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24:1 - 衝突後の現状確認にて

テール・トゥ・ノーズ(tail to nose)

:前を行くマシンの後部テールと後を追うマシンの先端部ノーズが擦れ合うほどに接近することをいう。後続車の受ける空気抵抗が減るため、前後の順位が入れ替わりやすい白熱した状態。バンパー・トゥ・バンパー(bumper to bumper)とも。なお英語圏ではNose to tailとなる。

 不意に壁の外から爆発音。壁を硬い何かが擦れてゴリゴリと削っていく音も聞こえた。

 いやまぁ、別に不意でもなんでもないか、さっきタヴァナー少尉が『相手してやる』とか言ってたし。大方あの三機の正八面体クラフトとアリアドネ号で撃ち合いしてるんだろう。……って待て。つまりアリアドネ号が攻撃受けてるっつーことでもあるのか、こっちも急がなくては。



「なーアキ。結局、外のクラフトって一回襲撃してきて小隊に撃墜されてたアイツらだよな? ってこたぁよ、俺らが地下に潜ったときはいなかったけど、あん時もあの洞穴ホラアナのどっかに潜んでたワケだ。あんなん何処にいたんだか……」


 ケンゴが呑気にこぼしながら、目の前の拳銃をゴトリと置く。ただその一方で、さっき見つけた日本刀をそれらの銃火器とは離してしっかり自分のわきに置いたのを俺は見逃さなかった。


「オイまだ話しかけんなって。こっちゃミセスから話聞いてる途中だっての、無駄話は後にしてくれ。“なんか良いこと”あったみてーだけど気ぃ緩みすぎだろ」


「あー悪ィ、ちゃんとした日本刀ポンとうあるとか思ってなかったモンだからさ……あと」


 しかし俺のツッコミにもケンゴは調子を全く変えずに答え、それから窓のほうを見つつ意味ありげに言葉を切り。でもって締め切られた窓のブラインドの、細く並んだ隙間からわずかに入る弱々しい日差しが“急速に広がる影”で遮られて。


「早速使い所ありそーだから余計によ」


 ケンゴが言い終わるのとほぼ同時に、窓は吹っ飛んできたクラフトの巨躯きょくにより突き破られた。



 突撃してきたのはあのフロウ=ライツのひし形正八面体クラフトだ。当然人間が乗り込む宇宙船クラフトなんだからその大きさも正八面体の一辺十数メートルはあろうかというサイズで、そんなのが突っ込んできて衝突したときの威力のデカさも推して知るべしってヤツだった。クラフトについてる窓ってのは当然ながら宇宙空間に出ても気圧差で吹っ飛んだりしないよう相当の頑強さが求められる。が、そんなものでも重さが数百〜数千トン単位の直角の金属塊に直接突っ込まれればどうなるのかなんて言うまでもない。


 ただ幸いだったのは、衝撃が大きすぎて窓枠や瓦礫がれきがほぼ粉砕されて細かい破片だらけだったってこと、それと締め切られていたブラインドが砕け散った破片の多くを受け止めて飛散するのを防いでくれてたってことだ。どうやらブラインドも何らかの特別仕様らしい。

 そりゃ、そもそもあまりの衝撃で壁や床も大きくゆがんで大型機材なんかも無惨にひしゃげてこそいるものの、ここまでの損害を出してどうやら致命レベルの負傷をした者はいないらしかった。一応、多分。



「なっ、だっ、っ……ちょっとみんな大丈夫⁉︎」


「……ケガ人はないかい⁉︎ 行動不能だったり流血、打ち身程度でも負傷したって人はすぐに……‼︎」


 追撃が無いことを確認してから、半狂乱という感じでベイファンとイヴの二人が叫び声を上げる。あまりに必死な叫びで、ちゃんと数秒間しっかり沈黙して確認しているのを見てなければ二人ともパニック状態だと判断していたところだ。だが間近でしっかりその様子を見ていたヤソジマは焦ることもなく、一喝でもするみたいに怒鳴り声を上げた。


「おいテメェら! なんか問題あるか⁉︎」


「お、俺らは何もないっス‼︎‼︎‼︎」


「……だとよ」


「ん。あとマダム・バタフライのメンバーとかラッシュちゃんは?」


 部下のチンピラたちからの報告をその場でヤンキー座りの体勢のままでケンゴは受け止め、そして冷静に他の人間の安否を問いただす。対するラッシュの返事はどこかしどろもどろだった。



「その、あ、アタシは大丈夫! だ、けど……ミセスとルチちゃんが」


 慌ててさっき二人のいた場所を見ると大怪我ではなさそうなものの、ラッシュの言う通りミセス・ラトナの左足とルチの右肩に血が滲んでいる。どうやらブラインドの隙間をすり抜けた破片が当たったらしく、それに高齢であるミセスなんかは捻挫ねんざなんかもしてるかも知れない。

 ただ正直、確かに心配に思う部分がある反面で“厄介な負担が増えた”と非情に判断している部分も混在した妙な気分だった。


「ルチ、だ、だいじょぶ? そのケガ……た、大したことある感じ? ない感じ? ……ねぇ」


「痛っつ、う……でっ、でも大丈ぅ夫だよ、ほら傷自体ち、ちっちゃいから」


 で、吹っ飛んできたアデリアは上司であるミセスのことよりもルチの怪我への関心のほうが大きいようだ。いつもの口調はそのままでも声は震えているし、まるで我が事のように顔を真っ青にしてルチの隣でひざまずいて必死に訴えかけている。

 ……ああそうか成る程、コイツがさっきフチザキに言ってた『一緒に家出までしたツレ』ってのは多分ルチのことだ。育ちとか年齢的な部分から見ても、姉妹とかそういう関係に近いのかも知れない。まぁ顔は似ていないが。

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