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第二十四話誘拐

今回の話、どうやってオチを付けるか迷ってるのでまだ続きます。

『こちらタケルだ。今孤児院を出た所だが、まだホシは動かない。』


魔槍隊の襲撃から三日後の夜、俺は囮として娼館を目指して歩いていた。状況を報告するためレイア達全員に念波を繋げている。


仲間の配置はレイアの騎士団を二つに分け、レイアがラサゾールの屋敷を、ウェルスがセルデスの屋敷をそれぞれ張っている。


アイン、ゲイル、ミアンはレイアに同行しつつヴィニシュの護衛だ。最後にユウだが一応孤児院の子供達を人質として狙われる事を考慮して留守番をさせた(もっとも、孤児院には俺特製の防犯トラップが仕掛けて有るので心配は要らない)。


実際は行き先が娼館なのをセラが知って、ユウの同行を断固反対したからだが……愛されてるなユウ。


『こちらアイン。夜のレイア様も美しいです。』

『こちらタケル。レイアが綺麗なのに異論は無いが、遊ぶなアイン。ついでに死ねば良いのに。』


『こちらウェルスです。自分もラサゾール邸の方に行きたかった…。』 

『いや、副隊長なんだからウェルスが率いらないと駄目だろう。』


なにやらメンバーの中でも色々と思惑が入り乱れている様だ。主にレイアファン層で。


『こちらはレイアだ。先程ラサゾール邸から出て行く魔槍隊の者を見送った。そろそろタケルの所へ行く筈だが動きは無いか?』


『こちらタケルだ。後を付けては来てるが動く気配は無いな。まだ様子見だろう。』


『ふむ…案外慎重だな。』


『帰りに狙うつもりかもしれないな。』


それに応えたのはレイアでは無くミアンとアイン。


『帰り…ですか?何故です?』


『馬鹿だなぁミアン。向こうもタケルは腕が立つって知ってるんだぜ。運動して疲れた所を狙うのが上策だろ?』


『運動?』


『娼館で運動って言えば…ほら…な?』


『……っ!!』


念波からミアンの動揺が伝わる。それとほぼ同時にアインとのパスが途切れた。


『…ゲイルだ。アインがセクハラ発言で撃沈したので一応伝えておく。』


『哀れな奴。』









それから周囲を警戒しつつ念波でチャットのような会話をしている内に娼館へと着いてしまった。


『こちらタケル。娼館へ着いたぞ。馬鹿馬鹿しいが恐らくアインが言った事が正解らしいな。このまま中で適当に時間を潰した後、娼館を出る。』


『オススメは三番人気のミーシャちゃんだぜ☆』


『買うか!あと、俺はお前と兄弟になるつもりはねぇよ!』


『兄弟?』


『いや……何でも無い。』


むしろ通じなくて良かった。


『ユウ、そっちの様子はどうだ?』

『さっきまでこちらを窺ってる人間が居ましたが、暫くしたら師匠を追う様にして居なくなりました。』

『そうか。』


孤児院を狙う気は無いらしいな。


『タケル…』


俺が娼館の扉に手を伸ばそうとした所でレイアからの念波が届く。


『今、お前は囮なのだからな。魔槍隊が動くならばこの後も色々と忙しくなる。』

『だな。』

『お前の実力ならば多少の疲労など問題無いだろうが…』


何が言いたいんだ?


『……自重してくれよ?』


『だから、買わないっての!』


信用ねぇ~!やっぱアレか?城でメイドさんにモーション掛けたのがバレたせいか?アレはただの社交辞令だぜ?






一時間後、俺は娼館を出て孤児院への道を戻っていた。


『ミーシャちゃんはどうでしたかなー?』


アインからからかう様な感覚と共に念波が送られてくる。自身の名誉のために言わせてもらうが、俺は娼館で『そういうコト』は断じてシテいない。ただ娼館に来て小一時間何もしないでそこに居るというのは、余りにも不自然だったのだ。店員らしき人物が愛想笑いで『ご指名は?』と迫られたので思わず『ミーシャちゃんで。』と答えてしまっただけだ。


当然、念波を繋いでいる状態で事に及ぶ訳にも行かないので、適当に雑談してからサヨナラした。


『お前も念波で話は聞いてただろうが。何もしちゃいないよ。』


『くっくっく……別にこの念波ってやつを切ってても良かったんだぜ?一発スッキリした方が雑念が無くなって仕事に集中出来たかもよ?』


『ちょっとアイン!下品過ぎよ!』


『タケルは君とは違うのだアイン。』


ボカッ!


『グハッ!』


アインの軽口をミアンとレイアが非難する。ゲイルからは無言のツッコミが入ったようだ。


『あいたた……ヒッ!』


『どうしたアイン?』


『女性陣が生ゴミでも見るかのような目で俺を見下してる…。』


『…哀れだな。もう少し言動に気を使おうな?』


恐らく現場にはレイアの冷ややかな目によるブリザードが吹き荒れている事だろう。


『レ、レイア様の冷たい目線が……でも、これはこれで…ハァ、ハァ…』


『イカン!戻って来いアイン!そっちに行くと本当に二つ名が【変態】になるぞ!』


Mか?Mなのかコイツ!?俺の中でアインの二つ名候補が【変態】と【被虐】になった瞬間だった。


ザッ…ザザ!ザザザ……


路地裏に足音が複数。即座に俺を取り囲む。


『予想通り。魔槍隊のお出ましだ。』


『気を付けろよタケル。』


『ああ。だが、集中したいから念波は切っておくからな。』


「タケル=カミジョウだな?」


念波を切り、向き合うと刺客の一人が尋ねる。


「そうだが?」

「…一人か?」

「二人に見えるなら相当な近眼だな。」

「ならば好都合。一緒に来てもらおうか。」


刺客は俺の皮肉を無視して用件だけを慇懃に話す。


「数が多いな。流石に多勢に無勢だ。来いって事は殺す気は無いんだな?」


一度目の襲撃失敗で倍の数を動員している。俺は降参とばかりに両手を上げる。


「安心しろ。抹殺の指示は出ていない。我らの主に会うまでは保障しよう。」


言いながら刺客は部下に顎でしゃくって見せる。すると数人が俺を両脇から拘束し、刀を奪う。


「だが、前に返り討ちになった仲間の恨みは晴らさせて貰おうか。」


刺客がニヤリと笑う。


ドゴッ!!


後頭部の衝撃と共に俺の意識は途切れた。









―レイア・アイン・ミアン・ゲイルサイド―


「むっ!」


「お出でなさったみたいですねレイア様。」


レイア達、ラサゾール邸の担当メンバーが物陰から屋敷の裏口を見張っていた。


「担がれているのはタケルさんに間違いありませんね。」


ミアンは魔槍隊の数人に運び込まれたタケルを確認した。


「しかし、何故気絶しているのだ?タケルにはあの指輪が有る。攻撃が効く筈が無い。」

「ああ…多分、指輪…守護の指輪でしたっけ?外してるんじゃないですか?」


レイアにアインが恐る恐る答える。


「なに!?」


「攻撃が効かなかったら魔槍隊が怪しむとでも考えたんでしょうね。軽くボコられる位でないと簡単に捕まったら不自然過ぎるでしょうから。」


「そうか…ならば早く救援に向かわねば!」


「ちょ、ちょっとレイア様!救援はタケルから合図が有ってからでしょう?」


「そうですよ!直ぐにタケルさんから連絡が来ますって!」


逸るレイアを押し留めるアインとミアン。


「しかし、タケルが気絶している間に隷属の指輪を嵌められては不味いだろう?」

「あ…」


アインが思わず間の抜けた声を漏らす。


「やはり、直ぐにでも押し入るべきだな。」


「いや、でもそうしたら作戦がおじゃんですよ!」


「そうです!せっかくここまで上手く進んでたのに!」


再度身を乗り出すレイアを抑える二人。ここで終止無言だったゲイルが口を挟む。


「タケルの事だ。自分が標的になっているのに何も対策を打たない筈は無いのでは?」


「確かにそうだ!ゲイル、良い事言った!」


「タケルさんは特殊な魔法が使えるんでしょう?だから心配いりませんよ~!だから止まってくださいレイア様~!」


レイアに引きずられるミアン。そこでレイアははたと気付く。ミアンが言った特殊な魔法とは、タケルの創造魔法の事だろう。アイン達はタケルの扱う魔法が創造魔法だとは知らない。しかしその片鱗は何度も目撃している。タケルが作った回復薬や先程まで会話していた念波などもそうだ。


自分が創造魔法を使えるならば隷属の指輪の標的にされたとき、無効化する魔法を自身に掛けるだろう。自分より聡いタケルがそれを怠るわけが無い。


そこまで考えて漸く冷静になるレイア。


「ゲイルの言う通りだな。タケルの事だ。隷属の指輪があいつに効く筈は無いか。」


「で、ですよね。」


「しかし!…しかし怪我までしてまで協力して貰っても嬉しくはないぞタケル…。」


レイアはタケルが運び込まれたラサゾール邸をジッと見つめた。







「ねぇ…ゲイル。レイア様ってやっぱりタケルさんが…」


ミアンは恋人へ小声で囁く。


「ああ。多分な。」


ミアンに同意するゲイル。


「あん?どうしたよお二人さん?」

「別に。アインは幸せだねって話。」

「そうだな。その単純な思考が時々羨ましく思えてくる。」

「…馬鹿にしてるだろ。それ。」








もう少し話を拡げて行けたらいいなぁ。

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