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11:4 - 燃え盛る荒野にて

 クラフトの外はというと、思いのほか戦場の様相を呈している。

 確かに視覚的には暗闇だ。軍用常夜灯の透明度の高い赤い光といえども限度はある。だが北の方角の、真夜中に覆われた砂礫(されき)の大地に気配がした。構成員がざわめきつつ進んでくる一団、たぶん間違いなく先ほど撃ち殺した荒くれと似たようなヤツらの集団だろう。


「ライト点灯!」


 リュー軍曹の声の合図でザンッ、というスポットライトのひさしを開く音があたりに(こだま)し、周囲の常夜灯とは比べ物にならないほど強烈な光であたりが照らし出された。光の向こうからはというと小さめのどよめきこそ聞こえてきたものの、相手方もこの展開を予想してはいたのかそのパワードスーツにレーザーライフルの武装集団の反応は薄い。どうやら小隊程度の規模(だいたい二五人~五〇人程度の規模)はあるようだ。……つまり今の俺ら三人の十倍以上の戦力差ってか、上等じゃねーか。



 と、向こうの足が急に止まる。先頭のヤツが耳元を抑えたところを見るに、通信で指示か何かが入ったようだ。そして、(せき)切ったようにヤツらは口々に叫びながら突進してきた。

 しかし、だ。俺のやることというのは先ほどと特に変わらない。というかさっきの赤い常夜灯なんかより今の方が明るいので、標的を撃つぶんには気が楽ではある。手元もよく見えるしな。


 特に感慨もなく銃を両手で構えて俺はトリガーを引いた。

 目標正面一人目、一五メートルほど先・狙撃・処理済。

 その左脇を走ってくる二人目、一三メートルほど先・狙撃・処理済。

 さらに二メートル左脇に三人目、一二メートルほど先・狙撃・処理済。

 そこから右に三メートルに四人目、九メートルほど先・狙撃・処理済。

 そして空の弾倉を捨ててグリップと一緒に握ってる次の弾倉を装填。


「っだぁー、くそッ!」


 そろそろ一本調子だと無理が出てくる頃合いか。いくら面倒でも——


「やっぱ動かねーとダメだわなァ⁉︎」


 俺は姿勢を低くした上で向かってくる荒くれの脇へと飛び込んだ。ついでにジャケットの下の背中・腰の位置に隠していたレーザー式拳銃をもう一丁抜いておく。



 左手に握った拳銃を早速上体の下から右に向かって突き出して、地面を蹴る最中だった荒くれの左足を撃ち抜く。練度もなっていないシロート丸出しの荒くれが着てんだ、パワードスーツとはいえどうせ安物、特に膝の関節部分の裏側とくれば。


「いッグぁ!」


 銃弾が膝を貫通、目標はよく分からん声を上げて転倒。膝を抑えてのたうち回っている。


 続けて俺は地面をスライディングして目線をさらに低くした。荒野とはいえ地表にあるのは大量の砂粒だ、勢いに任せて体は案外滑ってくれる。

 で、二丁拳銃を両手に握っているとなればこんな動きをしてやることはたった一つというヤツで、滑りながら周りに向けて気が狂ったようにトリガーを引きまくった。命中率なんざ度外視だ。


「かハぁッ」


「ぅあッ⁉︎」


「ッグふっ」


 地面を尻で滑ったままの勢いで俺は地面を蹴り、しゃがんだ姿勢のまま足の裏をしっかり地面につけて周りを見る。命中は三発。つまり戦闘不能も合わせれば俺が撃ったのは八人。

 全体からすればたかだかその程度ともとれるが上々の戦果ではないだろうか、ってそんなこと嚙み締めてる場合じゃない。視界の端、向こうのほうから俺の足下を銃口が狙っている。


 俺は今の姿勢から地面を蹴って宙に飛び上がった。上手くレーザーが撃たれるタイミングを外せたらしく、そのまま光の矢は地面に突き刺さって焦げ跡だけ残して弾ける。弾がいくら高速になろうと光速になろうと撃ち出すのはけっきょく人間。相手が義体(サイバネ)で反応速度そのものを強化してない限りは大した脅威ではない。そしてそんな義体(サイバネ)は脳機能に深く関わるような高額手術なので、こんなとこに来るようなならず者がやってるハズもない。まぁ、例外になるような変な奴がいないとも言い切れないのがならず者・アウトローの怖いところではあるが。

 飛んだついでに空中で体をひねって、そのまま鉛玉のお礼をヘルメットの下の方に叩き込む。弾丸が刺さったのは喉の下あたり、処理済。



 ようやく周囲が静かになったところで、ズザッと地面に重いものが擦れる音が聞こえた。あっという間にここまでの数の味方が目の前で片付けられて怖気づきでもしたんだろう、見ると相手方の荒くれの一人が後ずさりしていた。ちょっとだらしない体型の兵士だ。俺と目が合って覚悟が決まったのかはたまた観念したのか、半狂乱ともいえるような叫び声をあげてレーザーを乱射してくる。


「うああああああああああっ‼︎‼︎‼︎‼︎」


 この絶叫がアイツにとっての気合なのか恐怖なのかはわからないが、ともかく俺はこういう手合いが実は苦手だ。相手は死に物狂いなので必死に目的を果たそうとする割りに行動に脈絡がないし、そのうえ次の動作も読みづらいことこの上ない。というかまるで読めない。今の状況でも、相手の手が震えているので弾道はメチャクチャ、しかもレーザーなので弾速は光速なワケで見えるのは一瞬、おまけに発砲音もやたら小さいときてる。正面突破は危険だろう。



 俺は左に向かって駆け出して、足では大きく右に旋回して走りながらも右手のほうはハンドガンから弾倉を排出。そして左手は腰、安全装置なんかに気を払う余裕はなくベルトのところに銃身を差し込んで手を空ける。そして懐から次の弾倉を抜き取って乱暴に再装填、しつこく狙ってくる半狂乱野郎に照準を定めた。

 一発、二発。さすがに走りながらだと狙っても命中率は下がるか。とはいえ。


「テメェ! 来るな、来るなぁ‼︎」


 俺は急速に半狂乱野郎に近付き続け、ヤツのほうは相変わらず当たらないレーザーガンのトリガーを引き続ける。不意に左の二の腕あたりが熱くなった。レーザーがかすったらしい、が。


「……ってーな、ンの野郎」


 俺は左足で野郎に足払いを叩き込んで地面にノした後、銃口をヤツの眉間に突きつけながら吐き捨てる。このとき、ヤツの膝裏や足首には計三発の弾丸がとっくにお見舞いされた後だった。

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