表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/70

アクセス10万件突破記念―番外編―

PVアクセスが10万を突破!読者の方々に厚く御礼申し上げます。

番外編その1


ある日の午後、タケルの部屋の前を通りかかったセラ。彼の部屋から聞こえてくる声に訝しむ。


「おおっ!レイア・・・何処でこんなテクを!?」

「フフ・・・私もやられてばかりではないさ。どうだ?もう降参か?」

「む!甘いな!だったらこういうのはどうだ!」

「アッ!・・・そんな強引な・・・!」

「ムハハハ!まだまだ覚えたてのお嬢さんには負けんさ。」

「くっ・・・これでさえ・・・お前の手の上で踊らされていたというのか!?」

「中々いやらしい手だろう?」


二人のやり取りにうろたえるセラ。


「お・・・お二人とも何を・・・?まさか!こんな昼間から・・・・」


そこへやって来るユウ。


「セラ。どうかした?」

「ユ、ユウ!?いえ、その・・・ユウこそどうしたの?」


何故か慌てるセラを横目に、ユウがドアにノブに手を掛ける。


「師匠が言ってた食材が見つかってね。これで合ってるか確認して貰おうと思って。」

「だ、駄目よ!」


セラはドアを開けようとするユウの手を抑える。


「どうしたんだよセラ?」

「い、今タケルさんは忙しいみたいだから、後にしたらどうかな?」

「忙しい?今日は何か予定でもあったかなぁ?」

「レイア様がいらっしゃってるの。」

「そう。じゃあ挨拶だけでも・・・」

「駄目よ!」

「どうしたの?何か変だよセラ?」

「それは・・・その・・・」


ガチャ・・・・


「どうした二人とも。こんな所で?」


部屋の中から顔を出したタケルが声を掛ける。


「あ、師匠。前に言ってた食材ってこれですよね?」

「ん?本当だ。やるなユウ。」

「へへへ。」

「今レイアが来てるんだが、どうだ二人も一緒に?」

「そうですか。それじゃ俺も・・・」

「駄目駄目ぇ!」

「セラ?」


顔を赤くしてユウを引き止めるセラ。


「そんな四人でなんて!私とユウは向こうに行ってますから。お二人で楽しんで下さい!」

「そ、そうか。それじゃユウ、また後でな。」

「は、はぁ?」


セラはユウを引っ張って部屋を去って行く。タケルは部屋で待つレイアの元へ戻った。


「二人は興味が無いみたいだな。」

「結構面白いんだけどなぁ。」


向き合うタケルとレイアの間に置かれているのは・・・・将棋台。







番外編その2



タケルが異世界へ渡る少し前の話。


「設置は完了したし、後はタイミング次第だな。」


とあるビルの陰で息を潜め、様子を窺うタケル。表向きには今日この場所で、政治家や名うての実業家が集っての祝賀パーティーが開催される事になっている。だが、実際はマフィア・ヤクザ・裏世界の権力者などが集い、人身売買や武器・麻薬等の取引が行われるという。特に売り飛ばされて行った人間達の末路は悲惨で、ある者は死ぬまで労働を強いられ、またある者は慰み物に。酷いときには人体実験のモルモットにされて原形すら保たない。


「へえ・・・有名どころも居るじゃないか。」


タケルが双眼鏡越しに見つめるのは会場入りする招待客達。その中には政治家として名の知られた人物やマフィアの世界で恐れられる組織の幹部クラスの面々。


「では、俺も行きますか。」


胸元から取り出したサングラスを掛け、事前に参加者から拝借した招待状を懐にビルへと向かう。





受付け嬢に招待状を見せ、案内されたのは大ホール。辺りを見回すと煌びやかに飾り立てられたオブジェや豪華なディナーの数々。会場はパーティーの開催を前に招待客の談笑の場と化している。


「お?結構良い女も居るじゃないか。」


タケルの視線の先にはアジア系だろうか。ボブカットの黒髪で、赤を基調としたチャイナドレスを身に纏う女性が居る。大胆に入ったスリットから覗く脚が少々目に毒だ。


やがてホールの照明は消され、壇上に上がる主催者へスポットライトが当たる。マイクスタンドに立つ肥満気味の男性。彼が挨拶を始めたところで異変は起きた。


ボン!!ボン!!ドオウーーーン!!ブシュウーーーー!!


突如、けたたましい音が鳴り響き、閃光と共に会場に煙が充満。招待客の間でパニックが起きる。


「うわーーー!!何だ!!テロかー!?」

「キャーーーー!!」

「ひ、非常口は何処だ!?」


騒ぐ客達を尻目にタケルは目的の場所へと走り出す。


「もっと騒いでくれよー。」


不穏当な事を呟くタケル。彼こそがこの騒動を起こした張本人である。彼が予め設置したのは、リモコン式の閃光弾と発煙弾。殺傷力は皆無だが、騒ぎを起こすのには適していた。


「早く逃げろ!!爆発するぞ!!」


招待客に混じりながら危機感を煽る。


「ば、爆発だって!?」

「早く外へ!!」

「落ち着いて下さい!!今、確認を!!」


開催側のスタッフが事態の収拾を図ろうとするも、パニックに陥った客達に効果は無く、会場は混乱へ陥る。


そんな中、タケルが向かったのは会場となっている建物の地下。情報ではそこに取引される武器や薬物。そして売られる予定だった人間が運び込まれてる筈だ。警備の人間を物陰に隠れつつやり過ごし、前に進む。


「ビンゴ!」


予想通り、地下の搬入口らしき場所には売り物として用意された武器や麻薬等々。そして特大のショウケースの中には、拘束され閉じ込められた人々。中には年端も行かぬ少年少女まで居る。


「主催者も客側も、中々素敵な趣味をしてらっしゃる。」


皮肉を言いながらも、商品を警備するスタッフの死角に回り、サイレンサー付きのワルサーPPKを構える。


プシュン!プシュン!ドサ・・・ドサ・・・


「な!?何処からだ!?」

「向こうだ!」


警備する四人の内二人の頭部を捉えるも、残りの二人が位置に気付き応戦される。


「このままだと不味いな。」


長引かせると銃声を聞き付け人が来るだろう。主催者も撤退を始めれば商品の確保にこちらに向かうかもしれない。短期決戦のために懐の閃光弾を手にしたところ、意外な形で銃撃戦は終わりを告げる。


バン!バン!


「ガッ!!」

「グゥッ!!」


タケルの位置と向かい側、隠れた敵が丸見えの場所から彼らを狙撃した人間が居たのだ。


「もしかして貴方がT?」


銃弾の主はタケルがホールで見かけた女性だった。彼女はカッカッとヒールを鳴らしながら歩み寄り、挑戦的な目付きでタケルを見る。


「何だそのTってのは?」

「違うの?人身売買を行ってる組織を潰し回っている正体不明の人物。潰した組織のボスの額にTの文字を残していく。」

「ああ、なるほど。」


タケルはそこまで聞いて理解した。確かにTとは自分の事らしい。本当はシャレでT・Kと書くつもりだったのだが、何故かKを書こうとすると毎度邪魔が入る。警察の介入だったり、関連組織の援軍だったり・・・。


「貴方の人命を重視したやり方に、取り締まる側の私達の中にも敬愛を込めてMr.Tって呼ぶ人も居るわよ?」

「何処の特攻野郎だよそりゃ・・・。」


げんなりしたタケルの態度を見て、女性はクスクスと忍び笑いをする。


「面白い人ね貴方。それじゃ本当は何と呼べばいいのかしら?」

「本当の名前はタケル=カミジョウさ。タケルでいい。」

「呆れた。本名を名乗るとは思わなかったわ。」


正直に名乗るとは思っていなかったため女性が驚く。


「自分で付けた名前さ。孤児だったからな。戸籍も無いし、バレても不自由は無いのさ。」

「そういう事・・・。」

「それで?お嬢さんはどちらさん?」

「お嬢って・・・貴方幾つよ。私の方が年上よね?」

「オバサンって呼んで欲しいのか?」

「・・・リンよ。リン=ウィストン捜査官。」

「捜査官・・・公安の?」

「ご名答。」


言いながらウインクするリン。


「クレイジー・リンってか?」

「私が名乗ると皆してそう言うわ。」

「まあ、代表的だからな。もしくはお約束?」

「別に構わないけどね。それで?この人たちを助けるつもりなんでしょ?」

「手伝うつもりか?」

「そのためにここまで来たのよ。当然でしょ?」


リンは倒れている敵の懐を探り、鍵束を見つけるとショウケースの鍵を開ける。


「助けに来たわよ!」


リンは捕まっている人達の錠を外して行く。


「この中で銃を使える人間はいるか?」


タケルの質問に大半の人間が手を上げる。


「流石は銃社会。」


一人呟きながら陳列してある武器を装弾して、捕らえられていた人たちに渡す。


「あれだけ騒ぎを起こしたんだ。直に警察が乗り込んで来るだろう。こちらが応戦すれば、警察と俺達で主催者側を挟み撃ちに出来る。」

「そうね。問題はそのまま私達まで排除されないようにしなきゃいけない。皆!敵が制圧されたら私達も武器を捨てて投降するわ!私の指示を良く聞いて!」


全員がリンに頷く。


「しかしリン、公安は上層部が抑えられていて、この件は黙認される筈じゃなかったか?」

「ええ。そうよ。」


あっさりとそれを認めるリンにタケルは首を傾げる。


「なら何故ここにお前が潜入してるんだ?」

「私も見てみたかったのよ。Mr.Tがどんな人か。」


リンは興味本位で俺が現れるであろう場所に、命令を無視して潜入したと言っているのだ。


「成る程。確かにクレイジー・リンだ。」


タケルは彼女の異名に妙に納得しつつ銃を手にした。








戦闘は予想していたよりも早くに終結した。リンが同僚に協力を要請しており、待ち構える形で事件が起こったため警察も公安もかなりの速度で現場に急行したのだ。上層部もこれだけの騒ぎが起きては動かざるを得なかったらしい。捕まっていた人たちも保護され、彼らの証言と武器・麻薬が証拠として主催者側の人間はその場で逮捕となった。


「しかし俺を逃がして良かったのか?」


人道的だと言われていても、一応タケルは政府から見ればテロリスト同然。しかも政府を先回りして組織を潰すというお偉方からすれば非常に煙たい存在だ。それをリンは巻き込まれた一般人として逃がした。今二人が居るのは現場から少し離れた国立公園の広場だ。


「構わないわよ。」


リンはタケルの問いに事も何気に言い放つ。


「本当はMr.Tっていうのがただの正義気取りの犯罪者だったら捕まえるつもりだったんだけどね。こんな可愛い男の子だったら捕まえる気もなくなっちゃったわ。」


茶目っ気を含ませて笑うリンに釣られ、タケルは苦笑する。


「可愛いって・・・これでも二十歳なんだけどな。」

「日本人は童顔って本当みたいね。」

「良いのか?見込み違いの凶悪犯かもしれないぞ?」

「その時は今度こそ私が絞首台まで送ってあげるわ。」


軽く手を振り「またね。」と言い、リンは背を向け現場へと戻って行く。彼女は自分と同じだとタケルは思った。他者に価値観を求めずに自分の正義に従うタイプの人間。


「あ、そうそう。」


リンは思い出したかの様に振り返る。


「今度はKまで書けると良いわね。Mr.T」

「精々善処するさクレイジー・リン。」


この日、二人の出会いは互いを皮肉ることで幕を閉じたのだった。







数ヵ月後、アルベルリア国孤児院にて。


「師匠!起きて下さい!」

「ん?」


タケルは弟子のユウにうたた寝している所を起こされた。


「レイア様がいらっしゃってますよ。」


寝ぼけ眼で見た先には騎士服姿のレイア。


「良く寝ていたなタケル。」

「あ、ああ。」


セラが運んできた紅茶を啜るレイアを見てタケルは言う。


「やっぱりボリュームが違うよな。」

「・・・?何を言っているんだ?」


夢に出てきたリンのチャイナ服姿が頭から離れないタケルだった。









番外編その3まで書く予定だったのですが、その2が長くなったので一先ずこの二つを投稿してみました。タケルの過去を少しだけ紹介。

ワルサーPPKの辺りとか、もっと静かな銃があるじゃないか!なんてツッコミも有るでしょうが、作者の引き出しが少ないもんで、どうかご容赦を!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ