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21:5 - 退屈な説明会にて

「うん、ここからは僕が説明する。彼女は疲れてるみたいだし、一応僕が上司だしね。ほらノエミア、そこに椅子あるし座って休んでてよ」


 どうやらノエミアのフォローのつもりだったらしい。……何というかこう、イケ好かないヤツだ。そんなことを思う俺を余所よそに、他の前に出ていた面々が自分の席に戻って、こうしてアイザックの講演みたいなものが始まった。




「ええと、それでは彼女に代わって僕が説明します。こんにちは、私はゴーディマー技研所属研究員のアイザック・ヘインズです。……あー、ノイズ思ったよりも気になるな……。さて、この会合の開始以前に配られている資料をご覧ください。今は船内のプロジェクターが動いてないのでこんなアナログな方法で説明するのは心苦しいのですが……っと、脱線失礼」


 スピーカーのノイズは止む気配がない中、アイザックは前に出て資料をパラパラとめくりながら声を張り上げる。


「まず今回、新しく発見された地球外生命体の名称は『シグナリアン』と正式に名付けられました。発見された個体は発見者の一人であるレイチェル・ナッシュさんの頭上から今も離れることなく追従しています。アイテリウムから生み出され続けている重力波をエサとして吸収してコントロールすることで浮遊しているようで、このことからもわかるように人体への影響は今のところ認められていません。それで、我々が彼らを“知的水準の高い生物”だと認定した理由を説明しましょうか。資料の二枚目をご覧ください……」




 ……うーむ、これ思ったより聞くのダルいぞ? 俺がこういうのを真面目に聞けるような人間でないのは知っての通り、まぁそこは伝わっていると思いたいが。

 そうでなくたって、どう考えても俺に関わりが出来るような分野でないことは明らかな話題であるせいなのかどうしても情報が頭に入ってこない。というかこの間、コイツの口からかいつまんで聞いたことそのまんまの内容なので余計に興味が削がれてしまう。で、どうしても講演に集中できない俺は、結局この部屋に集まった知り合いたちの顔を見比べることにした。

 まず近くに座ってるヤツから。


 隣の席に座っているのは久しぶりに顔を合わせたイヴだ。ただアイザックの顔を見つめている。さっき挨拶だけしたが、それもそこそこにどこかに行って会合開始直前まで戻ってこなかった。俺の体感の通り、相変わらず忙しくしているらしい。

 そういえば『副官・補佐役に回る人間は“真面目な働き者”にしか務まらない』みたいなことを聞いたことあるような気がする。つまりこのオッサンの多忙の原因は俺か、すまん。


 で、その一つ向こうに座ってるのはベイファン。無表情だが、資料とアイザックを交互に見比べていることから考えるとちゃんと聞いているようだった。もう一つ向こうのラッシュも熱心に聞いているようだし、三人ともちゃんと各担当分野に応じた頭脳派らしい振る舞いをしている。そこから更に向こうにいるイスルギもちゃんと前を向いて視線を外すことはなかった。ハァ、それでこいつらのリーダーやってる俺がこれって……。


 ただ、もうちょい離れてる席はそうでもない。ミセス・ラトナと同じテーブルにいるマダム・バタフライの一同なんて全員明らかにうたた寝している。そりゃ「水商売と諜報」という二つの彼女らの専門分野どっちとも、この講演の内容と無関係なのは疑う余地もない。いや、だからって他人の話し中に寝るのはキャバレー運営側として大丈夫なのか? 客の話はちゃんと聞かないとマズいんじゃ? ま、どうせ「実際の客じゃない」ってオチか。


 イスルギの部下たちやダレマファミリーの生き残りたちもなかなかに酷い状況だ。さっき発言していたケンゴは一応起きてはいる。が、どっからどうみてもアイザックとは無関係な方向を向いていた。つまり集中力がカケラも発揮されていないワケだ。いつもの三馬鹿も全員フネを漕いでいる。別のテーブルのヴィトのおっさんとかティートなんかも言わずもがな。あ、イスルギがケンゴ見ながら眉間にシワ寄せてら。


 ただし、問題なのはそれらを除いたアサゴ組のヤツらがついているテーブルだ。

 まず配置がイスルギの部下たち(つまり将来のイスルギ組)から席を最大限離れた位置に座っているって点で徹底されている。それにさっきタチバナが代表として出てきてあんな風にイスルギと揉め事になったということは、つまり代表者含めて組全体として敵意を向けてきたということで、アサゴ組の組員の少なくない人数にイスルギへの不満が渦巻いているということでもあった。タチバナなんか、前を向いていかにも“意識なんてしてません”って感じに装っちゃいるが、滲み出る殺気が明らかに周りの人間を萎縮いしゅくさせている。元自衛官なんて俺の肩書きが無くてもすぐに感じ取れるくらいのあからさまなものだった。


 こんな爆弾を抱えたまま、俺らはこれからのことを対処せねばならないのか。頭が痛くなりそうだ。



ビリジじジジ、ジギッ……ギィぃジビリりりリリ…………



 一際長くノイズが走ってからスピーカーが止まる。良い加減このノイズもなんとかして欲しいが、今やチーム全体の放送・通信にこのノイズが割り込んでくるらしい。

 “全体で”ってことはもっと大きな何かによる原因があることは間違いない。まぁタイミング的に、その原因というのは小隊のあの電波ジャックで間違いはないんだろうが……。


 と。



『ジリジジッ、ジリッ……おいおい、なぁ聞こえてっか、え? 頼むぜイスルギ、ノンビリ見させて貰ったけどよ、てめぇウチの組でわざわざ喧嘩かけあいの原因作ってんじゃ、ってか原因そのものになってんじゃねぇよ……。もうちょい体を張(ジギ)って組運営できねぇのかよ、なぁ?』


 ノイズが急に、つい最近聞いた覚えのある声に変わって会議室が静寂に包まれた。

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