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第二十五話消失!?

今回の事件はこれにて終了!

「…きろ…おい!起きろ!」

「……何だ?ここは…?」


呼び起こされた俺の眼の前に記憶にある男が立っていた。確かこいつは…


「ラサゾール。」


俺が呟くとラサゾールは侮蔑を込めた表情で吐き捨てた。


「ふん!漸くお目覚めか。だが、呼び捨てとは気に入らんな。今日からお前の主は私なのだからな。」


「主?」


「そうだ。お前の指には指輪が嵌まっているだろう?それは隷属の指輪という。お前は私に絶対服従となったのだ。わっはっはっは!後悔するのだな!あのとき私の協力を拒まなければこうは為らずに済んだものを。そもそも平民である冒険者風情が…」


成る程。俺は気絶させられた後、ここへ運び込まれたのか。段々と鈍っていた思考がハッキリしてきた。そして俺の指に見覚えの無い指輪が嵌っている。恐らくはこいつが『隷属の指輪』か。俺は状況を把握するために寝ていた頭をフルに回転させる。


恐らく俺が捕らえられているここは地下牢。そしてラサゾールは気絶している俺に隷属の指輪を嵌めて策が成功したと確信しているのだろう。


「…であるから、私が国の指針と成る事でこの国は更なる発展を遂げる事が出来……」


長々と演説で悦に入っているラサゾール。丁度良いのでソレを聞き流しつつレイア達へ念波を再開する。


『こちらタケル。聞こえるかレイア?』


『タケル!!無事か!?』


想像以上のレイアの剣幕に若干引く俺。


『ああ。問題無い。』


『そうか…。』


レイアの安堵が念波を通して伝わる。


『心配したのだぞ。気絶して運び込まれるのを見送ったからな。』

『どうも攫われる時に頭を殴られて昏倒させられたらしい。』

『やはり守護の指輪を外していたのだな。無茶をするな。』


バレとる。


『…怒ってらっしゃる?』

『大激怒だ。国の大事を取り仕切る為政者としては感謝するが、私個人としては怪我をしてまで協力して貰っても嬉しくは無いぞ。言ったであろう私の都合でこれ以上お前を危険に晒したくは無いと。』

『スイマセン。反省致します。』


俺に反論の余地は無い。


『素直で結構。まだまだ言い足りぬが、あまり時間が無い。状況を教えてくれ。』

『今俺が居るのは恐らく地下牢だ。目の前ではラサゾールがエラそうに演説ぶっこいてる。』


殆どの内容が利己的な見解で残りは自画自賛。単に自分に酔って悦に浸ってるだけだ。


『隷属の指輪はどうだ?発見出来たのか?』

『有るぞ。俺の指に嵌っている。俺が気絶している間に嵌めたんだろうな。』

『大丈夫なのか?』

『問題無いな。事前に解呪の魔法を掛けて置いたから。けど必要無かったわ。嵌められて分かったが、この指輪は魔力で強制的に行動を操るだけだ。指輪に込められている以上の魔力を持っている人間には効果は無いらしい。』

『…ゲイルはお前の事だから対策は出来ていると踏んでいたが、その通りだったな。』


予想してたのかゲイルは。


『…先の事を話そう。もう我らは突入しても良いのか?』

『ああ。ラサゾールはここに居るし、隷属の指輪も俺の指に嵌ってる。今現場を押さえたら言い訳は出来ない筈だ。俺への誘拐と暴行…あと指輪という禁制品の密輸。他にも余罪が有れば芋づる式に見つかるだろう。』

『了解した。直ぐにそちらへ向かう。』

『頼んだぜ。』


だが、念波を終えようとした所でレイアが言い残す。


『…言って置くが、私の怒りは収まってはいないからな。事を終えたらじっくりと話し合おうではないか。』


そこで念波は終了する。


怖ぇーー!!


目の前に立ってるラサゾールや俺を取り囲んでいる魔槍隊の皆さんよりレイアの方が100倍怖ぇー!


「聞いてるのか!貴様!」


呆けている俺をラサゾールが一喝する。


「あ、はい。聞いております。」


一応、操られているフリをしておく。


「フン!まぁ良い。それにしても…見事なお手並みでしたな。セルデス殿。」


ラサゾールは後方に立つ魔槍隊の男に向き直った。


「フ……。たかが冒険者一人程度、我々にはたやすい事ですよ。ラサゾール卿。」


「いやいや、一度目が失敗に終わりどうなる事かと心配しましたが、流石はセルデス殿だ!今日は一つ祝杯と行こうではありませんか。」


「祝杯ですか?確かに先日の卿との宴は楽しいものでしたな。」


「わはは!」と笑い、互いに称賛し合う二人。こいつが魔槍隊の隊長セルデスか。悪者同士で友情を深め合っているらしいが、いつまで続く事やら。


「だ、旦那様!」

「何だ騒がしい。目出度い場だというに興醒めではないか!」


ラサゾールの使用人らしき人間が慌てて地下牢へ飛び込んで来た。


「そ、それがレイア姫様が、タケル=カミジョウがここへ連れ去られたとの報告があったと言われ、こちらへと向かっておられます!」

「何だと!」

「そんな馬鹿な!?」


浮き足立つ魔槍隊とラサゾールの部下達。


「うろたえるな!タケル=カミジョウは隷属の指輪で我が支配下だ。ここへレイア姫が来られても、親睦を深めていたと言えば済む。あとはどの様にも誤魔化せるわ!」


「な、成る程。確かにラサゾール卿の言われる通りだ。」


ラサゾールの言葉で幾らか落ち着きを取り戻したセルデス達。


「今からレイア姫がここへ来る。お前は我らと親睦を深めていたと口裏を合わせろ。良いな?」


隷属の指輪から魔力による干渉を感じるが、生憎と効果は無い。俺の魔力に対して指輪が出力不足だ。焼け石に水。糠に釘。馬の耳に念仏。


「はい。分かりましたぁ(棒読み)。」


俺はオスカー女優顔負けの演技でこれをやり過ごした。






程無くして、レイアがアイン達と共に騎士団を率いて地下へとやって来た。俺は違和感の無い様に牢から出され、ラサゾール達と並んでいる。レイアはこちらを見やり、堂々とした態度で口上を述べる。


「ラサゾール卿、卿の屋敷へ我が盟友タケル=カミジョウが連れ去られるのをこの者達が目撃した!我が国の客分への不当な対応は貴族としてあるまじき行為。よって卿をこの場で捕縛する!」


レイアの宣言に対して、ラサゾールは余裕たっぷりに言い返す。


「おやおや…姫様はどうやら勘違いをしておいでの様だ。我らはカミジョウ殿と親睦を深める為に当屋敷の宴に彼を招いただけで御座います。誓ってその様な不逞な行いなど有りはしません。」


「ならば、カミジョウ本人に問いただしても構わないというのだな?」


「どうぞ。ご自由に。」


俺は送り出されるようにしてレイアの前へと進み出た。


「では、タケル=カミジョウ。お前は卿に客として招かれたのか。それとも腕ずくで攫われたのか答えろ!」


周りを見るとラサゾール達はニヤニヤと笑みを浮かべ、その茶番劇を見守っている。彼らはこれから自分達がどういう目に遭うのかも想像出来ては居ないだろう。


「私は帰宅途中に魔槍隊の者達に暴行を受けて拉致されました。しかもラサゾール卿は気絶中に禁制品の隷属の指輪を嵌め、私を操ろうとしていました。これがその指輪です。」


俺はレイアへ指に嵌る隷属の指輪をかざして見せる。


「な、な、な、何を言っているのだ貴様!」


俺の証言が想像と真逆だったため、ラサゾールは口から泡を飛ばして声を荒げる。他の者達も呆気に取られ硬直していた。


「ラサゾール卿!最早言い逃れは出来んぞ!?」


レイアに詰め寄られ慌てふためくラサゾールとセルデス。


「何故だ!指輪は嵌っている筈…」

「もしや偽者だったのでは?」

「そんな筈は無い!奴隷で試したのを貴殿も見たであろう!?」

「ほう…。」


ラサゾールの失言にレイアの目が細く鋭くなる。


「我が国では奴隷の所有は禁止されている筈だ。その事も含めて貴殿には事情を伺おうか。」

「うぐぐ…」


しかし、なおも彼らのの悪あがきは続く。


「クソ!ならば返り討ちにしてくれる!者共!奴らを討ち取れ!」


セルデスが魔槍隊の部下達を嗾けるが、それはレイアの言葉で徒労に終わってしまう。


「聞け!魔槍隊!お前達は上司であるセルデスの命に従っただけとし、酌量の余地は有る!しかしこの場で抵抗するならば逆賊として捕縛後は極刑となるだろう!」


その言葉で武器を持つ手に迷いが生じる。


「答えは己の武器で示せ!逆賊ならば掲げ、忠臣ならば提げよ!」


地下牢にレイアの凛とした声が響き渡る。隊員達はどうするべきか迷い、互いの動向を注視していた。


「何をしている!?行け!行かんか!」


隊員を鼓舞するセルデスの声が虚しく響く中、俺はこっそり創造魔法で一人の隊員の武器を落とさせる。


カシャン!


「……!?」


武器を落とした隊員が困惑するが、それに倣う形で次々と魔槍隊は武器を手放していく。


ガシャン!ガシャン!ガシャン……


これはある種の集団心理だ。一人が決断すれば選択票は1対0だ。誰でも仲間の居ない方よりは居る方が良い。特に自分で判断が出来ないときはその傾向は強くなる。1対0は2対0に。やがて2対0は10対0にと……。数に差が出る程精神的にあがらい難い。余程の信念や思い入れが無いとそれを覆そうとは思えないだろう。


「な、なんと言う事だ…。」


全ての隊員が武器を落としてしまい、セルデスはヘナヘナと床に崩れ落ちる。


「全員捕縛しろ!」


戦意の喪失を確認したレイアの命令で魔槍隊に縄が打たれる。ラサゾールも騎士達が捕縛しようと近付くが、半狂乱となって騒ぎ立てる。


「ええい!触るな!何故だ!何故指輪が効かなかった!?」


「やれやれ…説明してやれタケル。」


「説明ねぇ。お前が隷属の指輪を持ってるのは最初っからバレてた。んで、俺は予め自分に解呪の魔法を掛けておいた。それを知らずにお前は囮の俺に引っかかった。以上。」


何て簡潔な説明だろうね。


「バレて居ただと!?」

「そうだ。ヴィニシュが命懸けで告発してくれたお陰でな。」

「タスニアの小倅か!?」


アイン達に守られる様にしていたヴィニシュを睨み付けるラサゾール。


「全て貴様らの手の上だったのか……フハハハハハハハハハハハ!!私の負けだな!ハハハハハハハハァッ!!だが、貴様らもただでは済まさんぞ!!ハハハハハハハハハハ!!」


狂った様に笑い出すラサゾールに俺は違和感を感じる。笑い方では無く、奴の懐から感じた魔力の発動に。


「チィ!レイア!」


ラサゾールは懐から取り出した魔力の塊を一番近くに居たレイアへ向けた!


「タケル!?」


反射的にレイアとラサゾールの間に割り込む!


バシュウウウウウウウウ!!


光に包まれながら何かに引き寄せられていくのを感じる。その間に俺が見た地下牢(ここ)での最後の光景は、レイアがラサゾールの腕を切り落とす瞬間だった。









―レイアサイド―


「ぎああああああああっっ!!」


タケルが光と共に消えた直後、ラサゾールの伸ばした腕をレイアが斬り捨てた。血を流してのたうつラサゾールの胸倉を掴む。


「貴様!タケルに何をした!?」


多量の出血で蒼白となった顔でラサゾールは妖しく笑う。


「クハハハ…私が使ったのは弾界宝珠という法具よ。あやつをこの場から弾き飛ばした。一度しか使えぬ魔法具だがな。行き先は私にも分からぬ。海の底か、はたまたマグマの大地か。どちらにせよ碌な場所には行くまい。運が悪ければ飛ばされた際の衝撃で死んでいるかもな。クックク……。」


「貴様ァーーー!!」


ドゴォーーー!!


「グハァッ!」


怒りに任せたレイアの拳がラサゾールの顔にめり込む。ラサゾールはそのまま吹き飛び、床で二・三度バウンドして気絶した。


「レイア様…」

「タケルが…消えちまった。」

「……。」


アイン達協力者もあまりの出来事に言葉を失う。


「タケルならば大丈夫だ!あいつならば必ず戻る!」


言い聞かせるような強い口調で言葉を紡ぐと、レイアは事件の後処理へと向かう。


へたり込みそうになる脚に鞭を打って…。








「信じているぞ。タケル……」



その呟きを聞いた者は誰も居ない。












次回より新たな展開に入ります。


ブレイズさんからの提案でコラボが実現!


『何でも屋ローランド』へようこその主人公・ショウ=ローランドに登場頂きます。

ショウファンの方、イメージと違っても怒らないでね(´・∀・`)ノ




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