26:6 - 立ち所に消える吃音にて
「なぁ、ちょっと待て。ンなモンだけ直して動かしてもそもそも操縦席まで行けねーんだからどうにもなんねーんじゃねーのか、操縦桿なんて必要ねーとか言うんなら知らんけどよ……」
「そ、そのまさか……って言ったら?」
俺の問いかけに返しながら、急にルチの眉毛がピクっと持ち上がった気がした。
「かか、簡単に説明、するとさ。このク、クラフトの仕様というか、いやもっと根本的な“構造”のおかげで操縦席使わなくてもある程度はブースター動かせるんだよね、もちろんクラフト全部のは動かせないと思うけど。でもここのアイテリウムの制御機構を修理さえしちゃえば少なくとも機体下部方向のブースターだけでも動かせるハズなんだ。もちろん普通の乗り物なら一箇所の動力源から機体各部に動力を伝達させなきゃだからそんなことは出来ないけど、でもこのクラフトに限って言えば違う。だってこんな小さいアイテリウム結晶一つでこのクラフト丸ごと動かせるエネルギー生み出せると思う? この機体サイズでこの結晶の大きさなら全部で五〜六基は要るよ。それで機体の形状が正八面体ってことはたぶん、正八面体の角のところにそれぞれにこのブースターが設置されてる。エネルギータンクみたいな一点からだけじゃなくて、動力源のアイテリウム結晶そのものごと各部に内蔵して、ね。なら簡単、今からコレを動かせば……」
「イヤ待った待った待った! 吃りまで急に消えてんじゃねーか……でも今はまぁ無視だ、もっと簡潔に頼む。その下の小さいブースターだけを動かしてどうすんだよ?」
俺はたまらずいきなり流暢になったルチの長台詞を止めて、それから改めて意図を聞き出す。この明らかに小さな機体下部のブースター一基を動かしてどうするって?
「え、あ、ごご、ごめんなさい……でッでも動かせるのは間違いない、と思うし、もう動かせるハズだよ。た、確かぁにこのブースターだけ動かしてもクラフトはう、動かせない。でも、っそれだと、そもそもこのク、クラフトを動かすこと自体が難しくな、なっるよね……? だ、だからこのクラフトの各部全ての、ブースターは一つの制御プログラムで繋がってて、そこからハッキングできれば数珠繋ぎ的に全部調整できる“構造”になってるの。だからこの末端部からブースターを動かすだけでクラフト全体を浮かせられるよ……私なら、そこに喰らいつける」
……どうも、この少女は自分の得意分野になると喋りが特別に流暢になる性質があるらしかった。現に今の説明も途中から吃りが復活しては消えている。イヤ、そんなことより何だって?
「先に言ったでしょ? このクラフトは“もう動かせる”ハズだよ」
また流暢に戻った口調でルチはあっけらかんと言い切った。
しかし。
「ッうらァ‼︎‼︎‼︎」
そのセリフを言い切った一瞬遅れて、入り口のバリケードの方から大声が轟く。もはや見るまでもなく、打撃音やら破砕音と共に防衛の要だった障害は突破されたんだろう。
「なぁ、ちょっと待て。ンなモンだけ直して動かしてもそもそも操縦席まで行けねーんだからどうにもなんねーんじゃねーのか、操縦桿なんて必要ねーとか言うんなら知らんけどよ……」
「そ、そのまさか……って言ったら?」
俺の問いかけに返しながら、急にルチの眉毛がピクっと持ち上がった気がした。
「かか、簡単に説明、するとさ。このク、クラフトの仕様というか、いやもっと根本的な“構造”のおかげで操縦席使わなくてもある程度はブースター動かせるんだよね、もちろんクラフト全部のは動かせないと思うけど。でもここのアイテリウムの制御機構を修理さえしちゃえば少なくとも機体下部方向のブースターだけでも動かせるハズなんだ。もちろん普通の乗り物なら一箇所の動力源から機体各部に動力を伝達させなきゃだからそんなことは出来ないけど、でもこのクラフトに限って言えば違う。だってこんな小さいアイテリウム結晶一つでこのクラフト丸ごと動かせるエネルギー生み出せると思う? この機体サイズでこの結晶の大きさなら全部で五〜六基は要るよ。それで機体の形状が正八面体ってことはたぶん、正八面体の角のところにそれぞれにこのブースターが設置されてる。エネルギータンクみたいな一点からだけじゃなくて、動力源のアイテリウム結晶そのものごと各部に内蔵して、ね。なら簡単、今からコレを動かせば……」
「イヤ待った待った待った! 吃りまで急に消えてんじゃねーか……でも今はまぁ無視だ、もっと簡潔に頼む。その下の小さいブースターだけを動かしてどうすんだよ?」
俺はたまらずいきなり流暢になったルチの長台詞を止めて、それから改めて意図を聞き出す。この明らかに小さな機体下部のブースター一基を動かしてどうするって?
「え、あ、ごご、ごめんなさい……でッでも動かせるのは間違いない、と思うし、もう動かせるハズだよ。た、確かぁにこのブースターだけ動かしてもクラフトはう、動かせない。でも、っそれだと、そもそもこのク、クラフトを動かすこと自体が難しくな、なっるよね……? だ、だからこのクラフトの各部全ての、ブースターは一つの制御プログラムで繋がってて、そこからハッキングできれば数珠繋ぎ的に全部調整できる“構造”になってるの。だからこの末端部からブースターを動かすだけでクラフト全体を浮かせられるよ……私なら、そこに喰らいつける」
……どうも、この少女は自分の得意分野になると喋りが特別に流暢になる性質があるらしかった。現に今の説明も途中から吃りが復活しては消えている。イヤ、そんなことより何だって?
「先に言ったでしょ? このクラフトは“もう動かせる”ハズだよ」
また流暢に戻った口調でルチはあっけらかんと言い切った。
しかし。
「ッうらァ‼︎‼︎‼︎」
そのセリフを言い切った一瞬遅れて、入り口のバリケードの方から大声が轟く。もはや見るまでもなく、打撃音やら破砕音と共に防衛の要だった障害は突破されたんだろう。
幸い、このエンジンルームは隠れる場所が多くある。
当然このまま発砲を野放しにすればそのうちブッ壊され尽くしてエンジンを動かすのにも無理が出てくるだろうが、少なくとも今はそんなこと気にしてるヒマはない。
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ
引っ切りなし、引っ切りなしの銃声が響いていた。音の重なり具合とかから考えても、多分タチバナだけじゃなく周りのヤツらも引鉄を引いているのだろう。こうも音が重なると銃声の迫力もどこか安っぽく聞こえてくるというものだ。ちょうど風船の破裂音みたいな……。
「オイどうすんだアキ! さっき投げてた閃光手榴弾まだ他のあんのか⁉︎」
「あるわけねーだろ、全部投げた後だっての‼︎ 大体いま投げても、アイツらのとこまで届く前にそんなモン撃ち抜かれて爆発するわそもそも射撃で目も耳も慣れてるから効きゃしねーよ‼︎」
たまたま同じ地点に駆け込んでたケンゴが大声で聞いてくる。こっちも銃声に掻き消されまいと喉が枯れかけるくらいの叫びで返した。もはや耳が麻痺しそうだ。
確かにもう打つ手は無いに等しい。そもそもさっき隠し持っていた閃光手榴弾は奥の手だったし、いま言った通り投げたところで意表をつくことも出来ないだろう。むしろこの状態で出来ることって何だ? いや、今までもこんな場面ならいくらでもあった。今さらどうした、考えろ!
と、視界の奥、つまり俺らが隠れて銃弾をしのいでいる側の奥の方に白と黒と赤の色のカタマリが見える。別働隊として先にこのフロアに連れて行かれてたウチのメカニック、ラッシュだ。元々ここは遮蔽物の多さのおかげで奥に行けば行くほど届く銃弾の数が少ない。それで今はあの位置で縮こまっているようだった。確かに、この中で運動能力が一番優れているのは鶏人種、それも軍鶏の血を引くアイツだろう。その上でさらにメカニックなのだから、ミセスに声をかけられたときにも“機械だらけのここでは自分がやるしかない”なんて判断したのかも知れない。しかし……。
「……賭けるしかねーか」




