14:3 - 直面する諸問題の根源にて
さて、相変わらずの鉄錆色の空が濁った青い夕陽で塗りつぶされるころ、俺たちはこないだ地下から兵士が飛び出してきていたあの穴を取り囲むように集合している。これから掘り出すアイテリウムの採掘のためだ。
なお“俺たち”というのはさっきは揃っていなかったアリアドネ号乗組員四人全員やヤクザ連中たちだけでなく、Π小隊のほとんどとか儲け話の気配を感じ取ったらしいそれ以外の新顔とかもワラワラと見に来ていた。今は興味本位みたいな顔していても、どうせどいつもこいつも本当は飢えたカラスか何かみたいな目でこちらを窺っているのだろう、『本当に金になるのか』を見極めるために。
……いや、別に不満なワケじゃない。むしろそうでないなら俺らの見込みは外れてたことになる。
さすがに一週間も経てばあのときノしたヤツらの死体は綺麗に片付けられていたものの、それだけではどうにもならないモノってのもあるにはある。ニオイとかだけでなくて、雰囲気とか気分とかそういうのだ。つまり俺らからすりゃどうにもならない。本物の軍人である小隊メンバーなんかは慣れてるのか何ともない様子だが、他の連中の顔つきは暗い。四人の中でもラッシュなんかは当然のように顔色が悪く見えた。うーむ、マズいな。
そして教師チームのイヴが口を開く。
「えーと、これについては僕が言ったほうが良いかな。調査の結果、ここの地下というかここら一帯の地下深くに大量のアイテリウムが埋蔵されていることが判明したよ。地中からの重力波を解析した結果だからね、間違いないハズ。大会運営の目論みはだいたい当たってたらしい。それこそ参加チーム全てが各自一トンもの鉱物を掘りおこしてもお釣りが来るくらいにはね」
こないだイヴが言いかけていた気がする“良い報告ができるかも”ってこれのことか。たしかに地下に狙ってるモノがあるというのならそれほど助かることというのはそうそう無い、が。
「とはいえ、穴の奥にはかなり巨大な空間が広がっていて迂闊に立ち入るのは危険だっていうのは前々から報告に上がってた通り。そもそも不可解な空洞が多いし、アイテリウムが放つ強力な重力波の影響で地下の地形はとんでもなく不安定になってるみたいだ。このあたりについてはみんなも事前に聞かされてるだろうし、そうでなくてもここから敵対勢力の兵士が出てきたワケだから、+αで余計に危険さも折り紙付きだけどね」
それからイヴは一息吸い込んで、覚悟を決めたように険しい顔で宣言した。
「……だから、今日の初回調査では僕ら教師チームと一緒に地下に潜る“手伝い”が何人か欲しいんだ。もちろん、危険だからこそ何か良いことがあったときの取り分は優先的に回すように取り計らうよ。問題はその良いことが確実に起きるかどうかわからないということ、今は手当として出せる資源がなさすぎてツケ払いになるかもしれないってことかな。正直あまり良い条件とは言えないと思ってる。これでもついて来てくれるって人はいるかい?」
十数分後に決定した地下に潜るメンバーは十二人。
教師チームメンバーである俺、ラッシュ、ベイファン、イヴ、イスルギの五人。それから一回俺と地下に落ちているケンゴ、イガラシ、ヤソジマ、トツカ。それから新顔として一週間前の襲撃のときに俺が助けたことになってる捕虜で亜人のおっさん一名と、この一週間で新たに俺ら一派に参加することになったっていうよく知らないグループから来た男女のペア。正直、この二人は特によくこんな状況で見ず知らずの俺ら“調査班”に混ざろうとか思えたなと感心する、戦力として有難いのには変わりはないが。
敵兵士たちが飛び出して来たハッチのあった跡の穴の前に俺たちは並び立って、皆一様に直径三〜四メートルほどの闇を見つめる。
「では地上からのサポートはΠ小隊の有志の方々に任せるね。残りは見学してても良いし解散してくれてもいい。まぁ、出来ればついて来て欲しかったけど」
そんな風にイヴが解散の許可を出すと、ヤクザ連中はやれやれとでも言いたげにいなくなった。ったく、どいつもコイツも……。そんなとき、俺はふと気がついた。
先週あたりに感じた、あのイヤな予感をまたもややって来てている。
体がブルっと震えたが、コレは武者震いだという古典的な言い訳を自分自身に言い聞かせた。




