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第十一話タケル院長就任!ユウ漢になる?

今回はギャグ色濃厚。あ!いつもですね。

ここの所、ゆっくりと休みも取れてなかったため、今日はギルドへ行くのはやめて休日とした。

疲労自体は回復薬で取れる。が、心にゆとりを持つ意味でも精神の休息は必要だろう。


俺は孤児院の応接間に創ったソファーで茶を啜りながらまったりしている。


「やっぱり紅茶はダージリンだよ。そう思わないか?」

「確かにダージリンは俺も好きです。けど、師匠が飲んでるのはアッサムです。」

「…。」


俺のエセ紳士っぷりにユウが冷静にツッコミを入れる。今日は修行は休みだ。


「なかなか上質な茶葉だ。セラにオニギリも買っておくように頼もう。」

「セラは市場には詳しいですから。あとオニギリじゃなくてニルギリです。」

「…。」


鋭いツッコミだ。今日のユウは絶好調だな。だが、俺もやられてばかりではないぞ。反撃を開始する。


「セラといえばユウよ。」

「何ですか?」

「その後、二人に進展はあったのか?」

「な、何を言い出すんですか?」


うむうむ。良い感じに揺れている。からかい甲斐の有るヤツだ。


「特殊な状況下に置かれた男女はグッとその親密度が増すらしい。俺の故郷ではソレを吊り橋効果というそうだ。」

「吊り橋ですか…。」

「それで具体的にはどこまで進んでるんだ?言いにくいなら三択にしてやる。」


A:勢いで一度抱き合った(極めて純粋に無事を喜んだ)だけ。

B:マウス トゥ マウスが最高で、R15的な枠内。

C:もはや、イクとこまでイッた関係。R18的な意味で。


「もちろんA…「因みにAを選んだ場合、今日一日語尾に『ヘタレ』って付けて喋って頂く。」…うぐ…。」

「俺の予想ではCだな~♪最低でもB。いやいや、ユウの男気を軽く見るのは申し訳ないかぁ。」

「どれを選んでも不利な状況がやって来そうなんですが。」

「俺としては心苦しいわけよ。二人に、『部屋は同室でも構わないのに余計な事しやがって!』って恨まれてたらどうしよう?ってな。」

「思ってませんから!」

「そうかぁ。部屋は別の方が燃えるとも言うし、ユウもそのクチか・・・」

「だからそういう意味じゃ…」


コンコン…コンコン…


ユウへの更なる追い込みを邪魔するように玄関でノックが聞こえてきた。


「あっ!お客さんですよ師匠。はーい。今行きまーす!」


これ幸いにと、ユウは俺の話から逃れるために率先して玄関へ向かう。


「チッ、逃したか!」


仕方なく一人で紅茶を啜る。


「この羊羹、良い出来だな。」


茶菓子の羊羹は俺の手製。市で見かけた極めて小豆に近い豆と砂糖で俺が作った一品だ。

色がやや茶色っぽい以外は、本物と大差ない出来だ。


「しし、ししし、しゃ!」

「ししゃも?」

「し、師匠!!お客さんでbっ!」


何やら慌てるユウを余所に玄関の扉に目線を移す。立っていたのはレイアだった。


「久しぶりだなタケル。とはいえ六日ぶりか。」

「ああレイアだったのか。」


道理でユウが慌てる筈だ。初対面だっけ。


「何とか時間が取れたのでな。この孤児院についても話をしようと思ってな。」

「という事は?」

「うむ。調べは付いた。」

「そうか。」


だったらセラにも聞かせるべきだろう。レイアをソファーに勧めつつセラを呼ばす。


「ユウ。セラを呼んできてくれ。」







応接間に、俺、ユウ、セラが集まりレイアの話を聞いた。

結論から言うと、この孤児院は国営。正確には貴族が経営を始め、国が資金を提供していた。

しかし最初からまともに機能しているとは言いがたく、直ぐに国が出した資金は貴族の懐へはいるばかりとなった。所謂横領だ。

資金が滞ったせいで経営は立ち行かなくなり院長は失踪。孤児院は放置され現在に至る…ということだ。


大筋は俺の推測通り。驚いたのは横領していた貴族の名だ。


ジーグ=ラモンド。


そう。セラを攫ったロリブタ全裸貴族だ。


「レイアの暗殺に、セラの誘拐、資金横領…アイツまともな所を探す方が難しくないか?」

「それだけに、奴をのさばらせた私達の罪は重い。」


レイアは苦渋の表情だ。


「ユウ、セラ。誘拐の件だけでなく、孤児院に関しても私達の管理不足が原因だ。本当に済まなかった。」


深々と頭を下げるレイア。


「あ、頭を上げてくださいレイア様!」

「そうです。悪いのはあの貴族です!レイア様が頭を下げるなんて。」


王族に頭を下げられるとは思わなかった二人が慌てふためく。しかし謝罪を遠慮されてはレイアも立つ瀬が無いだろう。


「ユウ、セラ。レイアは為政者として頭を下げてるんだ。謝罪は受け取っておけよ。」

「わ、分かりました。」

「はいっ。」


「話を進めようか。レイア、今後の国の対応を教えてくれ。」

「ああ。幸いというか予算案には孤児院への資金援助は組み込まれていた。その管理者がジーグだったために横領が起きた。それを私が担当しての資金援助に変更するだけで済む。」


つまり金の流れが、国→ジーグ→孤児院ではなく、国→レイア→孤児院へと変わるわけか。


「お陰で議会の承認が必要無くなった。直ぐにでも資金援助は出来るのだが、形式上院長となる人間が必要なのだ。誰がする?タケルか?」

「面倒臭ぇ~!ユウがやれよ。」

「ええ!俺ですか!?無理ですよ!」

「じゃセラ。」

「私達はまだ子供ですから。」

「できればタケルが望ましい。下手な人選だと議会で難癖を付けられかねん。ジーグが失脚したことで奴の横領ルートを確保しようと、自身の息が掛かった人間を送り込もうと考える輩もいる。」

「なんで俺なんだ?」

「タケルならば孤児院の復興と私に横領を告発した人間として説得力が有る。」

「…分かった。それで話を進めておいてくれ。」


名前だけで危険を避けられるならそれに越したことは無いか。ユウが成人したら押し付け…もとい譲ろう。






「おおよその話は済んだな。セラ、お茶を淹れてくれ。今度はダージリンで。」

「はい。」


緊張感の要る話は済んだので、再びマッタリするために羊羹を摘まむ。


「レイアもどうだい?」

「何だこの黒い物は?」

「俺の故郷のお菓子だ。手作り羊羹。」

「ヨウカン…聞いた事のない菓子だな。貰おう。」


一切れ齧る。


「甘いな。独特の食感だ。これは芋か?」

「おしい。豆だ。芋で出来たやつもあるが…」

「エリスが気に入りそうな味だ。」

「エリス?」

「私の腹違いの妹だ。」

「腹違い?側室の娘か?」

「いや、違う。この国には正室側室の区別はない。正確には無くなったと言うべきか。」

「無くなった?」

「私の父の代でな。父曰く、『惚れた女に優劣など付けてたまるか!』らしい。」

「なかなか豪胆だな。」


その考え方は面白い。なんか好きになれそうだ。日本も大昔は一夫多妻があったらしい。女性を侍らしているという風に感じられるかもしれないが実は逆だ。


より能力の高い男にのみ女性が集中するため、一夫一妻制はモテない男にこそ救いの手だとも言えるそうだ。


「でもそれだと、誰が王位に就くかで揉めないか?」


跡目争いってやつだ。


「王が六十になったときに次の王を指名するらしい。」

「指名する前に死んだら?」

「それも父曰く『俺は死なんから問題ない』らしい。」

「無茶苦茶だなぁ。」

「それゆえ、この制度は時限法で、父が死ぬまでが有効期限となっている。後々、揉め事の火種にならないようにな。」

「面白い親父さんだ。」

「振り回される方には堪ったものではないがな。」






少し世間話をしてレイアは城へと帰って行った。まだ忙しかったのに無理に時間を作ってくれたんだろうな。レイアを見送った後、ユウとセラの追及が始まった。


「師匠!どういうことですか!?レイア様が態々こんな所まで来られるなんて!」

「そうです!タケルさん!しかもレイア様を相手にあんな言葉遣い。どういう関係ですか!?」


うっぜ。リアクションがアインのときとソックリだ。アレか?お前らもファンか?信奉者か?レイアのカリスマ恐るべし!


「一度ギルドの仕事を手伝っただけだ。騎士団に知り合いがいると言ったろうが。セラを助けた後でレイアに事情を話したんだよ。」

「にしても、城でもあの言葉遣いだったんですか?」

「うん。」

「下手したら不敬罪ものですよ。」


そっか。通りで騎士団連中の視線が痛かった訳だ。


「しょうがねぇだろ。俺の故郷では同年代に敬語を使う習慣がなかったんだから。」

「貴族や王族にもですか?」

「居ねぇよそんなもん。」

「どんだけ田舎なんですか!?」


田舎ゆうな。







「ユウ。せっかく休みなんだ。今日の予定は?」

「いえ。特には。」

「色気がないな。デートの一つも行ってこいよ。」

「でーと?」

「要はセラ誘って遊んで来いって事だ。討伐報酬で軍資金はあるだろ?」

「殆ど生活費としてセラに徴収されました。」

「…。」


既に尻に敷かれとる。


「仕方が無い。ほれ。」


ユウに銀貨を50枚ほど渡す。


「師匠?」

「これでセラを連れて遊んで来いよ。ついでにセラに贈り物の一つも買ってやれ。子供達の世話は俺がしといてやる。」

「し、師匠!」


目を輝かせるユウ。フッ、尊敬の眼差しが眩しいゼ!


「弟子をイビるのが生き甲斐な、ただの鬼じゃなかったんですね!?」


やっぱ金返せ。









「それでは行ってきます!」

「本当にいいんですか?」

「いいさ。楽しんで来い。」


俺は子供達と玄関で二人を見送る。


「あ、チョット待った。」


俺は魔法でソレを創造する。


キイイイーーーン!!


ヒソヒソ…


「ユウ。コレを持って行け。」

「なんですかコレ?」


渡したのは、明るい家族計画1ダース。


「万が一のためにな。」

「なんですか万が一って。」


使い方を詳しくレクチャー。


「これを×××して、××すれば×××の時に××なのだ。」

「なーーーー!!」

「そのための物さ。」

「い、要りませんよ。そんな物!」

「なに?だがこれ以上扶養家族を増やすのはオススメせんぞ?」

「そういう意味じゃなく…「何がそういう意味なの?」だはーー!!」


不思議そうに話に入るセラと、焦りに焦るユウ。


「なんでもない!」

「そうだぞセラよ。これは極めて繊細な会話なのだ。」

「はぁ?」


意味が分からず生返事のセラ。





ボソボソ…


「でも師匠。一応、一箱だけ…。」

「勇者だなユウ。ヘタレ呼ばわりは撤回しよう。」


紳士たちの会話は終わり、改めて出て行く二人に子供達が手を振る。


「いってらっしゃいユウ兄ぃ!」

「セラ姉ぇお土産よろしく~!」

「今日は帰らなくても探さないからな~!」


もちろん最後のセリフは俺のだ。









結局ユウとセラは夕刻を待たずして帰って来た。セラはやたら上機嫌で、その手には銀の指輪をしていた。

ユウはというと、対象的に少々落ち込み気味。顔には赤く、手形の跡が残っていた。その理由は押して知るべしだ。


「ユウ…その顔は?」

「訊かないでください師匠。」


うん。訊かない。


「師匠。女って分からないです…。」

「言うなユウ。それは全世界の男にとって永遠の謎だ。」


後でセラの指輪にも防御魔法を掛けておこう。ユウの弟達にも。





ストックが…尽きる…。

残弾がほぼゼロなので、投稿遅くなるかもです。

見放さずにお付き合いください。

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