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第二十二話共闘!そして愛は強し!? 

出演キャラが多いので苦労しました。これが経験値になれば良いのですが…。

「付けられてるな…。」


食事を終えてアイン達と春風亭を出た後、大通りを歩きながらゲイルが呟く。


「だな…。もうヴィニシュの事を嗅ぎ付けやがったか?」

「早いわねぇ。不正への対応もこれ位迅速だったら良いのにね。」


アインが頷き、ミアンはラサゾールを酷評しながら皮肉る。


「ははっ。だから不正が見つからない様に迅速に対応してるじゃないか。」

「一市民としてはそれを別の方向に向けて欲しいんですけど。」


更に皮肉を被せる俺にミアンが苦笑する。


「おっと!振り返るなよ。気付かれたら面倒だ。ユウ、ヴィニシュ。」

「は、はい!」

「分かりました。」


二人に注意しつつ対応を検討する。


「さて、どうしたものかね…。」

「いっそ、ぶった斬るか?」

「加勢はするぞ?」


アインとゲイルはやる気…いや、殺る気満々な発言だが俺は首を振る。


「先ずは様子を見よう。今声を掛けてもしらばっくれるだけだ。俺とユウ、ヴィニシュが脇道に入る。3人は別れた振りをして追跡者を挟み撃ちにする。」


「成る程。」

「しかし大丈夫か?」


ゲイルの言葉は暗に二人を守りながら戦えるかと訊いているらしい。彼はユウが俺の作った防御魔法の掛かった指輪(面倒なので守護の指輪と名付けた)をしている事を知らないからな。ユウでも防御を捨てて攻撃に専念すればそこそこ戦える筈だ。もっともそんな指輪に頼った鍛え方はしていないがな。


「ユウ、初めての対人戦闘だ。気を付けろよ。相手が手だれなら回避と防御に専念してろ。」

「分かってます。伊達に師匠のファイアボールを避けてませんから。」


ユウは執拗に魔法で追い掛け回したから、速度のみならそこいらのゴロツキには捉えられない程度には成長している。成長期は筋肉より反射神経と敏捷性を鍛える方が効率的だからだ。


決して追い掛け回すのが面白かった訳では無いぞ。


「おうよ。ワイバーンから逃げ切った足を見せてみろ。後はヴィニシュか。戦いの経験は有るのか?」

「ええ。輸送中の積荷を襲う盗賊と何度か戦った事は有ります。自分の身くらいは守れると思いますよ。」


その言葉に答えたのは俺では無くアインだ。


「へえ…鍛えてたってのは本当みたいだな。」

「自分は貧乏貴族ですから。人を雇う程の余裕が無い時は護衛も兼任していました。」


そうでないと馬で三日も走る体力は無いよな。


「戦力の確認は済んだし、そろそろ行動を開始しよう。」


脇道に差し掛かった所で俺達は立ち止まり、やや大きめの声で挨拶を交わす。


「そんじゃ、またな。アイン!」

「おう!また回復薬を売ってくれよタケル!勿論今度の払いはヴィニシュ持ちで。」


ちゃっかり回復薬を注文するアイン。


「ゲイル、ミアンも結婚式は呼んでくれよ!」

「ああ。」

「はーい!」


俺達は通りを挟んで別れる。









「それで?アンタらはどちら様かな?」


脇道に入るとしばらくして男達がわらわらと俺達に近づいて来た。15~16人というとこか。


「貴様がタケル=カミジョウか?」


先頭の男が言葉少なに問いかける。


「ありゃ?目的は俺か?」


意外だな。てっきりヴィニシュだと思っていたのに。


「一緒に来て貰おう。」

「嫌!」


即答すると追跡者達は得物を構える。力づくでもという事か。全員の武器が槍だ。俺はレイアが語った魔槍隊を思い出した。もしかして魔法開発で手柄を取られての逆恨みか?


「胸をはだけた美女の誘いならともかく、ムサイ野郎ばっかりじゃないか。俺を誘いたいならせめて美味い料理と酒でも用意しとけ!」


「良いだろう。多少痛めつけても構わないと言われている。」


俺の戯言を無視して追跡者Aは手を翳す!


「我が魔力により敵を撃て!ファイア・アロー!」


レイアのものより二回り程小さい炎の矢が俺に向かう!


「危ない!タケルさん!!」

「オラアアアアアア!!」


バシュウウウウ!


ヴィニシュは声を上げるが、炎の矢は俺の拳とぶつかり霧散した。


「何っ!!どういう事だ!」


その光景を見た追跡者達が驚き、浮き足立つ。


「誘拐未遂に傷害未遂、いや殺害未遂!証人は貴族ヴィニシュだ!出て来て良いぞ三人共!敵を殲滅する!」

「何だと!?」


追跡者達の後方から別れた筈の3人が姿を現す。


「よぉし!行くかぁ!」

「む…。」


駆け出すアインにゲイル。


「挟み撃ちか!?数はこちらが上だ!たかだか冒険者数人、落ち着いて対処すれば問題ない!」

「実はそうでも無いんだな。」


路地裏は少々狭く、3、4人が通るのがやっとだ。戦うとしたらもっと少ないだろう。敵は多くても数の利を生かせないが、俺達は少ない相手を順々に相手にすれば済む。


おまけに挟撃と状況はかなりこちらに有利だ。


「我が魔力により地を穿て!ボム!」


ミアンが魔法を唱えると二人と追跡者の間で小規模の爆発が起こる。その爆煙を目晦ましにアインとゲイルが斬り込む!


「やるねぇミアン!」

「えへへ。敵に当てるだけが魔法じゃ有りませんよ。」

「だってよ。魔槍隊の皆さん?」

「…貴様…!」


俺の挑発に怒りを滲ませるリーダーらしき男。カマを掛けたが反応から見て当たりかね。


「うおおおおおお!!」

「むううううん!!」


俺が話す間も戦いは続く。アインが長剣で敵を撹乱しゲイルが大剣で薙ぎ払う。パーティーを組んでいるだけあって息はピッタリだ。

魔槍隊が絡んでるならこれはヴィニシュよりも俺の件だ。3人にばかり働かせては申し訳ない。


「行くぞユウ、ヴィニシュ!」

「「はい!」」


二人の返事を背に受けながら日本刀を抜いて走り出す!


「ええい!奴は腕に魔法の効かない法具を身に付けている!全員、腕以外を狙え!」


リーダーの男は指示だけ出すと味方の内へ引っ込む。ヘタレめ!


本当は指輪の効果で魔法は効かないんだが、そう思ってくれるなら好都合。腕で牽制しつつ斬り付ける!


ドガ!ビシ!ボガァ!!


「安心しろ峰打ちだ。」


昏倒した敵へ『俺的に言ってみたい台詞ランキング上位』の台詞を投げ掛ける。








「わわっ!こっち来た!」


ユウとヴィニシュは俺が撃ち漏らした(送り込んだ?)敵に2対1で応戦している。実戦の良い練習台だ。


「クッ!ちょこまかと…グアッ!」


持ち前の俊敏性で攻撃を避けるユウ。その隙を突いてヴィニシュが攻撃を加える。


「ユウ、当たったら修行メニュー三倍な。」

「当たりませんよ!師匠の修行に比べたらノロマも良いトコです!」


確かに上手く避けてる。ユウの戦闘スタイルは速度重視が向いてるかもな。




実際、ユウの二つ名は神速とか神風とかになるのだが、それはまだ先の話。










状況は俺達に有利なまま進み、三十分程経った頃には立っている敵はリーダーのみとなった。


「仲間は全員倒れたけどどうする?」

「グッ…。」


壁を背にして俺達に囲まれるリーダー。


だがここで、一人の不幸な乱入者が加わってしまう。


ガチャ…


「何だい?騒々しいね。」

「なっ!?」


リーダーが背にする壁の横にドアがあり、そこから顔を出した中年女性。


バサッ!


「ヒッ!?」


リーダーは女性を捕らえると、彼女の喉元へ槍を突き付ける。


「動くな!」


人質を取り、俺達を牽制する。


「クッ…。」

「…。」


アイン達も手が出せず、身構えるばかりだ。


「クソッ!冒険者を一人攫うだけの筈が油断した!ここは一度出直して…」

「俺の嫁に何してくれてんだコラアアアアアア!!」


ドガアアアアアアアア!!


「ぶべらっ!?」


またも意外な乱入者。彼の見事な飛び蹴りで、リーダーは人質を残して逆方向へ吹っ飛ぶ。


「フン!俺も鈍ったもんだ。現役の頃には、頭を潰れたトマトに出来たんだがな。」

「…マイルさん?」

「おう!タケルさんじゃないか。」


リーダーを蹴り飛ばしたのは、俺がこの国に来て最初に泊まった宿屋の店主。マイルさんだった。

つまり人質は奥さんのニアさんか。そしてここはあの宿屋の裏口。


昔は冒険者だったと言っていたが、あの蹴りは中々のものだった。


「あの蹴り…もしかして蹴足のマイルさんですか?」

「お?俺を知ってるのかいお嬢さん?」


ミアンもマイルさんを知っているのか?


「一昔前に蹴りで戦う有名な冒険者が居たって聞いた事があります。でも怪我で引退したって…。」

「おうよ。けど、タケルさんに貰った回復薬でこの通りさ。」


笑いながら胸を張るマイルさん。そこへ奥さんのニアさんが飛び込む。


「あんたぁー!」

「おっと、大丈夫かニア?」


ニアさんを抱き留めるマイルさん。


「やっぱりあんたは私の騎士様だよ!また助けてくれるなんて!」

「馬鹿やろ。亭主が妻を守るのは当然だろうが。」


マイルさんは泣きじゃくるニアさんの頭を撫でながら宥める。


「いいなぁ。ゲイルぅ、私達もあんな夫婦に成りたいな。」

「ああ。そうだな。」


マイル夫妻に触発されてミアンとゲイルが見つめ合う。


「ハァ・・・タケル、何だか後半のがどっと疲れたぜ。」

「まったくだ…。」


俺とアインはラブラブフィールドの波状攻撃にガクリと肩を落す。


「二人も恋人作ったらどうですか?」


「「出来たら苦労せんわ!!」」


声を揃える俺達だった。









宿屋の夫妻が再登場。あの夫婦が出るとは作者にも予想出来ませんでした。

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