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11:2 - 苦し紛れの尋問室にて

「疑うのは勝手だが、日本でもゲームセンターに行きゃガンシューティングなんていくらでもある。特に最近のはリアルさとか精度が段違いだからな」


 俺は苦し紛れの言い訳を口にした。あのときのケンゴの言い訳を丸パクリで使うようなタイミングがまさかこうもすぐに訪れようとは。だがあの話も俺ですら誤魔化せなかったのに、目の前のこんな抜け目なさそうな男を誤魔化せるハズもなく。


「フザけるな、経歴含めデータを詐称していた疑いが——


「アレックス! アンタ何やってんのよ」


 おっと、助かった。もう一人のほうの軍曹がリュー軍曹を呼びに来たらしい。えーと名前はたしか……。


「あら、例の日本人の……たしかアキ、ユキ? だったわよね? 一緒に飛び出してきちゃったの?」


 俺のほうが名前を思い出せないでいると、向こうは俺の名前を当ててみせた。あ、マズい……と反射的に思った束の間、リュー軍曹が事態を説明し始める。



「いや、本当にこいつがただの日本人なのか怪しくなってきたぞ。向こうの襲撃者の死体の山が見えるか? あれは全部そいつが()った。撃ち損じ無しでな」


「え、はぁ⁉︎ まさかそのハンドガン一つで⁈」


 “俺が全員を始末した”という事実はどうもアメリカ人たちには衝撃らしい。まぁ確かに、普通の日本人なら銃を撃つ段階でいくつか問題が出てくるだろうが。


「どんな名手でもそんなハンドガンであの命中精度を出すのはあり得ない、それを銃規制で実弾なんて触り慣れてもいないハズの日本人が簡単に全弾命中させた。我々に申告したあの経歴は虚偽かもしれない」


 眉間にしわを寄せながらリュー軍曹は一通りの説明を終えた。



「なるほどね……アキ、って呼ぶわね? 申し訳ないけど事情聴取させてもらうわ。さっき自己紹介したけどもう一度、アタシはフローラ・アビガイル・ルシエンテス・ガルシア。短くフローラ・ルシエンテスで覚えてもいいし、何ならフローラ呼びでも構わない。……あ、スペイン語由来の名前には馴染みがないかしら? 『ルシエンテス』のほうが優先される苗字で『ガルシア』が二番目の苗字ね。そ、スペイン語由来だと苗字が二つもあるの」


 良かった助かった、ちゃんと自己紹介をしてくれた……ってそういう場合じゃない。ついでにそんな雑学はたぶん二度と役には立たないだろう。


「フローラ、あまり話しかけるな、どうなるかはまだ分からない。他陣営からのスパイのようなら最悪殺すんだぞ、情を移す真似してどうする」


 こうして俺は生きた心地もしないまま、“希望通り”にΠ(パイ)小隊のクラフト内部へとついていくことになった。





 気密式の重いドアの向こうは妙に鉄臭く感じる。嗅いだまんま金属由来の匂いだといいんだが。


 奴らのクラフトの内装はというとハリウッド映画で死ぬほど眺めてきたような光景だった。つまり、赤い夜間用電灯に照らされた壁は頑丈そうな黒っぽい金属板で覆われていて、床もやたらとゴツい。そんで俺や小隊の隊員の、カツカツと鉄を打ち鳴らすみたいな足音が鼓膜に食い込む。機能を優先しすぎてもはや居心地なんて考えてもいないような、見るからに“軍用”という感じの内装だ。


「軍曹、そちらの方は?」


 見張りの一人らしい兵士がリューのほうの軍曹に話しかける。そりゃ、俺を連れてたら目立つわな。


「外部の人間だが、コイツはこれから俺とルシエンテス軍曹の二人と話をすることになった。外からこの部屋の扉は開けるな」


「サー、イェッサー!」


 リュー軍曹がそう明かし、兵士は二つ返事で道を空ける。けっきょく状況が良くなることはないまま、俺は“尋問部屋”とやらまで直通で通された。

 カビ臭い小部屋に入った途端に俺は後ろから蹴り飛ばされ、よろけた俺はそのままパイプ椅子に括りつけられた。顔に懐中電灯の、これまたやたら強い光が向けられる。



「さて、まずは確認だ。さっき問い詰めたとおり、お前は日本人かつヤクザの一員じゃないと申告してきたな? しかし、それならあのハンドガンによる射撃の腕はどう説明する? 言うまでもなくハンドガンは撃ったときの反動がキツく、撃ち慣れていないとすぐ照準がブレる。特にレーザーやパルスではなく火薬で実弾を撃ち出すそのモデルではな。なのにお前は全弾命中させた。疑いの目を向けるには充分だろう」


「待て、今さら状況の確認かよ?」


 俺は後ろ手にパイプ椅子とロープの感触を感じつつ、リュー軍曹を逆質問で挑発してみる。


「尋問ってね、手順が決まってるのよ。何にしても、あまり必要以外のことは喋らないことね」


 リュー軍曹の代わりにフローラ……軍曹? が答える。さっきまでの親しげな雰囲気は打って変わって冷たい響きの声だった。


「外だと愛想よくしてたけどここでは違うわ。いえ、むしろコッチが素かも。アタシ割と大雑把な性格でね、あんまり面倒だったり時間のかかることは好きじゃないの」


「おいフローラ、あまり羽目を外すな」


 リュー軍曹がぴしゃりとフローラ(何となく、彼女に軍曹とつけるのを俺は諦めた)をたしなめる。いや、そこじゃない。……“羽目を外す”?



「何でよ、たまには良いでしょ? 娯楽なんてない場所なんだから」


 娯楽、明らかにこんなタイミングで使われるべき単語ではない。それは確かだ。

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