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28:4 - 上空よりめり込んだ純白の内にて

「グッ……ん、んぬ!」


 ルチがスラスターでクラフトの位置を左右に操作して次々に射撃を躱した。そりゃ空中で船体をひるがえすクラフトにだって相当な質量がある。こんな無茶苦茶な横方向の動きを繰り返せば、普通なら真っ直ぐ落下なんて出来やしないだろう。


「オラァァぁァッぁぁーーー‼︎‼︎‼︎」


 しかしそれも本来なら、だ。今はアデリアの操作によりブースターの噴射はむしろ船体を地面へと加速させていた。となれば当然、時間だって早まる。この調子だと地面まであと一分どころか、もう四五秒もないかもしれない。

 素早く砲塔の狙いを定めたイスルギの指示を飛ばす。


「おいケンゴ・ヤソジマ、今だ! アリアドネ号(クラフト)撃ちまくれ‼︎ どうせアレに(タマ)撃ち込める機会なんて二度とねェんだ、派手にいくぞ‼︎」


「あいよアニ……! じゃねェんだった、えーと」


「ンなもん言ってる場合かよ、はよ撃てや‼︎」


「あーもうめんどくせェ、呼び方はもうこの際アニキでいいって‼︎ ったくイマイチ締まんねェな……」


 右翼左翼それぞれのトリガーを握るケンゴ・ヤソジマが漫才みたいな掛け合いで応え、無駄口を叫びながらも砲撃を打ち込んでいった。一方、イスルギも全てを諦めたような軽口を漏らす。


 正八面体の船体は真正面から光速で飛ばされるレーザーをすんでのところで躱した。レーザーは光速であり着弾までのタイムラグがない。ということは、そもそも砲塔の向きさえ気をつけていれば当たらないという理屈は俺にだって分かる。イヤ、だからってこうも綺麗に避け続けることが出来るのか? 何にしても舵取りのアデリアかルチの動体視力が()()()()。恐ろしいコンビだ。

 ひし形クラフトはアデリアのブースターさばきにより螺旋を描くように落下していき、ルチのスラスターさばきで錐揉きりもみ回転のように身をひるがえし続けて地上からのレーザー迎撃を次々と避けた。もはや船内の人工重力でも相殺そうさいしきれないほどの勢いで体は左右に揺さぶられる。さすがに視界に入れてる余裕はいま無いが、座席についていないミセスやその他の連中は姿勢を保つのに大わらわってヤツだろう。



 俺はというと、コマンダーのための艦長用座席の位置で足を踏ん張りながら正面モニターという名の壁を睨みつけている。うぇ、揺れすぎで酔いそうだ。かといって俺がここでダウンするワケにもいかない、真っ直ぐに前を見据みすえる。モニターの表示によると地面までの距離はとっくに残り五〇〇〇フィート以下、さっきの上昇時の勢いを考えるとあと二十秒あるかも怪しい。しまった、無駄な会話を悠長に聞いている場合ではなかった。

 地上及びアリアドネ号まで、残り五〇〇〇、四〇〇〇、三〇〇〇、二〇〇〇……


「全員、はやく近くの何かに掴まれ‼︎‼︎‼︎ あとブレーキ‼︎‼︎‼︎」


 果たして、正八面体のクラフトの角が突き刺さったのは地面ではなかった。モロにめり込んで派手にブッ壊したのはアリアドネ号の艦橋ブリッジ、つまり一番人が集まっていただろう場所。意外にも爆発とかは無かったものの、操縦席でもある艦橋ブリッジに天井から突っ込んだとなれば修理もクソも無さそうだ。つーかむしろこっちのクラフトに損傷が無さすぎる。どんだけ頑丈なんだよコレ……。




 ただ幸運なことには、さっき咄嗟とっさに俺が飛ばしたブレーキの指示をアデリアが聞きつけていたらしい。ひし形クラフトが艦橋ブリッジを完全に破壊しきる前に、アイテリウムコアからの重力波が船体を空中に押しとどめていた。早い話が、派手にぶっ壊しはしているものの直せなくはない、多分。くるり、と空中でクラフトは回転して姿勢を水平にした後に船内の重力制動が完全に停止する。

 さーて、最後の仕上げってヤツだ。


「おし、総員立て! ……んじゃ、行くぞ」


 俺は自分の愛銃エモノやら何やらを急いで担ぐと、急いで艦長席から飛び出して出入り口に向かった。殺気立つウチの顔ぶれを引き連れて、正面切って乗り込む。

 アイツら風に言うなら、襲撃カチコみといこう。

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