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24:5 - 暮れてゆく虐殺の地平にて

 ここで墜落したクラフトを襲って何になるのか、という疑問が俺の脳裏をよぎる。ただ、その答えは思いのほか早く結果が出た。墜落機の左右の直角、バルカン・レーザーの各砲台が回転して空中を狙い始めたワケだ。つまりヤクザは空中に浮かんでいた二機の片方は固定砲台として使った方が勝率が高いと踏んだらしい。もちろん、やられた役立たず達に抵抗されないよう先に始末した上で。


『おーおー、協力してんのか殺しあってんのかどっちだよ……節操ねぇな』


「喋んなフチザキ! 乗組員クルーの集中力が下がる!」


 呆れつつも面白がるようなフチザキに取り敢えず一声叫んでおいて俺は前を向きなおす。残りの一機は宙に浮かびながらこちらを見下ろしていた。それから左右両カドの四門の砲台をガシャガシャと必要以上にうるさく、そして瞬く間に展開してこちらを威嚇する。


「オイ前・下から来んぞ! アデリア、頼んだ‼︎‼︎‼︎」


「あーもーーー、馴れ馴れしいってのオッサン!」


 アデリアは一言吠えると操縦桿を左に思い切り傾けた。クラフトは弾かれたように左へと吹っ飛び、そのまま相手のフロウ=ライツ機を中心に円を描くように鮮やかなを描いてレーザーを掻い潜りバルカン砲の弾を避ける。前方と下方から伸びて交差する射線も引きずられるように俺らを追うものの、アデリアは急速に相手のそばに飛び込んでから、下方のクラフトに睨みを効かせつつも急速に跳ね上がって真上方向に急激な放物線を描くことで更に避けた。

 この時、直線状に地表の砲台からこちらまでを結ぶと俺たちの乗るほうの正八面体クラフトはフロウ=ライツ機にちょうど隠れる位置だ。つまりこの瞬間、俺たちを狙えるのは空中のほうの一機しかなく、その一機は俺らの乗るクラフトの俊敏さに置いていかれている。そのため今このクラフトの前には無防備な獲物しか……いや。



ガッッッダンッッッッッッッッ



「っグあっ! おいスラスター担当はルチっつったか、ンだよ今の急上昇⁉︎ 舌噛み切るかと思ったぞコラァ‼︎」


「はぁ⁉︎ アンタこそルチに怒鳴んなっての、前のモニター見てねーの⁉︎ 向こうのアリアドネ号(アンタらのクラフト)から狙われてたんだって! あのままだったらあーしらレーザーで焼き殺されてたんだけど⁉︎」


 ……今の効果音で何が起きたかというと。

 俺たちの乗ってるクラフトの船体が跳ね上がって落下していく途中、ルチがスラスターを最大出力で噴き上げて船体を再び上昇させることで、真横から飛んできたレーザー射撃の直撃を避けたのだ。そんな急な動きをすればあんな音も鳴る。

 ブースター程ではないにしても、スラスターも姿勢制御するためにかなりの出力が保証されていた。あとそれと、さっきの会話はケンゴとアデリアのもので……っつーかアデリアのルチに対するあの(過)保護者意識は何なんだ?



「は? Π(パイ)小隊が撃ったのか⁉︎ アイツら今は協力してんじゃねェのかよ!」


 状況をようやく飲み込めたらしいヤソジマが叫ぶ。


「……っ、アイツらフロウ=ライツとやり合ってるだけで、元は俺らともやり合う予定だったんだぞ! “敵の敵は味方”とはいかねーだろ」


 俺はさっきうっかり噛んだ舌の先をヒリつかせながら言い返した。痛い。

 その一方、地表のほうでは再び浮き上がった俺らを撃ち落とそうと固定砲台が狙いを付け始める。墜落したクラフトからレーザー・バルカンの左右砲台四つが旋回して真上を向き、そしてまた真横からの狙撃で向かって左半分の砲台が吹き飛ばされた。直撃に従って火の手まで上がる。Π(パイ)小隊だ。


「まぁ、あんな感じで味方にはならんでも利益にはなるタイミングもあるってだけだ、あんまアテにはしないでいこうぜ」


 とりあえず、俺は後に続く言葉でその後の展開を誤魔化す。俺自身が間違ったわけじゃないが、言ったそばからこういう感じの展開になるのはバツが悪い。ただでさえクラフトの中は滅茶苦茶だってのに。

 これまでで何度目かの急上昇・急降下に見舞われているこのクラフトの設備自体はまだ後ろのゲート周りくらいしか壊していない。いないんだが、問題はそれ以外の何もかもだった。まず重力制御でまだマシになってはいるものの、激しい上下運動と振動で相当揺さぶられているのが一つ。あといくら固定して崩れてこないとはいえ元々の乗組員たちの死体の山から漂ってくるイヤな匂いやら何やらが一つ。その死体それぞれから流れて設備にベッタリ垂れた血でヌルヌルなのが一つ。

 他にも色々と問題だらけでストレスはエゲツない。


 それぞれ役割があって集中する別のモノがあるヤツとかはまだいいが、例えば高齢のミセスあたりが心配になってくる。さっきから悲鳴すら聞こえてこないし。


「船体右側にレーザー被弾! 砲台は無事!」


 でもそんな心配を余所に、オペレーター席のベイファンからの被害報告が船橋ブリッジ中にこだまする。さっきの下からの砲撃は半分がΠ(パイ)小隊の砲撃で潰されたとはいえ残り半分は健在だ。撃たれた分は喰らうしかない……なら簡単。




「ケンゴ、ヤソジマ! 下のクラフト狙って吹っ飛ばせ‼︎ 早く‼︎」


 向こうから狙った攻撃が当たるのであれば、当然こちらから撃っても当たるのは目に見えている。二人のヤクザに操作される四つの砲台は唸りを上げてほぼ真下の地面の、先ほど墜落したクラフトにありったけを吐き出した。正八面体が内側から爆発を起こして、完全な撃墜が一機。

 しかし、そうこうするうちに浮いてるほうのクラフトがこちらを向き、正八面体の左右にある照準をこちらに定める。ほぼ上と下、合わせて八つの射線が交錯して。


「撃てぇぇぇッッッッッ‼︎‼︎‼︎」


 俺の絶叫と共に、宙の二つのクラフトはお互い急接近しながら狂ったように撃ち合った。

 遠くのアリアドネ号のほうからも後期とばかりに、Π(パイ)小隊が俺ら諸共消し去ろうと艦砲射撃の群れを送り込んでくる。が、落下の加速度で急接近する二機に遠方から狙いをつけるのでは間に合わない。俺の、というか恐らくお互いのクラフトに乗り込んでいる全員の目にはこの時間がスローモーションに見えたハズだ。

 結局お互いの船体は正面衝突して強烈な揺れ。

 二機はその場で激突・爆発してそのまんま、錐揉きりもみ回転しながら叩きつけられるように褐色の地平へと墜落した。

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