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13:4 - 事態収集後の口論にて

 四日目。


「だから言ってるじゃないか。あの蜘蛛ロボットが一機でも残ってれば、それがどんな工作に使われるかも分からなかったんだよ? それをあんな効果範囲が短い手榴弾でチマチマ停止させていくくらいなら、結局は僕がやった方法で一掃するのが一番討ち漏らしが出ないでしょ」


「だからってさぁ! メカニックでもないのにEMPなんて勝手に使って、その上で勝手に仕事を安請け負い……どころか無償提供でコキ使わせようってのが不満なんだってば‼ 別にEMP機雷(アレ)使ったの自体は仕方ないって思ってるよ……でも、それで壊したのはあのヤクザのクラフト四隻! これから全部修理しに行かなきゃいけないことになったコッチの身にもなってよ‼‼‼」


 イヴとラッシュのケンカが未だに続いている。場所は昨日の朝に俺が他のアリアドネ号クルー三人に報告していたアリアドネ号の食堂だ。俺はここにまた三人と、追加でイスルギを集めて会議を開いていた。議題はズバリ“今後について”……のハズだったのだが。

 ところで、俺は目の前のケンカの仲裁に入れずにいた。さすがにラッシュ独力での修理を指図してくるほどヤクザ(アイツら)が外道だとは思いたくないが、もし仮にこの件がヤクザと関係なかったとしても関係ない。そりゃ無償奉仕で働かされるってなったら事情が違うだろう。それくらい俺にだって分かる。

 それに仲裁しようにも……。


「そうよイヴ! アナタ自分が何て言ったか分かってる⁉︎ いくら何でもこの子に無償でアウトローのクラフトにまで乗り込んで修理に行けなんて、それこそ横暴も良いとこじゃない‼︎ だいたい火星のこんな僻地に閉じ込められたヤクザなんて、どれだけ“飢え”てトチ狂ってるか……そんな中にこんな純真で穢れも知らない子を放り込むってのよ‼︎⁉︎ どれだけ怖い思いをさせれば……」


 こんな感じでベイファンが分かりやすく半狂乱なのが事態をややこしくしていた。明らかに怒りのボルテージが臨界点に差し掛かろうとしている……ってか、問題点(ツッコミどころ)そこじゃねーよ。



「ラ、ラッシュちゃんより頭に血が昇ってるね……?」


「あー、待った待った……いや、そこらへんは安心してくれ、えェと……ヤンさん。そもそもウチの組員の中にだってメカニックはちゃんといんだよ。だからさすがに一人に作業全部あてがうようなこたねェし、ラッシュちゃんの身の安全も現状トップの俺が保証する」


「イヤ、そこよ! いま私が一番悪い予感してるのって‼︎ アナタねぇ、割と早い段階からこの子のこと名前じゃなくて“ラッシュちゃん”って呼んでたでしょ⁉︎ 愛称で、しかも『ちゃん』まで付けて! 分かってる⁉︎ 未成年よ未成年‼︎ 対するアナタはお幾つでしたっけ、確か三十代よね‼︎‼︎⁉︎ 馴れ馴れしすぎるったら……‼︎」


 イスルギが(なだ)めようと言葉を尽くしても、ベイファン自身はまるで意に介さない。今まででこそ“こういう場面”にならなかったので表に出てこなかったが、この女にはもはや『持病』と言えるくらいの執着(しゅうちゃく)偏執(へんしゅう)的狂気的パラノイア的なこだわりがあった。

 まぁ要するに、ラッシュの存在である。



 ベイファンは幼馴染であり妹分でもあったコイツに対して並々ならない思い入れを持っていた。さすがにどういう事情でそんなことになったのかは知らんし知ろうとも思わないが、取り敢えず実の姉妹とかそこらの母親なんかよりよっぽど気にかけているのは間違いない。

 だからこそ、俺が二年前にナッシュ家を訪問したときも、怒り狂ってヘソを曲げた爺さんを(なだ)める方法を共に考え出してくれたのだ。ただラッシュ当人が火星に行きたがったから、という理由一つで。


「あ? 今さら呼び名……? それこそ何言ってんだ、コッチゃ生きるか死ぬかってタイミングだぞ。ンなモン気にしてられる状態じゃねェだろーがよ……。へっ、色ボケも大概にしやがれ」


「ッ‼︎⁉︎ アナタ、今の鼻で笑ったみたいな反応何よ‼︎ ラッシュがただの小娘とか言いたいの⁉︎ いい? この子はねぇ……!」


「お前、ラッシュの“虫除け”したいのか売り込みたいのかどっちだよ……」


「べ、ベイ姉……は、恥ずかしいから止まって……‼︎」


 こんな感じで、もはや庇って(?)いる張本人の言葉すら届いているかも分からない。さっきラッシュの直前でツッコんでるのは俺自身だが、俺の言葉なんて十中八九聞こえてもいないだろう。そういうことを見越しての、ほぼ独り言みたいなツッコミだ。

 で、そんなこんなで十五分ほど経過して。


「……はぁ、もう良いわ。それより本題行きましょ」


 あれだけ引っ張った話題を突然打ち切って、ベイファンは話題を変える。


「ハァ、なんだそりゃ……で、取り敢えず現状の確認だったっけか」


 そのあまりに唐突な切り替えっぷりに俺は思わず溜め息をついて、ついでのように俺たちがこの場に集まった目的を思い出した。


「そうだね。口論は置いといて、取り敢えず“教師チーム”としては『現時点で生き残ってる数の把握』と、それから『今後の指導方針」とかも決めないとだから。この後さっそく授業があるワケだしね。……ふぅ、こっちも熱くなってしまった」


「ちょっと何その言い草! このウサ耳中年‼︎」


 それにイヴが長い相槌を返して、ラッシュはその言葉にまた不服そうな反応を示した。

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