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26:4 - 暗がりに瞬く砲火にて

「えーと、んじゃ次はマリア行けるか? ケンゴにヤソジマ、両サイドに援護射撃頼む!」



 俺はそういうと階段入り口のギリギリ見えるか見えないかの角度から向かって右の通路をレーザーのほうで撃った。ただでさえ派手な火花の中に新たな花火が咲く。……向こうの連中の動揺したような叫び声が聞こえた。

 ケンゴとヤソジマは一瞬顔を見合わせてから流れるように身を乗り出して、それぞれ右のほうにケンゴ、左のほうにヤソジマが拳銃を構えて間髪入れずに引鉄を引きまくる。

 フロウ=ライツの連中が例えアサルトライフルやらサブマシンガンを抱えてようと、引鉄を引くのは結局人間だ。要するにビビってては話にならない。それでも有無を言わせず連射してしまえば簡単だったろうが、そもそもそう出来ない理由まである。アイツらは向かい合っているからだ。まして初対面に近い日本から来たアウトローが指揮官として自分たちを見ている中で友軍誤射(フレンドリーファイア)なんてヘマは死んでもゴメンだろう。で、唯一そんなリスクもなく攻撃出来る背後からの連中はティートの手でさっき気絶させられていた。



「オラオラオラ、とっとと来いよォ‼︎  テメーらの持ってるそりゃ重石おもしかなんかかぁ⁉︎」


 明らかに調子に乗っているケンゴがいかにもな口調で相手方を煽る。ヤソジマもヤソジマでやたらハシャいでいるらしく、銃声を縫って聞き分けられるくらい歓声がデカい。というかケンゴの声から察するに、こちらへの発砲は無いらしかった。それをしっかり確認した上で俺はマリアに手を差し出す。


「なぁアンタ、名前マリアで良かったよな⁉︎ イケるか、今のうちにこっちだ‼︎」


 ダメだ、やっぱ銃声がデカすぎてケンゴに負けず劣らず声がデカくなってしまう。ただ、またいつぞやのラッシュみたいに怯えられるんじゃないかと思ったら案の定だった。


「え、え? まだそんな、あ、危ないって……」


 マリアは踏ん切りがつかない様子でマゴついている。……くッ、残念ながらここでダラダラ雑談してるヒマはない、俺は有無を言わせずに手を引っ掴んだ。


「うぁっ、ちょっ⁉︎」


「言ってる場合か! 急げ!」


 廊下の幅は大体三メートルかそこら、もちろん撃たれる心配はゼロじゃない。が、俺はマリアを抱え上げて(つまり俗にいうお姫様抱っことかいう形で)走り抜けた。期せずしてこんな形になったが事態が事態、さすがに文句は出ないと思いたい。

 俺が駆け抜けた後、ケンゴ・ヤソジマも拳銃を構えつつ俺の後ろについて廊下の対岸へと渡った。壁に登って貼り付いていたティートも足下の壁を蹴って廊下の中空を越えて飛び込んでくる。六人全員渡り終え、背後を気にしながらも俺らは下にあるっていうエンジンルームを目指すことにした。




 エンジンルームの構造は単純で、階段を降りた先のフロア全体に跨ってエンジンが設置されているだけだった。なので、部屋ルームというよりはエンジンフロアと言った方が正しい。

 クラフトが正八面体のひし形の構造なんだから、下フロア自体が屋根裏部屋を逆さにしたみたいな空間になっていて、つまり下に行くほど床の面積も狭くなる。増して上に居住エリアなんかがあるとなれば、その分だけ天井が低く狭くなって床面積は余計に小さくなるワケだ。要はクラフトのメインエンジン一基と電力を伝えるケーブル、そして壁の中を通って下に降りていく階段だけで空間はギチギチだった。


「野郎、ブッ殺す‼︎」


「いちいち叫ぶとか素人かよ……んじゃ、お先ぃ」


 アデリアは階段の構造を一眼見ると、俺らを追って駆け込んできたフロウ=ライツのヤツらの叫びにツッコミを入れる。そして俺らにそう言って階段の手すりを乗り越え、そのまま翼膜を広げて宙に身を躍らせた。ティートも壁に張り付いて後を追う。

 階段は踊り場で一八〇度向きを変えて正八面体の傾斜に沿って下フロアへと降っている。そして踊り場を含む階段の空間内部は吹き抜けになっていて、つまり上の階段入り口からちょっと身を乗り出せば向こうは俺らを狙い放題。だから俺らが階段を降りる途中、後ろからの追っ手連中は俺らの背中を刺そうと階段入り口へと殺到する。


「あのコウモリ女、横着かましやがった! 撃ち抜いてやる‼︎」


 が、そこで射撃三発がヤツらを襲った。

 俺・ケンゴ・ヤソジマの三人でヤツらの影を狙う。こっちだって狭い入り口に人が集まるのが分かりきってたからこそ、銃を入り口にピッタリ向けて構えながら進んでいたってワケだ。壁に張り付いていたティートもすかさず裏拳で拳銃を弾き飛ばし、金属同士の擦過さっかで瞬きみたいな火花が舞った。アデリアも着地してから流れるようにカランビットナイフを真上に投げて、発砲音でビビって頭を仰け反らせた相手方の一人のアゴすれすれを掠めて天井に衝突、でもってヤツらの頭上に力なくナイフは墜落するが当然上から降ってくるナイフなんて凶器にしかならない。

 そりゃ来るのが分かってんだから、こっちだって対策はすればいいだけの話。結局こっちの銃撃の後はお互いに銃口を向けたままの状態に陥ったワケだ。

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