたら、正直理性を保てる自身が無かったぞ。寝不足の半分はそっちが原因だ。


「…タケルゥ…?」


寝ぼけ眼でこっちを見上げるリン。


「起きたか?」

「ええ……。まあ…ね。」


明らかに寝足りない。そんな感じだ。奴隷にされた頃から心労で休まる時間が無かったのだろう。もう一本、回復薬を取り出してリンに渡す。


「ほら、これを飲めよ。」

「何これ?」

「元気が出る薬。」

「…ヤバイ薬じゃないでしょうね?」


怪訝な顔で回復薬を見つめる。


「そんな物使うかよ。」

「分かんないわよ~。これでラリった私をタケルが弄ぶ…とか?」

「その気なら、夜の時点で襲っとるわ!」


結構苦労したんだぞ。主に理性とモラルの面で。


「それもそうね。…コク…コク…。」


リンは頷きながら回復薬を飲む。


「コクッ…あふっ…んん…。」


いちいち動きが色っぽいのは何故?


「…凄いわね…。疲れが吹き飛んじゃったわ。これも貴方の魔法なの?」

「そういう事。」

「でも、まだ信じられないわね。ここが異世界なんて。」

「その内、嫌でも実感するさ。」

「そうね。ねぇ、だったらタケルの魔法を見せてよ。」


期待の表情でこちらを見つめるリン。


「だから、その回復薬も魔法だって。」

「こんな地味なのじゃなくて目からビーム!とか、火炎放射!みたいなのが見たいわ。」

「それは追々…ってか、目からビームは魔法なのか?」


そりゃ、似たような事は出来るだろうが。


「分かりやすいのはこんなトコか。我が魔力において、かの者を浮かせ!フライ!」


フワッ!


「わ!?本当に浮いてるわ!凄い!」


俺の魔法でリンの体が宙に浮く。足元を見て感嘆するリンだが、シーツが捲れその姿は裸だ。


「おいリン。感心するのは良いが、もう少し隠せ。」

「フッフーン!見られて恥ずかしいような貧相な身体はしてないわよー。」


自慢気にポーズを取る。


「ったく…。」

「眼福でしょ?」

「否定はせんが、そこまで開けっ広げなのは微妙に感じるのが男心ってモンだ。」


ドスン!


「キャッ!」


魔法を解除するとリンはベッドの上に尻餅を付く。


「もう!急に降ろさないでよ。」

「それより、疲れも取れたしそろそろ着替えるぞ。腹も減ったし。」

「はいはいっと。」


俺が何時もの着流しを羽織っていると、部屋のドアをノックする音。


コンコン…


「起きてるかタケル?」

「どうぞー。開いてるわよー!」


ドアの向こうのショウに応えたのは、俺では無くリンだった。


「ちょっと待てリン!この状況は不味いだろ!」


ガチャ…


しかし無常にもドアは開けられる。


「……。」

「……。」

「あら、ショウ。おはよ。」


無言の俺とショウ。ベッドではリンがショウに向かって小さく手を振っている。


部屋で立つ俺。そしてベッド上で全裸のリン。ショウからすれば、俺とリンが夜明けのコーヒーならぬ夜明けの回復薬を飲んでいる様にしか見えていない訳で…。


「……スマン。まだ『最中』だったか。」


バタン…


「ちょっと待てー!『最中』って何だショウ!?」


誤解だ。リンは後ろで忍び笑いしてる。尻餅付かせた腹いせか?


「クスクス……。ねぇ、それよりタケル、下着も作ってよ。どうせなら新しいのに換えたいわ。」


コノヤロウめ。


「Tバックか、スケスケか選べ。」

「んーそれじゃ、Tのスケスケで。」


なん……だと…!?



俺のささやかな反抗は空振りに終わった…。絶対オルソンにもチクるんだろうなショウの奴。





下着は普通のにしたぞ?色は黒だったが。









朝食を食べた俺達は、情報に有った盗賊団のアジトへと向かった。ショウとオルソンは馬で移動するが、俺とリンには足が無かったため、街から離れるまでは身体強化魔法を使ってリンを担いで走った。


その後は創造魔法でバイク、ドゥカティGT1000サイドカーバージョンを創造して乗り込む。勿論、敵に気取られない様にエンジン音を魔法で遮断してある。ちなみに、ドゥカティなのは唯の趣味だ。ゼファーも捨て難かったが。


「アレだな。間違いないだろう。」


スコープを覗き込み、敵の様子を窺っていたショウが頷く。


盗賊団が根城にしていたのは、古い打ち捨てられた砦だった。それほど大きくは無いが、恐らく簡易的に作られたかつての国の拠点だろう。忘れ去られ、廃墟となった所に奴らが住み着いたらしい。


遠巻きに砦をぐるりと一周見て回ると、前後に一つづつ出入り口。片方は裏門でやや小さめで見張りは一人。正面の門はそれよりも大きめで回りに4人程の男達が見張りを兼ねてクダを巻いている。


「さて、どう攻める?」


ショウの問いに適当に提案。


「ナパーム弾でも打ち込んでやれば?」

「過激だな。」

「それじゃ駄目よタケル!」


俺の提案に異を唱えるリン。


「彼らには自身の行いを悔いてのた打ち回って死んで貰わないと。」

「相変わらずだなぁ。クレイジー・リンは。」


リンの過激発言に半ば呆れながら応える。


「へぇ…聞いたことのある渾名だな。お嬢さんがあの『クレイジー・リン』だったのかい?」


リンの渾名に喰い付いたのは、愛馬を撫でながら笑うオルソンだった。


「いえいえ、『猟犬』程のビッグネームでは無いわよ。」


そう言って、リンがショウに向かってウインクする。


「私の叔父さんも似たような職種に就いてたからね。その道では知らない人は居ないそうじゃない?」

「そうだろう。俺の相棒は中々のモンだろ?」

「何故お前が威張る?」


相棒の名声に胸を張るオルソンと呆れるショウ。しかしリンも負けじと対抗する。


「フフン!認知度ならタケルも負けてないわよ?タケルの渾名はティーよ。『Mr.T』って、聞いた事は有るでしょ?」

「ほう…タケルだったのか。ティーはイニシャルか?」

「まぁね。」


俺もそこそこ有名…なのか?


「どう?中々でしょう?」


「何でお前が威張るんだ?」










ひとしきり軽口を言い合った後、作戦を話し合う。


「依頼は賊の殲滅だが、広域兵器の類は使わない方が良いだろう。リンの様に、場合によっては売買目的で一般人が捕まっている可能性も有るからな。」


ショウが言うように、一番楽なのは砦にロケット砲でも撃ち込んでから残党を掃討する方法だ。だが、これだと砦内に居るかもしれない奴隷候補の一般人ごと黒焦げだ。無関係者まで巻き添えは人情的にも避けたいと思うのは悪い事では無いだろう。


「砦に乗り込んでの白兵戦が主だな。手始めに煙幕か幻覚系の魔法で混乱を起こし、それに乗じて敵を撃破。頭目の首を取る。ってとこか。」


「妥当だな。しかし…」


俺の策に賛同したショウが、ふと自嘲気味に笑う。


「……?」


首を傾げる俺。


「俺も甘いな。居るかも分からない人間にまで気を使うなんてな。」


「ハハハ!甘くて良いんじゃないか?俺達はこの世界では規格外の能力を持ってるんだ。油断や過信は命取りだけど、その甘さも持った能力に見合うだけの『成果』と考えたら悪くないだろ?」


少々自律を締めすぎるショウの発言に、バシバシと背中を叩き笑い飛ばす。俺なんか前の世界じゃ出来もしなかったからな。……不運過ぎて。


「でも、他に捕まっている人間なんて居るのかしら?」

「捕まってた人がそれ言う?」

「うるさいわねー!私は偶然なのよ!」


俺の当然とも言えるツッコミに憤慨するリン。ショウは俺達のやり取りを軽く流しつつ、必要な情報を伝える。


「昨日得た情報からもその可能性は有る。それに依頼主の殺された家族も奴隷目的で攫われかけた所を頑なな抵抗が原因で殺されたらしい。金品だけで無く人間まで商品と見ている辺り…」


「常習犯だな。」


「ああ。」


言葉尻を継ぐと俺に頷くショウ。


金品の強奪のみが目的ならば、旗色の悪い場合に商人は余り抵抗しないものだ。例え身包み剥がされようと、命あっての物種だからだ。しかし、盗賊は襲った相手の命そのものまでも金に代えようという輩。当然、被害者達は必死に抵抗する。そして今回はそれが不幸にも裏目に出たという事だろう。


久しぶりだ。こうやって躊躇無く人間を狩る気分に成るのも。こちらの世界に来ては初めてか?


教えてやろう。人を物扱いする者の末路を。学ぶのは痛みと後悔。受講料は自身の命だ。








―リン・サイド―


ゾワッ……!!


私の背筋に寒気が走る。原因は間違い無くタケル。いつもの柔和な笑みながら、纏う雰囲気は一変している。


今、私達が居る世界が本当に異世界なら前の世界……つまりは地球でタケルが戦闘時に漂わせていた雰囲気だ。彼は自分の事を皮肉り、殺し屋だのテロリストだのと表現していたが、厳密には違う。


タケルの事を的確に表すなら、『解放屋』とでも言うのが正しい。勿論そんな職種は無いのだけれど、それ以外に表現の仕様が無い。


何故ならタケルが事を起こし相対する組織や人間は、必ず人身売買や人体実験等に関係していたからだ。彼はそんな犯罪の被害者を解放する事を第一の目的にしていた。それこそ、どんな重要な情報や兵器よりもだ。


その理由を尋ねると、自分は長く生きられない。ならば、同じ境遇の人を救う為に戦う事にしたと。


話を聞いた時はタケルが何かしら不治の病でも患っているのだと思っていたが、違っていた。


『不運体質』


生まれながらに運の無い体質なんてモノが有るとは知らなかった。けれどそれならば納得出来る点も多い。タケルが誰とも組まず、誰とも群れなかった理由は自分の不運に他者を巻き込まない為の配慮だったのだ。


そんな不運体質もこの世界に来てからは改善されたそうだ。その証拠に、今までタケルに不運といえる出来事は起こっていない。しかも、タケルはショウとオルソンの二人と行動を共にしている。以前では考えられない事だ。


性格も変わった。刹那的だった考え方がかなり建設的なものに成っていて、発言や態度にも余裕が感じられる。人身売買への怒りは変わっていないみたいだけどね。


ほんと、前もだけど良い男になったわ。宿でも優しかったし。ああいう状況なら普通は手を出すものだけど、女性に恥をかかさずに断りながら腕を貸すなんてそうそう出来はしないわ。


まあ、別に手を出してくれても良かったんだけどね。









―タケル・サイド―


作戦は決まった。内容は、俺とリン、ショウとオルソンの二手に分かれ奇襲を掛けるというものだ。俺とリンが裏門から仕掛ける。注意がこちらに逸れたところで、ショウ、オルソンが正面から畳み掛けるという具合だ。


なんでも屋ローランドの仕事なので体面上俺達は裏方に回った。一応、今回の戦闘の主役は請け負ったショウ達だ。


「それじゃ、戦闘開始と行きますか。」

「……」

「ん?どうしたリン?」

「いいえ。何でも無いわ。」


反応の薄いリンをサイドカーに乗るように促し、俺もバイクに跨る。


「タケル!二人きりだからってリン嬢とサボるなよ。」

「サボるか!」


やっぱりチクったなショウ!略してチクショウ!


「宿の続きは帰ってからにしとけよ!」

「何の続きかワタクシには皆目見当もつきませんデス。ハイ。」


オルソンをあしらいながらバイクの上で睨むと、顔を逸らすショウ。口元が釣り上がっている。最近こんなんばっかだな。見てろ。今度ベルゼー君から、からかうネタを聞き出してやる。


俺は冷やかしから逃げるようにバイクを発進させ、砦の裏門を目指した。









移動中、創造した武器を隣のリンに渡す。


「ほれ、リン。武器を渡しとくぞ。」


渡したのは拳銃2丁。ベレッタM92とニューナンブM60。それとスタングレネード×5に銃用のホルスター。


「本当に万能ね創造魔法って。」


ホルスターを装備し受け取った銃をカチャカチャと弄り始めるリン。


「ちなみに、弾は無限弾で精度は落ちないし、ジャムらない。」

「凄っ!」

「オマケにスタングレネードは敵にしか効かないように、光の指向性を変えてある。だから俺達は眩しく無い。」

「それって光学とか相対性理論とか色々無視してない?」

「魔法ですから。」

「謝れ!アインシュタインとニュートンその他諸々の偉人達に!」


それを言ったら、無限弾の銃も質量保存の法則をガン無視だろうに。


常識の崩壊にがなるリンに最後に指輪を渡す。当然アノ指輪だ。


「で、最後にこれだ。」

「え?これって…」


指輪を見て惚けるリン。


「…タケル。気持ちは嬉しいんだけど、それはまだ早いと思うの。こういうのはもっとお互いの事を良く知ってからじゃないと…」

「阿呆!この状況でプロポーズっておかしいだろうが!」


身体は許そうとしたクセに!


俺はリンに渡した守護の指輪の効果について話した。


「成る程。それじゃ、この指輪してたら一切の敵の攻撃は効かないって事ね?」

「そうだ。けど、同じ地球から来たショウやオルソンからの攻撃には効果が保証出来ないからな。」

「了解。フレンドリファイアだけは注意するわ。しかしこれは反則ね。盗賊達には同情するわ。」


まったくだ。許すつもりは猫の額どころか毛穴程も無いけどな。








裏門から少し離れた場所でバイクから降りると、俺も装備を整える。


腰には日本刀を差し、右手にコルトパイソン。身体能力を強化してあるので片手撃ちでイケそうだ。ショウもデザートイーグルを持ってたけど片手で扱うんだろうな。


そして俺も忘れず守護の指輪を指に嵌める。


「タケル、早く行きましょ。」

「早ぇなオイ!」


俺が準備中にも関らずリンは裏門へとスタスタと歩いていく。直後、スタングレネードの強光と炸裂音が辺りを包む。リンを追いかけて砦に侵入すると、彼女は両手の銃を盗賊達に向けていた。


「盗賊の皆さーん!ご機嫌いかが?眩しい?煩い?それじゃさっさと…死ね!!」


ズガン!ズガン!ズガン!


スタングレネードの光をモロに受けた盗賊達に拳銃を乱れ撃つリン。おお怖い。明らかに私怨が混ざってるよねコレ。


「ギャアアアア!!」

「ごふっ!」

「グヘェ!!」


成す統べなく銃弾に倒れる盗賊。そして、騒ぎを聞き付けた仲間がこちらへと殺到してきた。


「うわ、数が多いわねぇ。タケル、宜しく。」

「おおし、外道には軽く地獄を見て頂きましょうかね!我が魔力により敵を惑わせ!ナイトメア!」


敵を幻覚へと誘う。集まった奴らは皆、何かに怯えるように錯乱し始める。


「ヒイイイイイィ!!な、何でお前がここに!?」

「うああああああああ!!来るなあああああああああ!!」

「腕が!俺の腕が!!」


全員が自分にしか見えない幻影に取り乱す。


「タケル?あいつらに何をしたの?凄い怯え様だけど?」

「罪悪感を増幅させて幻覚を見せた。具体的にはあいつらが殺したり傷付けた事の有る相手が、ゾンビみたいに襲い掛かって自分を喰らう夢だな。思い知らせるには丁度良い。」


『DAY OF THE DEAD』 白昼夢版ってところだ。因みにグロNGの純情な方にはオススメしない。観るとトラウマ決定ですぜ。俺はジョージ・A・ロメロファンなのだ。B級って言うなよ?


俺とリンは錯乱する相手を片っ端から片付けて歩を進める。途中、正門の方から轟音が聞こえてきた。恐らくはショウ達も突入を開始したのだろう。


ズガン!ズガン、ズガン!!


「弾切れ無視出来るって本当に楽ね!」


矢倉からこちらを狙っていた敵を撃ち落としながら、俺の創った銃の出来に感嘆するリン。


「感謝しろよリン!こっちの世界にはまだ銃自体が無いんだから…な!」


ズシャアアア!!ドゴン!!


物陰から飛び出して来た敵を切り伏せ、脳天を撃ち抜く。


「あら、感謝してるわよ?夜のお礼を断ったのはタケルじゃなかったかしら?」

「アレがお礼とは初耳だよ!」


皮肉を交えながら会話し、進んでいく俺達。頭目は何処かねぇ?


ガサッ…


「フッ!!」


不意に建物の影から鉢合わせした敵に刀を向ける!


「っ!?」


だが、それは敵では無く先程まで行動を共にしていた相手だった。


「…タケルかよ。」

「あ、悪いオルソン。」


俺の刀がオルソンの首元に。オルソンの銃がリンを狙い、リンの銃がショウを。最後にショウが俺の頭に狙いを定めていた。見事な膠着状態だ。


「フゥ…道理でやたら動きが良いと思ったぜ。」

「そりゃお互い様だ。」


武器を下ろし大きく息を吐く。


「敵の頭目は見つかったかい?」

「ああ。そっちの陽動のお陰で簡単なモンだ。」


どうやら、頭目は既に二人が片付けた後らしい。


「残念ねえ。折角私が思い知らせてやろうと思ったのに。」


「ま、そう言いなさんな。お二人さんが敵を引き付けてくれたお陰で、ノコノコやってきた奴を楽に殺れたんだからな。」


直接殺れなかったのが不満そうなリン。オルソンは宥めながら肩に手を回そうとするが、スルリとそれを避けられる。


「他に捕まってる人間は居たか?」

「いや…どうやら前回売りに出した奴隷で最後だったらしい。」


前回とは俺が昨晩解放したリン達の事だ。被害が無くて幸いだが、そのために白兵戦を選んだ俺達の苦労は無駄だったらしい。ショウは若干渋い顔だ。


「被害が無くて結構結構。それならもうここに用は無いな。」

「ああ。とっととお暇しようぜ。」


俺の魔法で錯乱する敵とその屍をすり抜け、速やかに砦を脱出した。






「さてと…残りの混乱している奴らも一網打尽と行きますか。」


少し離れた場所から砦を見る。確か依頼は殲滅だった筈だ。しかも奴らがやってきた行いに酌量の余地は無いので俺も遠慮はしない。


「ショウ、どうせなら…」


ショウへと耳打ち。敵を葬る方法を話し合う。


「良いな。なら…で……したらどうだ?」

「オーケー!決まりだ!」


俺とショウは砦に向かい、手を翳す。


「「我らが魔力により敵を滅せ!ジェノサイド・エクスプロージョン!!」」


ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!


砦があった場所一帯が吹き飛び、爆炎で燃え上がる!


「うお!?爆風がここまで来た!!」

「派手ねー!」


爆発の余波に頭を竦めるオルソンとリン。炎が収まると砦どころか地面ごと抉れて消えていた。クレーターだ。平地でさえ無い。


「………やり過ぎた。」

「だな…。」


砦跡を眺めて黄昏る、何処か遠い目の俺達。


予定よりショウが使った魔力が多かった。もしかして態々居ない人質に気を使ったのが無駄だったからムカ付いてた?


「いやー、即席で合体魔法なんて考えてみたけど、加減が分かんねーな。」

「タケル、コレってどういった魔法だったの?」


リンの問いに解説も交え答える。


「ショウに爆発系の魔法を放って貰って、俺はその周りを燃え易い気体に換えた。」

「燃え易い気体って酸素?」

「水素も少々…。」

「貴方馬鹿でしょう!?」


馬鹿って言われた。


「良い子は真似しないでね。」

「出来るか!!」






戦闘シーンまでが長かった。コラボは次回で終了の予定です。


作中で紹介した監督のゾンビ映画はグロなので注意です。バイオとかのアクション系と思って舐めると火傷しまっせ。主に脳が。

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