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第二十三話変態

タバコ値上げがキビシイ…

「それで?これはどういう事情なんだ?」


辺りに倒れている魔槍隊の方々を見て、不思議そうに首を捻るマイルさん。


「まぁ、逆恨みかな。少し前に開発した魔法を城に提供したんで、それを良く思ってない連中だろうな。」


事情を説明すると、魔法というキーワードにミアンが食い付いて来た。


「ええっ!タケルさん魔法を開発したんですか!?」

「ああ。とは言っても攻撃魔法じゃない、日常生活が便利になる魔法だがな。」

「どんな魔法なんです?」

「もう直ぐ国から発表される筈だけど…陽も落ちて来たし丁度良いか。我が魔力により明かりを灯せ!ライト!」


暗かった周囲が、俺の魔法で出来た発光体で照らされる。


「わぁ!凄いですねぇ!この魔法が有れば夜がかなり快適ですよ。触ってみても大丈夫ですか?」

「ああ。自由に調べてくれ。」


俺は発光体をミアンに渡し、倒れている魔槍隊の面々へ近付く。


「一応死人は居ないみたいだぜ。」


アインが気絶している隊員を突っ突きながら言う。


「取り敢えず全員縛って置こう。」


亜空間倉庫と懐を繋げて、縄を取り出す。


「準備が良いこった。」


アインが笑いながら縄を受け取る。全員を拘束した後、マイルさんが蹴り飛ばしたリーダーの男を叩き起こす。


「おおーい。起きろー!」

「グ…ゥ・・・。き、貴様ら…」


苦渋の表情の男。マイルさんが蹴った場所が盛大に腫れ上がっているものの、話すには支障が無いようだ。


「お前らの目的は何だ?俺を攫う理由は?」

「答える気は無い。」


にべもなく断られてしまう。その後、一切口を開かない男。


「しかたねぇ。身体に訊くか?」


アインが物騒な発言をするも、それを抑える。


「まぁ、ここは任せろ。俺がもっと効率の良い吐かせ方を知ってるから。」


俺はニヤリと笑う。


「へぇ。面白そうだな。」


同じ様に笑うアイン。


「悪い顔だ…。」


ユウが俺達を見比べて呟く。


「お前さんにも言っとくが、早めに白状した方が身の為だぜ?肉体的にも精神的にも…な。」

「な、何をするつもりだ!?」


顔の影をを濃くしてにじり寄る俺。男は縛られた状態でも逃れようと身じろぎしている。


「フフフ……喰らえ!我が四十八の殺人技!悶絶・くすぐり地獄!!」

「なっ!やめ…ギャ、ギャハハハハハハハーー!!」


路地裏に衣を裂くような中年男の悲鳴……もとい、笑い声が響いた。







魔槍隊から聞きだした内容によると、彼らに命令を下したのは直属の上司。隊長のセルデスと副官のバトス。俺を拘束してつれて来いと命令されたそうだが、目的は一切知らされていないらしい。


「他に指示は受けていないのか?」

「し、知らん!さっき言ったのが全部だ!」


男は千切れんばかりに首を横に振る。


「隠すと為にならんぜコラァ!」


アインが恫喝する。それって悪人の台詞じゃないか?


「なぁ、タケル。今度は俺が尋問して良いか?」

「構わんぜ?」

「よぉし!オッサン、今の内に知ってる事は全部吐いた方がいいぜ。」

「ヒッ!!本当だ!知ってる事は全部言った!これ以上は知らないんだ!」


くすぐり地獄を喰らって真っ赤になっていた顔が一気に青ざめていく。


「フッフッフッ…爪は十枚だからあと十回は訊けるな。」

「アイン、足の爪を忘れてるぞ。」

「おっと、二十回に訂正訂正・・・」

「や、止めてくれ!……そうだ!ラサゾール!ラサゾール卿も居た!」

「…っ!?」


その名前にヴィニシュがピクリと反応する。


「本当か?」

「あ、ああ。命令を受けた時、それほど懇意にしていなかった筈のラサゾール卿が傍に居たんだ。間違い無い。」

「どう思うヴィニシュ?」

「…それが事実なら隷属の指輪と今回の襲撃は繋がってますね。無理やりタケルさんに指輪を嵌めさせて操ろうとしたのかも。」

「だろうな。ラサゾールも手の込んだ事を考えるもんだ。俺を利用して最終的にはレイアを操ろうって魂胆か。ともかく全容は知れたな。アイン、もう良いぞ。」

「あいよ。」


ビシ!


「うぐっ!」


アインが手刀で男の意識を刈り取る。







尋問の終了後、俺達はマイルさんに迷惑料代わりに回復薬を一つ渡してからその場を去った。マイルさんは受け取りを渋っていたが、半ば強引に押し付けた。苦笑しながら腰の悪い実家の母親に飲ませるよと言っていた。


「クックック…まさか、笑わせるのが拷問になるとはね。」


アインが先程の光景を思い出して笑い。


「笑いすぎると…その…失禁するんですね。知りませんでした。」


ミアンはポッっと顔を赤らめている。


「人間の感覚は行き過ぎるとどれも苦痛を感じるものさ。しかしやってて楽しいものでも無いな。オッサンの悶絶姿なんかあんまり見たくねぇ。」


「あの拷問方法はタケルの故郷では良くやるのか?」


「いや…。そうでも無い。実際に笑い死にした例は有るらしいけど…。例えば犯罪者を処刑で笑い死になんかさせても被害者の溜飲は下がらないだろ?」


「確かに微妙な空気が流れそうだな。」


ゲイルは納得したふうで頷く。


「あの…タケルさん。一つ疑問に思ったんですが…」

「どうしたヴィニシュ?」

「タケルさん、何度か敵の攻撃魔法を打ち消しましたよね?アレって何だったんですか?」

「ああ、そういえば!」

「何度か腕で防いでましたね。私も知りたいです!」


ヴィニシュの疑問を聞き付けたアイン達が身を乗り出す。仕方ないので説明する事にした。


「アレはこの指輪の効果さ。攻撃魔法から物理攻撃まで身体に害を成す攻撃を防ぐ魔法具だ。」


指輪を嵌めた手を見せる。


「うげ!何だよその反則臭い防具は!」

「だからそんなに軽装なんですねぇ。」

「ほう・・・。」

「凄い…国宝級のシロモノですよ。」


興味深そうに指輪を見る三人とヴィニシュ。


「出処は訊くなよ?広まって今回みたいに襲われるのは面倒だし。」


一応釘を刺すが、四人の態度は意外にさばけたものだった。アインは命を救われた借りがあるからと。

他の二人は回復薬を売って貰えてるだけで十分だという。ヴィニシュもレイアに取り次いで貰えるんだから異論は無いらしい。やっぱり親切はしておくもんだ。


「これから俺はヴィニシュを城に送ってくけど、皆はどうする?」

「俺は付いて行くぜ。元々ヴィニシュは俺の知り合いだからな。」

「私も行きます。お城の中って興味あったんで。それにアインだけだと不安だし。」

「ミアンが行くなら俺も行こう。」


全員が付いてくるようだ。


「ユウはどうする?早く奥さんに会いたいなら先に帰っても良いぞ?」


冷やかし半分に訊いてみるとミアンが驚きの声を上げる。


「ええー!ユウ君ってもう結婚してるの!?その年で!?」

「し、してませんよ!俺も行きますから。師匠を置いて自分だけ帰ったらセラに何言われるか…。」


ユウの発言にミアンは「ユウ君の彼女はセラちゃんて言うんだぁ。」などと呟いている。流石は結婚目前の乙女。色恋沙汰には目敏い。俺達はユウをからかいつつ城へ向かった。








城に着くと門番には話が通っているらしく直ぐに中へ案内された。通された部屋には既にレイアが待っており、隣には副隊長のウェルスも居る。


俺達は勧められた椅子に座り、ヴィニシュがラサゾールの密輸等の不正について、俺が魔槍隊の襲撃についてそれぞれ語った。


「成る程。ラサゾールと魔槍隊のセルデスは協力関係に有るという事か。恐らく魔槍隊が予算の削減で追い詰めらている所にラサゾールが近づいたのだろう。魔槍隊がタケルを攫う人員を、ラサゾ-ルが隷属の指輪を提供した訳だ。成功すれば魔槍隊はタケルから新たな魔法を訊き出せる。それを研究の成果として発表するつもりだったか。」


「んで、ラサゾールは俺を利用して予算の着服等の不正をしようとした。孤児院の設立に乗じてな。最終的にはレイアを操る事まで考えていそうだぜ。」


「まったく、その企みが成功していたらと思うとゾッとする話だ。ヴィニシュ、良く報せてくれた。君の勇気有る行動に感謝する。他の皆も済まなかったな。」


「そ、そんな…私は自分に課せられた役目を真っ当しただけですから。」


礼を言われ、ヴィニシュがオロオロとうろたえる。


「それにしてもラサゾール卿も魔槍隊のセルデスも貴族の風上にも置けません!レイア様、即刻彼らに捕縛命令を!」


いきり立つウェルスだったが、それをレイアが宥める。


「落ち着けウェルス。私も今回の件は腹に据えかねている。しかし証拠が無い。」

「それならばタケル殿が捕まえた魔槍隊の者が居ます。」

「勿論部下を向かわせたが、それではラサゾールには届かないだろう。もっと決定的な証拠が欲しい。タスニアで調べればヴィニシュが言う密輸の証拠が見つかる筈だ。」


レイアの言う通りタスニアで丁寧に探せば不正の痕跡は見つかるだろう。だが時間が掛かる上に、その間にラサゾールやセルデスが別の策を講じる可能性も有る。


「なあ、レイア。俺が囮になろうか?」

「囮?…タケルがか?」


俺の提案にレイアが思案すると、やや間を置いて話し始める。


「そうか。わざと捕まり、指輪を持ち出したところで逆にラサゾールを捕まえるつもりか。」


「ああ。現行犯なら言い訳出来ないだろう?頃合を見計らって連絡するから、レイアは騎士団を連れてラサゾールを捕縛すればいい。」


「確かに効率的だ。ラサゾ-ルだけで無くセルデス共々一網打尽に出来るかもしれん。しかし危険だ。私は友人をこれ以上危険に晒したくない。それに今までもタケルには頼ってばかりだ。我が国の臣下が仕出かした事は王族である私がケリをつけねばならない。」


やっぱりレイアは俺に頼るのに遠慮しているらしい。この辺りは前に王妃さんが言っていた通りだ。


「うーん・・・。仕方無いな。」


「好意を無下にして悪いが・・・。」


甘いなレイア。そこで諦める俺じゃないぞ。


「でも俺、近い内に一人で出歩いて悪い人に攫われそうな気がするなぁ。それで偶々レイアの騎士団に助けられる予感がする。これ、独り言な。」


「なっ!?それでは同じではないか!」


「同じじゃないだろう。俺が攫われたのをレイアが助けてくれるんだ。レイアが俺に頼るんじゃ無い。俺がレイアに頼るんだ。おっと、これも独り言。」


「とても説明的な独り言ですね。」


ユウのツッコミは無視して話を続ける。


「レイアが今日の魔槍隊の襲撃でラサゾールに事情を訊きに来る。偶然誘拐された俺を発見!しかもその場には禁制品の隷属の指輪が!誘拐の容疑で魔槍隊のセルデスを逮捕。ラサゾールは禁制品の密輸で逮捕。かくして悪は滅びるのだった!めでたしめでたし!」


かっかっか!と笑う俺だったが、レイアは微妙な表情だった。というか呆れ顔。


「…まったく。仕方無いのはお前だ。どうせやるならば私達も動こう。」

「頼りにしてるぞ姫騎士様。」

「お前にその名で呼ばれるのはむず痒いな。」

「じゃあ、麗しの姫君。」

「…私にそんな名は不釣合いだ。」


仏頂面でそっぽを向くレイアは偶に見せる照れ隠しだ。


「あの…師匠、二人の世界を作るのは良いですが、今日撃退しちゃったのに二度も襲撃するでしょうか?」


「誰が二人の世界だ。…しかし、そうだな…。噂でも流せば掛からないか?」


ユウにツッコミつつ策を練る。


「流石に向こうも警戒するんじゃ?」

「いや…ラサゾールはともかく魔槍隊は追い込まれているからな。多少強引でも乗ってくるだろう。」


ミアンの疑問にレイアが答える。


「夜中に一人で出歩いて居ても不自然じゃない、攫い易い状況の噂か。うーーむ。」


全員が唸る中、アインが提案する。


「分かった!タケルがスッゲェ絶倫で好きモノのド変態だから、毎晩娼館に入り浸っているって噂はどうだ!?」


「誰がド変態だ!」


「だが娼館に通っているという噂事態は不自然では無いな。」


一応、アインの発言にフォローを入れるゲイル。外聞の悪さにさえ目を瞑ればそれが一番自然に見えるかもしれない。


「はぁ…他に考え付かないし、それで行くか。」


俺は溜息混じりに了承する。


「流石は遊び人のアインね。私達じゃ思い付かないわよそれ。伊達に娼館をハシゴして回って無いわね。」


ミアンが『感心1:皮肉99』が主成分の賞賛を送る。


「ちょ、お前!姫様の前で!ハシゴして無ぇし!」


焦りまくるアインを置いて、話を進める俺達。


「さて、話は決まったな。俺が娼館に通っているっていう、超ド変態でバレると世間様に後ろ指差される程特殊な性癖を持ったアインの考えた噂を流そう。」


「分かった。娼婦が裸足で逃げ出す程の変態で、異常性が服を着て歩いている様なアインが考えた噂を流す工作は此方でやろう。」


「レ、レイア様まで…」


アインが項垂れてブツブツ言い出す。


「煩いぞ。【変態】が二つ名のアイン。」


「俺は普通ノーマルだーーーー!!」







昔、家族の団欒中に妹に「【絶倫】ってなぁに?」って訊かれて返答に困った。

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